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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第14話

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エイト「・・・・ごめんなさい・・・僕は何もできなかった・・・」

エックス「気に病むことはねえよ。・・お前だってひどい怪我だったんだ」

エイトは肩を落とし、黙り込んでしまった。
・・・でも無事なだけでよかった。みんな生きてる。

まだ少し頭痛がするけど、さっきよりは楽になった・・・・

・・・・・!?

突然、床が音を立てながら細かく揺れだした。

エックス「何だ・・・?」

辺りを見回すと、壁の一部に細い光の線が走っている。
白く輝きながらゆっくりと、壁を垂直に音もなく・・・・・・・

ふいに床の揺れが収まり、あたりがしんと静まり返った。

エイト「・・・・・・・・・。」

光は壁を、長方形を描くように走り続け、最初の場所まで戻ってきた。
するとその光で囲まれた部分が、まるで蒸発するかのように細やかな煙となって消えていった。
そこにはぽっかりと、暗闇だけが残った。

レック「・・・・・・・・・行くのか?」

あの奥に。

エックス「そういうこと・・・だろうな・・・」

オレたちは満身創痍の体を引き摺るようにして立ち上がり、その闇に向かって歩いていった。

――――――
――――
――



暗闇の中はまさに無音と呼ぶに相応しかった。
何も、自分の息遣いすら聞こえない。何も見えない。
歩いているはずなのに足音もない。

・・目の前に突然、白い粒のようなものが舞い降りてきた。
顔を上げると、無数にそれは落ちてきている。

大小様々な大きさで淡い光を放ちながら、雪のように。
何だろう?

ひどく懐かしい気持ちになった。

オレはまた夢を見ているんだろうか。

少し視界が明るくなった。
・・・・洞窟だ。ここは・・・・前に夢で見た。

誰もいない。

・・・・向こうの地面に、何か光るものが見えた。
歩み寄り、しゃがんで手に取る。

・・それは銀色の光を放つ棒のようで、片手に収まる大きさだ。けれど片方は先に行くほど細くなっていく。
ある箇所からは突然一気に細くなっていて、透明な細いキャップが付けられている。その中の棒の先端はまるで、針の先のようだった。

もう一方の先端は複雑な形をしていた。
よくわからないが、端の円になっている部分を押すと、真ん中の半透明のところの向きが変わる。
棒自体は空洞になっていて、中に何か入れてから使うみたいだ。

オレは無意識のうちに、これが何か気付いていた。この時はもう・・・。

――――――
――――

気が付くと。
オレはいつの間にか壁にもたれて座っていて、さっきまでとはまた違うところにいた。

レック「・・・・・・・。」

立ち上がろうとした時、オレは自分の左手に何かが握られているのに気付いた。

レック「・・・?」

見るとそれは、あの銀色の棒だった。先端の尖った・・・

レック「・・・・・・・・・・。」

夢じゃなかったのか。
じゃあ・・・あれは、一体・・・?

改めて周囲を見てみると、そこは円形の部屋だった。
壁も床も灰色の冷たい、金属のようなものでできている。

・・・みんな、いる。誰も欠けていない。
誰も怪我をしていない。
オレの腕も治っていた。

そうか、魔法が使えるスペースまで来たのか・・・

エックス「レック・・・気がついたか!」



隣にいたエックスが突然声を上げた。

レック「え・・・?」

アベル「よかった、大丈夫?」

近くにいた仲間たちが心配そうに覗き込んできた。
どうしたんだろう?

ロト「・・何かあったのか・・・?」

みんなオレを見てる。

アルス「・・それ何?」

アルスがオレの手に握られた銀色の棒を見た。

レック「・・・・わかんねえ」

そう答えるしかなかった。
アルスは一瞬怪訝そうな顔をしたが、特に何も言わずその棒を眺めていた。

レック「・・なあ、ここって回復ができるところなんだよな?」

オレがそう聞くと、みんなは不思議そうに顔を見合わせた。

ソロ「いい知らせだぞ、レック」

立ち上がったところで、ソロが歩いてきた。
何のことだ?

ソロ「トライアングルの中心は終わった。お前が寝てる間に」

・・・・・・・・・えっ

レック「え・・・・・・・・・・?」

ソロ「最初のフロアをクリアしてから2日経った。信じられないほど早く終わったよ。その上死者も出ていない」

ソロは嬉しそうに・・・というよりはどこか誇らしげに、微笑んでいた。
そして小さく、オレにしか聞こえないような声で言った。

ソロ「お前は眠っていて正解だったぜ。みんな体にも心にも、一生消えない傷を負った・・・」

そしてオレの肩をポンと叩き、隣に立った。
みんなに向き直って、

ソロ「あと数時間で外に出られる。・・・正直ここまでよくやってくれるとは思わなかった・・・誰も死なずに済んだなんて、夢みたいだ」

ロト「・・・・・・・でもまだ終わりじゃないんだろ?」

ソロ「ああ。次のステージに行くには、この世界の親玉を倒さないといけない」

・・・ソロは右手で反対側の脇腹あたりを抑えながら、視線を落とした。

ソロ「でも・・・・・もうすぐだ」

少しだけ顔を上げ、励ますというより言い聞かせるようにソロは言った。
だが言葉とは裏腹に、伏せられた目には活力がない。

脇腹にあてがっていた右手に力が入ったのか、服にしわができた。

レック「・・怪我は治したんじゃないのか?」

苦しそうに見えたのでそう尋ねただけだった。だがソロは眉間に皺を寄せ、嫌いなものを見るかのように地面に視線を落としたまま・・・
応えはしなかった。

けれど少し遅れて目線を上げ、オレのほうを見た。
そして少し笑った。
それだけだった。

・・・・・オレはその時のソロの顔を忘れることができない。
疲れきった、あの引きつるような笑み。
ひどく胸が痛くなったんだ。

きっと「平気だ」と言いたかったんだろう。

ソロはそうして一瞬だけ笑ってみせたが、またすぐに下を向いて、・・それからはもう何も言わなかった。



・・・・・・・・・何も。