ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第16話
7日目 12時00分 ―サマル―
突然、後ろの方からロト様の叫び声が聞こえた。振り返るとロト様は、血まみれでぐったりしたソロさんを膝立ちで支えていた。
どうしてソロさんまで・・・
ロト「枯れ草の中から針を探せ!!針を探すんだ!!
早くしろおおおおおおおおおっ!!!」
びく、と体が震えた。ロト様は今まで見たこともないような表情だった。
ボクはわけがわからないまま、あたりをキョロキョロと見回した。
枯れ草?針?
どういうこと?
アレフ「レック殿に向けられているのでしょう」
そばにいたアレフ様が見えない床の下を見つめて、眉をひそめた。
アレフ「枯れ草とはおそらく、あの針のついた物体のこと・・・あの中から何かを探し出せということだと思います」
ボクはそれを聞いて、全身に寒気が起こった。
━─━─第十六話 Wound of true
あの穴の中に、針の棒が一体いくつあるのか想像がつかない。
だってレックさんはあれの山に支えられてるわけだから、穴の深さも想像がつかないんだ。
その中から何かを探せってこと?
そんなの、・・無理だ、すぐ下が普通の床でもなければ。
あんなのを両手でかき分けようものなら、きっと10を数える前に手が使い物にならなくなる。
魔法で吹き飛ばそうとしたって、そのせいで探し物まで木っ端微塵になってしまったら元も子もない、それがどんなものなのかわかってないんだから尚更・・・・・
エックス「クソッ!なんで届かねえんだ!」
立ち上がったエックスさんの右手は、ほとんどの爪が割れてしまって血が滲んでいる。
その下で、レックさんは腕に刺さった棒を歯を食いしばりながら引き抜いていた。
痛々しいうめき声が聞こえる。
すでに何本か抜いたみたいで、周りに血のついたものがいくつかあった。
レック「・・・さ、探すって・・・・何をだよ・・・・・・ッ」
ボクたちの方を見て、苦しそうに肩で息をしている。
エックス「わかんねえ、ソロは気絶しちまってる!」
レック「は・・・?なんで・・・・・・・」
エックス「なんか血だらけで、ヤバそうなんだけどよ・・・とにかくその中に何かあるはずなんだ・・・!」
ボクはどうすることもできずに、ソロさんの方を見つめていた。
今どうすればいいかを知ってる人がいるとしたらソロさんだけだから、無意識のうちに目がそっちに行ってたんだ。
視線を動かせば、ナインさんが倒れたままのエイトさんの体を支えている。
泣きたくなってきて目をそらしたら、ロト様が走ってきた。
ロト「少しだけ状況がわかってきた。早くしないとソロは死ぬかもしれない」
アルス「え・・・!?」
エックス「なっ」
ロト「あいつ・・・前から時間がない時間がないって、・・ずっと言ってただろ・・・
ソロが目を覚ます前に探し物を見つけないとやばそうだ」
アレン「俺たちには何もできることはないのか・・・クソ!」
地面を睨みつけながらアレンが拳を握り締めた。
その時、下からガシャガシャと交ぜられるような金属音が聞こえだした。
エックス「!」
アレフ「っ・・・」
レックさんが、あろうことか素手で棒の山を手当たり次第にかき分けている。
足元のものは蹴飛ばして、なだれ込んでくるものは両手で押し返して・・・
アルス「ひっ・・!?」
アベル「無茶だ!何か他の方法を・・・!」
レック「こうするしかないように出来てるんだよ!周りの壁にマホカンタがかけられてる!」
薙ぎ払われた棒が割れて、うるさく音を立てる。
レック「早く見つけないといけないんだろ・・・!?」
みるみるうちに、レックさんの周りが血しぶきで赤く染まっていく。
アルス「や・・・・・・やめてよ・・・・・・・そんなのっ・・・・!」
アルスさんは両手で口を抑えて震えていた。
ボクも全身の震えが止まらなかった。
レックさんは手や腕がズタズタになっても、探すのをやめようとはしなかった。
きっと、今やめたらもう二度と体が動かなくなるとわかったんだろう。
叩き潰すような勢いで棒をかき分けている。
レック「うああぁぁっ・・・・ぁあぁぁああぁああ!!!」
ボクは息が苦しくなってきて、その場にうずくまってしまった。
7日目 12時05分 ―レック―
何を見つければいいのかわからない。
ただ、何か違うものがこの中にあるはずなんだ。
枯れ草の中から針を。
針・・・・・?
レック「く・・・ぅ・・・っ・・・・・・はあ・・あああ・・・!」
そろそろ手の感覚がなくなってきた。これじゃあそれが視界に入らないと分からないじゃないか・・・・
血の匂いが鼻をつく。
駄目だ、手を止めたら・・・もう動かなくなる。
早く見つけないと。
その時、下に突き入れた手が何かにぶつかったのが衝撃で分かった。
急いでそこを見ると、黒い板・・・・・いや、これは床だ。穴の底だ。
底があった。
周りを見ると、一番上の棒はもうオレの頭より上にあった。今は腰より少し上まで棒に埋まってる状態だが、あれが崩れてきたらきっと・・・・・・
ああ・・・・ぁぁ、くそ・・・痛え・・・・・・頭がジンジンする。
見つからない・・・同じものしかない、ない・・・・・!
・・クソ・・・・・・!
オレはひょっとしたら、半分やけになっているのかもしれない。
腕を動かすたび、姿勢を変えるたび、そこかしこに鋭い痛みが走る。
まわりの壁に血の手形が大量にある。
あれ全部オレのなのか?信じられない。
腹とか胸にも刺さってるな・・・あんまり深くまで、いってなきゃいい・・・けど。
何度か視界がグラグラ揺れた。吐き気がして、意識が飛びそうになった。
でも駄目だ、オレがやるしかないんだ。
探さなければ・・・!
レック「・・・・・・・・・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・待て、今・・・・・・・・・・
・・・・・・何か・・・・・・白いものが見えた。
本当に一瞬、何か。ほんの僅かに。
どこだ、今のは・・・!?
・・・嘘だろ、見失った!?
いや、待て・・・こっちに・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!
下の方に、透明の小さな何かが見える。
ガラスか何かで出来た細い・・・・・
これだ!
白く見えたのは光が反射したからだ。
オレは無我夢中でその上にある棒を払いのけ、それを見た。
透明な細くて小さな容器の中に、透明な液体が入っている。
黒くて先端が細くなった蓋もついている。
オレは何も考えずにそれを掴み、声を張り上げた。
レック「あった、見つけた!!!」
その時どこかでパチン、という音が聞こえた気がしたが、気にせずそのまま棒の山を崩し踏み台にして、血で真っ赤になった足に力を入れて立ち上がった。
穴の縁がすぐそこまで来ると、真っ先にオレは右手を振り上げ、持っていたそれを手ごと床に叩きつけた。
一瞬割れないか焦ったが、握ったままだったので大丈夫だった。
オレはみんなが手を差し出すより早く、両手で床を持って渾身の力で体を引き上げた。
7日目 12時18分 ―ロト―
突然、後ろの方からロト様の叫び声が聞こえた。振り返るとロト様は、血まみれでぐったりしたソロさんを膝立ちで支えていた。
どうしてソロさんまで・・・
ロト「枯れ草の中から針を探せ!!針を探すんだ!!
早くしろおおおおおおおおおっ!!!」
びく、と体が震えた。ロト様は今まで見たこともないような表情だった。
ボクはわけがわからないまま、あたりをキョロキョロと見回した。
枯れ草?針?
どういうこと?
アレフ「レック殿に向けられているのでしょう」
そばにいたアレフ様が見えない床の下を見つめて、眉をひそめた。
アレフ「枯れ草とはおそらく、あの針のついた物体のこと・・・あの中から何かを探し出せということだと思います」
ボクはそれを聞いて、全身に寒気が起こった。
━─━─第十六話 Wound of true
あの穴の中に、針の棒が一体いくつあるのか想像がつかない。
だってレックさんはあれの山に支えられてるわけだから、穴の深さも想像がつかないんだ。
その中から何かを探せってこと?
そんなの、・・無理だ、すぐ下が普通の床でもなければ。
あんなのを両手でかき分けようものなら、きっと10を数える前に手が使い物にならなくなる。
魔法で吹き飛ばそうとしたって、そのせいで探し物まで木っ端微塵になってしまったら元も子もない、それがどんなものなのかわかってないんだから尚更・・・・・
エックス「クソッ!なんで届かねえんだ!」
立ち上がったエックスさんの右手は、ほとんどの爪が割れてしまって血が滲んでいる。
その下で、レックさんは腕に刺さった棒を歯を食いしばりながら引き抜いていた。
痛々しいうめき声が聞こえる。
すでに何本か抜いたみたいで、周りに血のついたものがいくつかあった。
レック「・・・さ、探すって・・・・何をだよ・・・・・・ッ」
ボクたちの方を見て、苦しそうに肩で息をしている。
エックス「わかんねえ、ソロは気絶しちまってる!」
レック「は・・・?なんで・・・・・・・」
エックス「なんか血だらけで、ヤバそうなんだけどよ・・・とにかくその中に何かあるはずなんだ・・・!」
ボクはどうすることもできずに、ソロさんの方を見つめていた。
今どうすればいいかを知ってる人がいるとしたらソロさんだけだから、無意識のうちに目がそっちに行ってたんだ。
視線を動かせば、ナインさんが倒れたままのエイトさんの体を支えている。
泣きたくなってきて目をそらしたら、ロト様が走ってきた。
ロト「少しだけ状況がわかってきた。早くしないとソロは死ぬかもしれない」
アルス「え・・・!?」
エックス「なっ」
ロト「あいつ・・・前から時間がない時間がないって、・・ずっと言ってただろ・・・
ソロが目を覚ます前に探し物を見つけないとやばそうだ」
アレン「俺たちには何もできることはないのか・・・クソ!」
地面を睨みつけながらアレンが拳を握り締めた。
その時、下からガシャガシャと交ぜられるような金属音が聞こえだした。
エックス「!」
アレフ「っ・・・」
レックさんが、あろうことか素手で棒の山を手当たり次第にかき分けている。
足元のものは蹴飛ばして、なだれ込んでくるものは両手で押し返して・・・
アルス「ひっ・・!?」
アベル「無茶だ!何か他の方法を・・・!」
レック「こうするしかないように出来てるんだよ!周りの壁にマホカンタがかけられてる!」
薙ぎ払われた棒が割れて、うるさく音を立てる。
レック「早く見つけないといけないんだろ・・・!?」
みるみるうちに、レックさんの周りが血しぶきで赤く染まっていく。
アルス「や・・・・・・やめてよ・・・・・・・そんなのっ・・・・!」
アルスさんは両手で口を抑えて震えていた。
ボクも全身の震えが止まらなかった。
レックさんは手や腕がズタズタになっても、探すのをやめようとはしなかった。
きっと、今やめたらもう二度と体が動かなくなるとわかったんだろう。
叩き潰すような勢いで棒をかき分けている。
レック「うああぁぁっ・・・・ぁあぁぁああぁああ!!!」
ボクは息が苦しくなってきて、その場にうずくまってしまった。
7日目 12時05分 ―レック―
何を見つければいいのかわからない。
ただ、何か違うものがこの中にあるはずなんだ。
枯れ草の中から針を。
針・・・・・?
レック「く・・・ぅ・・・っ・・・・・・はあ・・あああ・・・!」
そろそろ手の感覚がなくなってきた。これじゃあそれが視界に入らないと分からないじゃないか・・・・
血の匂いが鼻をつく。
駄目だ、手を止めたら・・・もう動かなくなる。
早く見つけないと。
その時、下に突き入れた手が何かにぶつかったのが衝撃で分かった。
急いでそこを見ると、黒い板・・・・・いや、これは床だ。穴の底だ。
底があった。
周りを見ると、一番上の棒はもうオレの頭より上にあった。今は腰より少し上まで棒に埋まってる状態だが、あれが崩れてきたらきっと・・・・・・
ああ・・・・ぁぁ、くそ・・・痛え・・・・・・頭がジンジンする。
見つからない・・・同じものしかない、ない・・・・・!
・・クソ・・・・・・!
オレはひょっとしたら、半分やけになっているのかもしれない。
腕を動かすたび、姿勢を変えるたび、そこかしこに鋭い痛みが走る。
まわりの壁に血の手形が大量にある。
あれ全部オレのなのか?信じられない。
腹とか胸にも刺さってるな・・・あんまり深くまで、いってなきゃいい・・・けど。
何度か視界がグラグラ揺れた。吐き気がして、意識が飛びそうになった。
でも駄目だ、オレがやるしかないんだ。
探さなければ・・・!
レック「・・・・・・・・・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・待て、今・・・・・・・・・・
・・・・・・何か・・・・・・白いものが見えた。
本当に一瞬、何か。ほんの僅かに。
どこだ、今のは・・・!?
・・・嘘だろ、見失った!?
いや、待て・・・こっちに・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!
下の方に、透明の小さな何かが見える。
ガラスか何かで出来た細い・・・・・
これだ!
白く見えたのは光が反射したからだ。
オレは無我夢中でその上にある棒を払いのけ、それを見た。
透明な細くて小さな容器の中に、透明な液体が入っている。
黒くて先端が細くなった蓋もついている。
オレは何も考えずにそれを掴み、声を張り上げた。
レック「あった、見つけた!!!」
その時どこかでパチン、という音が聞こえた気がしたが、気にせずそのまま棒の山を崩し踏み台にして、血で真っ赤になった足に力を入れて立ち上がった。
穴の縁がすぐそこまで来ると、真っ先にオレは右手を振り上げ、持っていたそれを手ごと床に叩きつけた。
一瞬割れないか焦ったが、握ったままだったので大丈夫だった。
オレはみんなが手を差し出すより早く、両手で床を持って渾身の力で体を引き上げた。
7日目 12時18分 ―ロト―