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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第16話

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レック「こいつはあることがきっかけになって、自分は他より劣ってると思い込まされたんだ。それが耐えられなかったから誰よりも何よりも強く、見上げられる存在になりたいと願った」

だからいつもあんな感じなんだぜ、とレックさんは少しだけ微笑んだ。

レック「でもお前は長い時間をかけて、ゆっくりと他との実力の差を実際に見せつけられ続けてきた・・・そして自分は誰よりも劣っているのだと自覚した。そうだろ?」

サマル「・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・うん・・・」

レック「だからこいつとは違って、そこから這い上がってやろうだとか、自分がそんなに劣っているはずはないと思うことができなかった。自分が劣っていると信じて、信じ続けて、自分で自分の傷を広げていったんだ」

サマル「・・・・・・・・・・・・・・・」

・・何も言い返せない。本当にその通りだったから。

レック「しかもそのせいで余計、〝自分なんかいても迷惑になるだけだ〟とか、〝みんな本当は自分のことを見下して笑っているんじゃないか〟とか、おまけのマイナス思考がどんどん生まれて付いてくる。考えれば考えるほど無限に生まれて、それが傷口に取り付いて膿ませてるんだ」

サマル「・・・・・・・・・・・・・・・・そうだね。・・そうかもしれない」

心に常に渦巻いていたものを的確に言い当てられ、むしろ気持ちがいいくらいだった。
自然と頬が緩んだ。
・・・・・・ひょっとしたらボクは、こんなふうに言われるのを待ち望んでたのかもしれない。

認めてもらえるのを。

レック「・・自覚があるなら必ず立ち直れるもんだぜ。だからある意味、お前はラッキーだ」

自覚しなければならない形で傷ができたから、か。

レック「んでこいつの場合問題だったのは、何が何でもそれを自覚したくないという無意識があったことだ。
自覚してしまったら、あの出来事が一生頭から離れなくなる。誰にも自分の弱さを知られたくない、解られたくないという思いが強かった。だから誰にも助けを求められなかった」

・・・・つまりソロさんも、自分で自分の傷口を広げていた。

レック「・・でもな、こいつの場合はその劣等感が生じた出来事が大きすぎた。一瞬で何もかも失って、一瞬で地獄の底まで落とされた。だからその時自分を守るために、もう1人の別の誰かに頼らざるを得なかった」

サマル「・・・別の誰か・・?」

レック「話すと長いから今は端折るけど、こいつはもとはいなかった存在で・・・1人の別の人間の上に無理やり植えつけられた人格なんだ。それで、もともと体にあった人格に受け止めきれなかった苦しみを流した。さっき見ただろ?」

サマル「・・あ・・・」

レック「・・ソロは今も、その傷の後遺症に悩んでる。
例えば密閉された狭い部屋に1人きりでいることができないとか、1人で鏡を見れないとか、ああ・・・仰向けに寝るのは絶対にできない。うっかりやるとさっきみたいになっちまうからだ。
他人に手を触られるのと足のない虫も駄目」

・・言われてみれば、いくつか思い当たる節がある。
前の屋敷でソロさんの部屋を見に行った時は扉の鍵が開いていたし、倒れたり横になる時も絶対に上は向かなかった。ドルーガやギーヴァと戦ったあとに1時間以上シャワーを浴びてたのも・・・
それに、ちょっと過剰なくらい人と体が触れないようにしてた気もする。

サマル「そっか・・・・・・そうだったんだ・・・・・・・・・・・」

レック「そうだ、サマル。これだけ言っとこう。さっきお前、ソロの・・・ソロじゃない方に顔見られたから、ひょっとしたらまた会うかもしれない。その時オレがいなかったら呼んでくれ」

サマル「・・・・・うん・・」

・・・・・・ソロさんはもう眠っちゃったみたい。

・・・・・なんだか、自分の悩みがやけに小さく思えた。
気持ちひとつで解決することもできるんじゃないかと思えるほどに。

実際、そうなのかもしれない。でも・・・
・・・・ボクには今までそれができなかった。

それがなんでなのか、ボクはもう一度、じっくり考えてみる必要がありそう。


・・ボクとレックさんはそっと部屋を出た。
静かな寝息が聞こえる。


扉の鍵は閉めなかった。