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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第18話

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7日目 21時06分 ―レック―

オレたちは屋敷を出た。早くみんなと合流する術を探さなければならない。

とりあえず前の屋敷があった、西・・?のほうへ向かおうとした、が・・・・・・・

オレたちの前には目を疑う光景が広がっていた。


巨大な崖がある。終わりは見えず、この世界全体を分断しているかのような崖。
その向こうには・・・・・・何もない。ただ、無限に闇が広がっているだけだった・・。
崖の下も同様に、真っ暗闇。どれくらいの深さなのか推測する気も失せるほどの。

レック「・・んだよコレ・・・畜生・・・!」

思わず悪態をついてしまった。
眼前に広がる闇は、視界のすべてを覆い尽くしている。

サマルが後ずさり、オレとソロの後ろにそっと隠れた。

ソロ「いつもはこうだった」

ふいに、ソロがつぶやく。

レック「え?」

ソロ「今までは俺が最初に別れる時こうなってたんだ。一定の時間が経つまで俺が決してみんなと合流できないように」

サマル「・・・・・・・・?」

ソロ「それが今回はなく、俺は最初外に出なかった。だから今なんだろうよ」

今までは最初から外に出ていたのか。

・・・・・ソロは突然、崖に背を向けて歩き出した。

レック「・・どうするんだ?」

オレとサマルも歩き出す。

ソロ「どうするも何も、合流できる道を考えるしかないだろ。何かしら手段は用意してあるはずだ」

サマル「3時間で間に合うの・・?」

あっ。・・・早速。

ソロ「それを今俺に聞いて何になる。間に合わせるために動いてるんだろうが」

案の定、ソロの声がちょっと低くなった。

サマル「う・・・うん」

サマルも多分言ってから「しまった」と思ったに違いない。
・・オレたちは歩きながら話し始めた。

レック「なあソロ、今オレたちは今までのお前と同じ状況にあるってことだよな?」

ソロ「まあ、そうだ。みんなには「あとこれくらい経ったら犠牲者と合流できる」みたいな感じで伝えられてただろうが、実際には少し違ってな。俺の方には「あと何時間経つまでに合流できなかったらお前死ぬから」って、あの注意書きが来るだけなんだぜ」

レック「ああ・・さっきみたいな」

ソロ「そのたんびにこれだ」

そう言って、ソロは後方の崖を一瞥した。

ソロ「多分みんなのいる方とは違う、隔離された平行次元に飛ばされてる。一番面倒なパターンだ」

サマル「・・平行次元って?」

ソロ「なんだ知らないのか・・・俺が説明してもわからんだろうからレック、頼んだ」

レック「え?ああ。・・えっとな、まず平行世界って知ってるか?」

サマル「・・う、ん?」

レック「んー。じゃあ、例えばお前は勇者だろ?」

サマル「うん」

レック「勇者として、アレンやムーンと一緒に世界を救った。それまでにはいくつか試練があって、命を落とし世界を救う希望が絶たれる可能性も同じ数だけあったはずだ」

サマル「・・うん、そう思う」

レック「その試練をすべて越え、見事世界を救ってみせたお前がここにいる。でもその試練をもし越えられていなかったらお前は今ここにはいないだろ?」

サマル「うん・・・」

レック「だから今、ここにお前は1人しかいないんだ。試練を越えられなかったお前は命を落とし、そのまま消え去る。アレンたちも同じに。そうしたら、その世界は闇に飲まれて崩壊する」

サマル「・・・・・・・・」

レック「そういう世界もあるんだ。そしてそうなった世界の残骸はそのまま闇に放置される。そしてそういう世界は、可能性が分岐する数・・つまり越えるか越えられないかでその先の結末が左右される、“試練”の数に合わせて存在するんだ。
お前が今まで越えた試練の数が例えば10あるなら、それをすべて越えられた世界、1つも超えられなかった世界、1つだけ越えられた世界、9つ越えられた世界・・・といった感じでどんどん世界は増えていく」

サマル「あ・・・なんか、わかったかも」

レック「だろ?だから今ここにいるお前は、その無数の世界の中の1つ、「試練をすべて超えられた世界」のお前なんだ。平行世界同士が交わることはないから他の世界のお前はここにはいない。これでわかったか?」

サマル「うん・・・そっか、全部越えられた場合の例がボクなんだね」

レック「そ。オレも同じ。だからオレたちは、何千何万何億とある世界の中からそれぞれ「一番いい結末を迎えた世界」から呼び出された、つまり選りすぐりのトップエリートってわけだ」

ソロ「うーん・・・まあいいかそれで。大体わかっただろ?」

サマル「うん。・・じゃあこの、今ボクたちがいるのは・・・」

ソロ「・・少なくとも、俺たちよりは「よくない結末を迎えた世界」だな」



━─━─第十八話 Upheaval




レック「でもな・・・平行世界は互いに干渉し合わないからこそ成立するって習ったんだけど」

ソロ「王宮でか?まあ間違ってはないと思うが、実際にはどうにでもなっちまうもんなんだよな。こんなふうに」

サマル「・・・・でも、じゃあ・・・ここが平行次元の別の世界だって証明できるの?」

ソロ「できるとも。したくないけど」

レック「・・あ、わかった」

サマル「え?」

ソロ「どっか漁りゃあ俺たちの死体が出てくるはずだ。“よくない結末”を迎えた世界なんだからな」

サマルが固まる。

レック「ま、まあ・・・」

ソロ「一時離脱させるのに、まだ生きてる俺たちがいる世界に飛ばすなんてことしないだろうよ。すべてに失敗して、ゲームが俺たちの負けで終わった世界だ・・・ここは」

生ぬるい風が顔に吹き付ける。
もう慣れたはずの空気に、血の匂いが混じっている気がした。

レック「・・お前さ・・・・・」

ソロ「ん?」

レック「・・・・見たこと、あんのか?オレらの死体」

ああ、やっちまった。聞きたくなかったのに。
一瞬膨らんだ馬鹿みたいな好奇心を抑えられなかった。

ソロ「ある。なんでか知らんが自分のは毎回見る」

うっ。

ソロ「完全に嫌がらせだ。絶対あんな死に方するもんかっていつも苦笑する」

・・・そうすか。ご丁寧にどうも。

サマル「・・・・・・・・・・・・・・」

ああ・・サマルが完全に怯えてる・・・。


・・・・・・・・・そうこうしてるうちに、血の池に着いた。

あの青い扉が・・・・開いている。

ソロ「トライアングルの中心までいったのか。珍しいな」

レック「そうなのか?」

ソロ「ああ。俺がここの鍵を見つけられずに死んでるパターンが多かったから」

そう言ってソロは、何の迷いもなく扉の奥へ入っていく。

レック「えっちょっ、大丈夫なのか!?」

ソロ「大丈夫だ。トライアングルの中心のために入ったあとは別の場所の通路と繋がってる」

・・恐る恐る入ると、そこは確かに見覚えがなかった。ただの地下通路のようだ。
サマルもどこかオレにくっつくようにして入ってきた。

ずんずん進んでいくソロに慌ててついて行くと、やがて通路全体から漂い始めたカビのような匂いが鼻をついた。