ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第19話
7日目 21時44分 ―ロト―
突然地面が揺れたかと思うと、俺たちの周りを取り囲むようにして赤い糸のようなものが大量に現れた。地面を突き破って出てきたそれらは、上空へと伸びていく。
やがてそれに続いて、さらに太い糸のようなものが出てきた・・・いや、・・・・よく見ると植物の葉のようなものがついている。
真っ赤な色をしているが、・・これは茎だ。何かの植物の・・・
茎には大量の棘がついていた。葉の形から見ても、これは・・・
ロト「・・・バラ・・・?」
俺たちは銃を構え、全員で背中を合わせるようにそれらと向き合った。
やがて、茎が細くなり始める部分にある蕾のようなものが、ゆっくりと開き始めた。
塞がっていた花びらと花びらの間に赤い糸が引く。粘着質の赤い液体が花の内側に付着しているようだ。
ネチャネチャと気味の悪い水音があちこちから聞こえる。
アレン「・・・こんなところで・・・っ」
花びらが完全に開いたその花は、やはりバラだった。
だが茎も、葉も、花もすべて同じ赤色。
俺たちの周りを取り囲んでいて、何体いるか見当もつかない。
上空に伸びた細い茎は、獲物を逃がすまいとまるで鳥かごのような形の檻を作っていた。
エックス「これ、ブラッディローズってやつじゃないか!?注意書きにあった・・」
アレフ「おそらくそうでしょう・・・だとすれば厄介ですね」
ふと、エイトの姿が目に入った。
他は全員臨戦態勢に入っているのに、エイトは銃を抜かず、片手で額を押さえて下を向いている。
もしや、既に奴らに・・・
━─━─第十九話 Soft Prickle
ロト「エイト、どうした!?大丈夫か!?」
俺がそう言った瞬間、周囲を埋め尽くすバラの花からあの赤い糸が弾幕のごとく放たれた。
俺はとっさにそれを避け、体制を整える。
同時に全員の銃撃が始まる。
俺は赤い糸の嵐の中、エイトをじっと見つめていた。
エイトはやがてもう片方の手も頭にあてがい、ますます下を向く。
・・・・だがふいに顔を上げると、背負っていたアサルトライフルを背後に向かって乱射した。
いくつか花が潰れ、キィィィッという不快な音を発する。
俺はひとまずエイトが戦闘に参加できる状態だとわかって、自分の前に向き直った。
とその時、赤い糸が1本腕に絡み付いてきた。
しまった、と思った時はもう遅く、そのまま次々と糸が腕を覆うように巻き付いてくる。
ドクン、とまるで血管のように、糸が一斉に脈打った。
ロト「う・・・っ!!」
その瞬間、尋常じゃないほどの脱力感と息苦しさに見舞われた。
体力が直接、糸が絡み付いている部分から吸い取られているかのような・・
そうだ、確か注意書きには触手で生命力を吸い取ると書いてあった。
くそ・・・早く振り払わなければ。
アレフ「ロト様!!」
アレフが俺を見るなり、慌てて飛んできた。
その背後から、高速で他の触手が・・・
ロト「アレフ、後ろだ!」
俺が叫ぶと、アレフは間一髪で飛び退きそれを避けた。
ロト「俺のことはいい、それよりも・・・」
体制を整え始めたアレフにそう言いかけた時・・・・・
胸に激しい鈍痛が走った。
ロト「ぐはっ!?」
半ば吹っ飛ばされるように仰け反り、仰向けに倒れる。
今まで感じたことのない痛みだった。
見ると、胸のちょうど心臓のあるあたりから血が滲んでいる。
赤い染みはどんどん広がっていく。
アレフ「ろ・・・ロト様っ・・・!?」
その時腕に絡み付いていた触手が、これ幸いとばかりに俺の全身に伸びてきた。
電撃のような痛みとともに、体力が吸い取られていく。
ロト「く・・・ぅ・・・っ」
視界が赤く染まる。
魔力を集中させようにも、触手の生み出す痛みによってすぐに散ってしまう。
このままでは・・・・・・・・・
――――――
――――
――
7日目 21時46分 ―エイト―
戦わなければ。
僕だけ何もしないわけには行かない。でも体が重くて動かない。
焦りのためか、体中が冷たく感じる。苦しい。
右手で頭を押さえ、下を向くと。
少し向こうの方からロトさんの声が聞こえた。
大丈夫か、と言っていた。
目を瞑っているのに視界がぐるぐる回っているような感じがする。
吐き気がして、思わず両手で頭を抱え込んでしまった。
ああくそ、駄目だ。どうしていつもこうなんだ。
歯を食いしばり、僕は背中のアサルトライフルに手を伸ばす。
そっちを見ないままトリガーボタンを押し続けた。
ああ、うるさい。銃声が嫌いだ。でも魔物の声はもっと嫌いだ。
どんどん意識が飽和していく。
その時ふと、魔物の触手に腕を囚われたロトさんの姿が目に入った。
ドクン、と心臓が鳴る。
そのままドクン、ドクンと鼓動は早くなっていく。
それに比例して体が冷たくなっていく。
僕は今何を考えているんだ?
ちらりと、考えただけだった。
飛び交う銃声の中、脳内が無音になる。目に映る光景がゆっくり流れているように見える。
それは悪魔の囁きだった。
・・・・・・僕の腕は、銃を持った腕は、すうっと前方に伸びる。
ただ少しほんの一瞬だけ、脳内をよぎっただけだったのに。
どうして。
銃口はまっすぐと、触手を振りほどこうともがくロトさんを捉えた。
指先に力が入る。
・・・・・・うっすらと、声が聞こえたのだ。
人殺し。
自分のために他人の命を奪う悪魔。
・・死んでしまえ。
銃を持った腕に衝撃が走った。
弾を撃った反動だった。
気付いた時、僕は銃を取り落として呆然と立ちすくんでいた。
ロトさんは倒れ、その体には無数の赤い糸が埋め尽くすように絡み付いている。
アレフさんが駆け寄り、眼前の魔物に銃撃を浴びせる。
エイト「・・・っロトさん!!」
居ても立ってもいられず、僕は銃を放り出して駆け出した。
アルスさんとアレンさんも走って来ている。
ロトさんの体はもう見えなくなっていて、動かなかった。ただ人型になった真っ赤な糸の束がぐるぐると高速で蠢いている。
血らしき液体が、糸の隙間から絞り出されるように溢れて・・・・・
エイト「・・・・・・・・・・・!」
何をしても、糸は離れそうになかった。
でもアレフさんがベギラゴンで目の前の魔物を焼き払うと、糸の動き方に乱れが出始めて・・・やがて、拡散した。
糸の束は溶けるように、その場で消滅した。
・・・・・・・・・・・しかしそこに、ロトさんの姿はなかった。
残っていたのはロトさんが持っていた銃と、血だまりだけ・・・・・・・・・
アルス「・・・え・・・・・・・・・・!?」
どういう・・ことだ・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・
・・・まさか・・・・・・・・・・・っ
アレン「・・ロト様?ロト様・・・!?」
アレフ「・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・僕が・・・・・・撃ったせいで
・・・・・・僕が・・・・・・・・・・・・・・
エイト「・・・う」
僕が
・・・・・・・・・・・死なせた?
エイト「うぁ・・・っ」
僕 が
突然地面が揺れたかと思うと、俺たちの周りを取り囲むようにして赤い糸のようなものが大量に現れた。地面を突き破って出てきたそれらは、上空へと伸びていく。
やがてそれに続いて、さらに太い糸のようなものが出てきた・・・いや、・・・・よく見ると植物の葉のようなものがついている。
真っ赤な色をしているが、・・これは茎だ。何かの植物の・・・
茎には大量の棘がついていた。葉の形から見ても、これは・・・
ロト「・・・バラ・・・?」
俺たちは銃を構え、全員で背中を合わせるようにそれらと向き合った。
やがて、茎が細くなり始める部分にある蕾のようなものが、ゆっくりと開き始めた。
塞がっていた花びらと花びらの間に赤い糸が引く。粘着質の赤い液体が花の内側に付着しているようだ。
ネチャネチャと気味の悪い水音があちこちから聞こえる。
アレン「・・・こんなところで・・・っ」
花びらが完全に開いたその花は、やはりバラだった。
だが茎も、葉も、花もすべて同じ赤色。
俺たちの周りを取り囲んでいて、何体いるか見当もつかない。
上空に伸びた細い茎は、獲物を逃がすまいとまるで鳥かごのような形の檻を作っていた。
エックス「これ、ブラッディローズってやつじゃないか!?注意書きにあった・・」
アレフ「おそらくそうでしょう・・・だとすれば厄介ですね」
ふと、エイトの姿が目に入った。
他は全員臨戦態勢に入っているのに、エイトは銃を抜かず、片手で額を押さえて下を向いている。
もしや、既に奴らに・・・
━─━─第十九話 Soft Prickle
ロト「エイト、どうした!?大丈夫か!?」
俺がそう言った瞬間、周囲を埋め尽くすバラの花からあの赤い糸が弾幕のごとく放たれた。
俺はとっさにそれを避け、体制を整える。
同時に全員の銃撃が始まる。
俺は赤い糸の嵐の中、エイトをじっと見つめていた。
エイトはやがてもう片方の手も頭にあてがい、ますます下を向く。
・・・・だがふいに顔を上げると、背負っていたアサルトライフルを背後に向かって乱射した。
いくつか花が潰れ、キィィィッという不快な音を発する。
俺はひとまずエイトが戦闘に参加できる状態だとわかって、自分の前に向き直った。
とその時、赤い糸が1本腕に絡み付いてきた。
しまった、と思った時はもう遅く、そのまま次々と糸が腕を覆うように巻き付いてくる。
ドクン、とまるで血管のように、糸が一斉に脈打った。
ロト「う・・・っ!!」
その瞬間、尋常じゃないほどの脱力感と息苦しさに見舞われた。
体力が直接、糸が絡み付いている部分から吸い取られているかのような・・
そうだ、確か注意書きには触手で生命力を吸い取ると書いてあった。
くそ・・・早く振り払わなければ。
アレフ「ロト様!!」
アレフが俺を見るなり、慌てて飛んできた。
その背後から、高速で他の触手が・・・
ロト「アレフ、後ろだ!」
俺が叫ぶと、アレフは間一髪で飛び退きそれを避けた。
ロト「俺のことはいい、それよりも・・・」
体制を整え始めたアレフにそう言いかけた時・・・・・
胸に激しい鈍痛が走った。
ロト「ぐはっ!?」
半ば吹っ飛ばされるように仰け反り、仰向けに倒れる。
今まで感じたことのない痛みだった。
見ると、胸のちょうど心臓のあるあたりから血が滲んでいる。
赤い染みはどんどん広がっていく。
アレフ「ろ・・・ロト様っ・・・!?」
その時腕に絡み付いていた触手が、これ幸いとばかりに俺の全身に伸びてきた。
電撃のような痛みとともに、体力が吸い取られていく。
ロト「く・・・ぅ・・・っ」
視界が赤く染まる。
魔力を集中させようにも、触手の生み出す痛みによってすぐに散ってしまう。
このままでは・・・・・・・・・
――――――
――――
――
7日目 21時46分 ―エイト―
戦わなければ。
僕だけ何もしないわけには行かない。でも体が重くて動かない。
焦りのためか、体中が冷たく感じる。苦しい。
右手で頭を押さえ、下を向くと。
少し向こうの方からロトさんの声が聞こえた。
大丈夫か、と言っていた。
目を瞑っているのに視界がぐるぐる回っているような感じがする。
吐き気がして、思わず両手で頭を抱え込んでしまった。
ああくそ、駄目だ。どうしていつもこうなんだ。
歯を食いしばり、僕は背中のアサルトライフルに手を伸ばす。
そっちを見ないままトリガーボタンを押し続けた。
ああ、うるさい。銃声が嫌いだ。でも魔物の声はもっと嫌いだ。
どんどん意識が飽和していく。
その時ふと、魔物の触手に腕を囚われたロトさんの姿が目に入った。
ドクン、と心臓が鳴る。
そのままドクン、ドクンと鼓動は早くなっていく。
それに比例して体が冷たくなっていく。
僕は今何を考えているんだ?
ちらりと、考えただけだった。
飛び交う銃声の中、脳内が無音になる。目に映る光景がゆっくり流れているように見える。
それは悪魔の囁きだった。
・・・・・・僕の腕は、銃を持った腕は、すうっと前方に伸びる。
ただ少しほんの一瞬だけ、脳内をよぎっただけだったのに。
どうして。
銃口はまっすぐと、触手を振りほどこうともがくロトさんを捉えた。
指先に力が入る。
・・・・・・うっすらと、声が聞こえたのだ。
人殺し。
自分のために他人の命を奪う悪魔。
・・死んでしまえ。
銃を持った腕に衝撃が走った。
弾を撃った反動だった。
気付いた時、僕は銃を取り落として呆然と立ちすくんでいた。
ロトさんは倒れ、その体には無数の赤い糸が埋め尽くすように絡み付いている。
アレフさんが駆け寄り、眼前の魔物に銃撃を浴びせる。
エイト「・・・っロトさん!!」
居ても立ってもいられず、僕は銃を放り出して駆け出した。
アルスさんとアレンさんも走って来ている。
ロトさんの体はもう見えなくなっていて、動かなかった。ただ人型になった真っ赤な糸の束がぐるぐると高速で蠢いている。
血らしき液体が、糸の隙間から絞り出されるように溢れて・・・・・
エイト「・・・・・・・・・・・!」
何をしても、糸は離れそうになかった。
でもアレフさんがベギラゴンで目の前の魔物を焼き払うと、糸の動き方に乱れが出始めて・・・やがて、拡散した。
糸の束は溶けるように、その場で消滅した。
・・・・・・・・・・・しかしそこに、ロトさんの姿はなかった。
残っていたのはロトさんが持っていた銃と、血だまりだけ・・・・・・・・・
アルス「・・・え・・・・・・・・・・!?」
どういう・・ことだ・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・
・・・まさか・・・・・・・・・・・っ
アレン「・・ロト様?ロト様・・・!?」
アレフ「・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・僕が・・・・・・撃ったせいで
・・・・・・僕が・・・・・・・・・・・・・・
エイト「・・・う」
僕が
・・・・・・・・・・・死なせた?
エイト「うぁ・・・っ」
僕 が