ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第19話
殺し
エイト「・・・・っあああああああ」
ころ
し
た ?
エイト「うあ゛ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
殺した、人を殺した!
僕が人を殺したっ!?
嘘だ嘘だ、そんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけないそんなわけない
エイト「ぐぎゃああああああああああああああああぁうえぇああああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・!!!」
違う僕は悪くない僕は悪くない悪くない悪くない悪くない
手が勝手に手が勝手にこの手が勝手にっ!!
うわああああああああああああああああああ!!!
――――――
――――
??? ???????? ―ロト―
・・・・・・・・・・・・・・・・・気が付くと、俺は最初の屋敷の玄関ホールにいた。
静かだ。
・・・・・どういうことだ?さっきまでブラッディローズと戦っていて・・・・
俺はどうなったんだ?
胸に傷がない。体は無傷だった。
何がどうなってるのかわからない。
・・・・・・・その時、東の廊下の方からかすかな足音が聞こえた。
ソロたちかと思い向かおうとしたが、じっと聞いているとその足音は明らかに3人分より多かった。
嫌な予感がした。
・・・・俺は西側の廊下に進み、・・・・・・そして目に入った休憩室の扉を見て目を見張った。
開いている。
俺の足はそっちに吸い寄せられるように動いたが・・・・2・3歩で、ぴたりと止まった。
ホールの方から、アベルの声が聞こえたからだ。
はっとして、耳を澄ます。
・・・・話し声だ、アレフの声も聞こえた。
アレフ「・・・皆さん、行きましょう。気にすることはありません」
ナイン「そうですよ、もう行きましょう・・・?」
かすかにだが確かに聞こえた。
どうなってるんだ?
俺はしばらく立ち尽くしたあと、そっとホールの方に歩き出した。
・・・なぜか会話はピタリと止んでおり、静寂の中に俺の足音だけが響き渡った。
ホールを覗くと、歩いている途中のような格好で止まったままのアレフがまず目に入った。その後ろにいるナイン、アベルも同様に止まっている。
何をしているんだ?
だがその後ろにいるサマルだけが、せわしなく辺りをキョロキョロと見回している。
そしてサマルの後ろを見たとたん、俺は凍りついた。
・・・・・・・・・・・・・・なぜ。なぜ、彼女がいる?
ムーンが、サマルの後ろでアレフたちと同じように止まっているのだ。
どういうことだ。なぜムーンがいる?
ムーンは・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・この屋敷で死んだはず・・・・・・・・・・・・・・・・
その時、止まっていた4人がぱっと動き出した。
サマルが驚いて、平然と歩き出した4人を呼び止める。
そして、
サマル「・・い、今足音が聞こえたんだ。向こうの方から・・・」
そう言ってサマルは俺のいる廊下を指さした。
まずい。
なぜかわからないが、直感的にまずいと感じた。
俺は足音を立てないよう後ずさった。背後の扉・・・休憩室の横の部屋に隠れようと考えた。
だがサマルたちは、こっちに来ることなくそのまま東廊下側に戻っていった。
・・・・・・・再び、静寂が訪れる。
ロト(・・・・・どうなってるんだ?何なんだこれは・・・・?)
わけがわからない。
状況が整理できないが・・・・・ひとつだけ、ひとつだけ考えるならば。
・・・今俺は、何日か前に戻っているのでは?
時間が戻っている。そうとしか考えられない。
変わり果てた姿のムーンが脳裏をよぎる。
ロト「・・どうすれば・・・・・」
しばらく俺は、そのまま佇んでいた。
・・・・・・・・すると足元から、カサ、という乾いた音が聞こえた。
見ると白い紙が落ちている。・・これは・・・・
ロト「・・・・・・・。」
手に取って書かれた文字を読む。
『もう気付いていると思うが、時間が少し戻った。
壁の中に向かえ。あの狭い通路だ。
ムーンが殺される直前、レックと2人で入った赤い霧の見える扉がある場所だ、覚えているだろう?
壁の亀裂に手をかければ道が開ける』
ロト「・・・・・・・・・。」
――――――
――――
・・・ここか。
アレフたちは本当に何も見落としてなどいなかった。何の変哲もない壁だ。何もない。
ただ下の方に、小さな亀裂があった。
だが普通、こんなどこにでもある亀裂に目が行くことはないだろう。
まずその亀裂にそっと触れる。何も起きないので、亀裂に沿って指をあてがった。
すると地響きも揺れも何もなしに、壁が分裂して左右に別れ、・・やがて止まり、細い道ができた。
ロト「なるほどな・・・こういうことだったのか」
薄暗く埃っぽい道を進んでいく。
レックと一緒に入った時、既に何者かが通った形跡があったのは、このためだったのだ。
まさか自分だったとは。
・・しばらく進むと、前に来た時にはなかった、四角い穴のようなものがあった。
床に開いたその穴には、はしごに近い階段があった。地下に続いているようだ。
穴の下を覗き込んでみる。
中は暗くてほとんど何も見えなかったが、カビのような匂いとひんやりした空気が顔を撫でた。
首をもたげると、地面についた手の横にまたしても注意書きがあった。
『この階段は降りるな。
向こうの扉の中に入れ、進んでいけばすぐにわかる』
・・・・・・・・・・。
俺はそれに従い、目の前の鉄の扉に手をかけた。
あの赤黒い霧は出ていない。
部屋の中は薄暗く、何もなかった。
が、向こうの扉のすぐ前に、小さな砂の山が崩れて散らばったようなものがあった。
無視して扉を開け、なお進む。
・・・・・と、またしても話し声が聞こえてきた。
奥の方からだ。
歩くペースを遅くし、それに耳を澄ますと。
・・・・・・・・・・・レックの声が聞こえた。
続いてソロの声も聞こえる。・・・サマルの声も。
しばらく聞いていたが、その3人の声しか聞こえてこなかった。
俺は足早に細い通路を進んでいき、奥に見える扉を目指した。
話し声が近づく。
・・・扉を開けると。
・・・・・・そこにいたソロとレックとサマルが、驚いた顔で俺を見た。
ロト「・・・・・・・・よかった・・・」
ソロ「・・・・ロト・・・どうしてここに・・・?」