ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第19話
ソロは喜ぶより先に、眉をひそめて俺を見てきた。
ソロ「どうしてここがわかった?どうやってここまで来た・・・?」
サマル「ロト様っ・・・」
見ると、サマルの目には涙がたまり・・・・・
サマル「ロト様!ロト様ぁ・・・!」
ぼろぼろとこぼれ落ちた。そして俺の方に駆け寄り、抱きついてきた。
まるで長い間迷子になっていた子供が親に甘えるかのように。
サマル「うわぁあああん・・・・!」
俺の胸に顔をうずめ、泣きじゃくっている。
ロト「・・・・・・・・・・」
俺はサマルの頭を撫でながら、安堵のため息を漏らした・・。
レック「・・ロト・・・いやまあ、とりあえずは安心って感じか?そうでもないのか?」
ソロ「そうでもないな。全員と合流しなければ意味がない。ロト、他の奴らは?」
ロト「それが・・・」
・・・・・・――俺は、俺がここに来るまでの経緯を3人に話した。
レック「そうかぁ・・・うーん」
やっと泣き止んだサマルは不安そうにレックとソロを交互に見ている。
レック「・・・ロト、ここが時間が戻った世界だってのはもうわかったんだよな?」
ロト「ああ」
レック「オレらは正直・・・もっと前の世界に飛ばされてたんだ。けどさっき、サマルやムーンたちが一緒にいて足音を聞かれたんだよな?」
サマル「・・足音?」
ロト「そうか。サマルは足音が聞こえた時のこと覚えてるか?」
サマル「うん、まだムーンが生きてる時・・・ボク以外の時間が止まったみたいになって、廊下から足音が聞こえたんだ」
ロト「・・・その足音、俺のだったんだ。ついさっきその状況になった」
サマルが驚愕の表情を浮かべる。
レック「でもそれだとおかしいんだよなあ、オレらが飛ばされた世界とは全然時系列が合ってないっつーか。偶然同じことがあるってありえるのか、ソロ?」
ソロ「いいや。99.999999%ない」
ソロが笑いながら答える。
レック「じゃあ・・・あの時からまたさらに時間が飛んだってことか?」
ソロ「だろうな。・・地下通路を出た時、光が目の前を走っただろ。多分あれだな」
ロト「なあ、どういうことだ?もっと前に飛ばされたのに偶然同じことがあるって・・・」
俺は思わず口を挟んだ。今よりもっと前に戻ったのに、今と同じことがある・・・とはどういうことなのか。
レック「・・あ、・・・そうか」
ソロ「もういいんじゃないか?いい機会だ、2人に説明してやってくれ」
ソロがレックにそう言って腕組みをした。
・・サマルも知らないことなのか。
レック「ああ・・・・・・実はな。その・・・えっと」
レックは頭を掻きながら下を向き、まごついた。
ソロが腕組みをしてそっぽを向いたままレックの足を踏む。
レック「いでっ。・・あのな。落ち着いて聞いて欲しいんだが・・実はソロは、ある事情で不老不死の体を持ってるんだ。あ、自然死がありえないってだけなんだけどな。それで本当はもう100年以上この世界にいてだな」
・・・・・・・・・
は?
ロト「な・・・・・え?何?」
レック「いやその、んで、トライアングルっていうのは実は繰り返しって意味で、オレらが今やってるゲームはある地点まで進むとそこをクリアしない限り必ず最初に戻ってやり直しになるんだ。えーとそれから、ソロ以外は記憶と体の状態がリセットされて」
サマル「・・・・・・・・・・。」
レック「今回はいつになくよく進んでるってソロが言うんで、今がんばって進めてんだけど・・・実はソロはもう700年近く生きてて、またある事情で早く治療をしないと」
ソロ「ストップもういい」
またソロがレックの足を踏む。
レック「いって!」
ソロ「説明下手すぎんだろお前。いい、俺が話す」
――――――
――――
話をしながら、俺たちは通路を進んでいった。
・・・・・・ソロは順を追って、事をゆっくりとわかりやすく説明してくれた。
語り手が変わるとこんなにも違うものなのか。
内容は信じがたいものではあったが、すんなりと頭に入ってきた。
ソロ「信じられないだろうが・・・本当のことだ。実は今までにも何度か打ち明けたことがあったんだが、結局無駄だった。
・・つうかお前、自分のことじゃないと本当一気に喋るの下手になるな」
レック「いやぁ・・・まあ。あ、でっでも今回は違うんだろ?」
ソロ「ああ。もしかしたらこれが最後のチャンスになるかも知れない。もうあまり時間がないんだ」
ロト「・・そのラーンっていう抗体は事前に打ってるんじゃ駄目なのか?」
レック「それが駄目なんだよな、直前か直後じゃないと細胞がうんたらかんたらで。
明記してあったわけじゃないんだけど・・・
意味がなくなっちゃうんだろ?」
ソロ「らしいな。まったく、奴らも中途半端なもん作りやがって。
みんなと合流する前に発作だけは勘弁してもらいたいな・・・たまったもんじゃねえぜ」
長く続く一本道。
やがて奥の方に、かすかにぼんやりとした灯りが見え始めた。
その下には扉もあるようだ。
時間を確かめたいが、確認する道具が一向に見当たらない。
ソロ「あ、言うの忘れてた。隔離状態になるとこれが時計の代わりになる。
0%になったら時間切れだ」
そう言ってソロが見せたのは左腕、生存率。
『14.2』という数字が青白い光とともに浮かび上がり、通路の天井を僅かに照らした。
ソロ「確実にあと2時間切ってるな・・・急ごう」
俺たちは頷き、早足を走りに切り替えて通路の奥を目指した。