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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第20話

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2日目 07時47分(7日目 22時05分) ―サマル―


ボクたちは長い廊下のような道を走っていた。どこへ向かっているのかわからないけれど、注意書きに「戻れ」と言われていないからきっと道は合っているんだろう。
徐々にボクもそういう考え方になってきていた。

・・ここでは、あの注意書きだけが頼りだ。自分の考えや勘なんかはほとんどあてにならない。
書いたのが何者なのか、なぜボクたちを助けてくれるのかなんてもう、どうでもいい。

あれに頼るしかない。

ソロさんでさえそう言っていたんだから、それはもう間違いないんだろう。

あの注意書きは檻だ。ボクらを決して外に出さないように取り囲む檻。
ボクらはそれより外に出たらたちまち死んでしまうから、恐怖で押さえつけ、でもある程度の自由は与えて自分たちで考えさせることはして、僅かな光を頼りに先へ進む道を見せてくる。

より安全に確実に生き残れる術を提示してくれる。

でもそれなら、と時々疑問に思うことがある。

だったらなぜムーンは死んでしまったのか?誰も注意書きに反することなどしてはいないのに。なぜ彼女が犠牲になる必要があったのか?
注意書きを書いた人の範疇を超える出来事があったのだろうか?

それにもし、いつかこの注意書きがぴたりと止まってしまったら?
ボクたちはどうなる・・・・?


・・・そんなことを考えながら、ボクは走っていた。
少し息が切れてきた、その時だった。





━─━─第二十話 Residual Crime





ブツッ・・

突然灯りが落ちた後、ブゥゥ・・・・ンという低く震えるような音が通路全体に響き渡った。
びっくりして、みんな思わず足を止めてしまう。

・・・紫色のぼんやりとした光が、薄く通路を覆い尽くしている。
蛍光色のようで、すごく目がチカチカするけど・・・一体何だろう。

レック「何だこりゃあ・・・」

ロト「・・害がないなら気にすることはないんじゃないか?・・ソロ?」

ソロ「? ・・まあ、そうなのかも知れんな」

ソロさんは不思議そうに首をかしげた。

レックさんが「行こうぜ」と言い、みんなで走り出す。

・・・・・でも・・・

ロト「・・・・・・・?」

・・・・なぜかソロさんは、その場に立ち止まったまま辺りを見回している。

レック「・・おい、どうした?」

ソロ「どうしたって何が?」

レック「いや、なんで止まってんだよ?」

ソロ「なんでって言われてもな。お前らこそもうちょっと注意しろよ。
はぁ・・・魔法出すのも面倒臭いな」

レック「はっ?・・いいから来いって」

ソロ「どこに?」

・・・・・・会話がかみ合ってない。この紫色の光のせいだろうか。

サマル「どうしたの・・?」

するとロト様がソロさんを見てつぶやいた。

ロト「・・目の焦点が合ってない」

レック「本当にどうしたんだよー?」

ロト「ソロ、もしかして目が見えなくなってるのか?」

ソロ「え?」

ソロさんはしばらく黙ると、

ソロ「・・・・・・お前らは見えるのか?」

少しの間、沈黙する。

レック「・・・・・嘘だろ。じゃあ今お前的にはどんな感じなんだ」

ソロ「真っ暗。何も見えない」

サマル「・・・なんでソロさんだけ・・・・・・あ」

まさか、普通の人間と目の見え方も違ったりするんだろうか。

レック「・・・正直、種族の差ってやつ?」

ソロ「・・・・多分」

―――――――
―――――

レックさんがソロさんの服の袖を引っ張って、なんとかその通路の終わりまで来た。
そこを出ると普通の明るさに戻っていたので、とにかく進める方へ進んでいった。

レック「いちご」

ソロ「赤」

レック「血」

ソロ「赤」

レック「海」

ソロ「だいたい青」

レック「オレの頭」

ソロ「青」

レック「葉っぱ」

ソロ「緑」

レック「お前の頭」

ソロ「緑・・・ってお前」

さっきからソロさんとレックさんは、普段から色の見え方が違っていたのかどうかの検証をしている。
もちろん走りながら。

ソロ「つうかさ、色の名前が合致しててもその色に対する色彩的な認識が共通じゃなかったら意味ないと思うんだが」

レック「あ」

ロト「・・・・・・・・・。」

ソロ「今気付いた俺も相当な馬鹿だな。こりゃ文句は言えねえや」

レック「・・はははっ」

やがて、壁にいくつかの扉が見えてきた。

でもそれより先に目に入ったのは、突き当たりの壁にある大きな模様のようなものと・・・文字だった。

その模様は、二重の円に直線がまっすぐ刺さったようなよくわからないものだった。

そしてその横に、文章が掘られている。



    真実が暴かれるとき、
    鮮血の海は干上がり
    血染めの月は地に堕ちる。

    血を捧げよ。 
    肉を捧げよ。
    そして我が贄となれ。

    迷い集え、哀れなる犠牲者のもとに。
    永遠の赤き結界にて封ぜ。
 
    慈悲深き我らの神よ、導き給え。
    英雄達を、地獄の底に。

    最も尊ぶべき秩序を壊せ。



・・・・何かの呪文だろうか?

ソロ「・・・ぅ」

それを見た途端、ソロさんが苦しそうに咳き込み始め、地面に膝をついてうずくまってしまった。

レック「大丈夫か?・・ほら」

レックさんがその体を支え、近くの壁にもたれさせた。
・・ソロさんのそばにかがんだレックさんの右手が、シュッと振り払うように動くと、次の瞬間にはあの銀色の注射器が握られていた。

レックさんは警戒しているんだ。もういつ発作が起きるかわからない。

ソロ「かはっ・・・!・・はぁ・・・・はぁ」

この状態になってしまったら、ボクらにできることはない。ただ見守るしかなかった。

ソロ「レッ・・ク」

レック「ん?」

ソロ「ロベルタ・・・は・・・・・」

・・・・え?

レック「ロベルタ?がどうしたんだ?」

ソロ「いないんだ、どこにも。・・っげほッ」

・・・・・・・・・・!!

サマル「・・ロベルタさんは・・・誰かに連れて行かれちゃったみたいなんだ、すごく怯えてて、嫌がってたけど・・・・・・・・・・・・・っ」

レック「サマル。どうして・・・」

サマル「ごめんなさい!いろんなことが立て続けにあって言えるタイミングが見つからなくて!ボク見たんだ。ロベルタさんとも少し話したんだけど・・・」

ソロ「・・・・・・話した・・・・・!?」

ロト「本当なのか、サマル?」

サマル「うん。あの人、絶対悪い人じゃない・・・きっと寂しかったんだよ。一緒にいてくれる人が欲しいだけだったんだよ。ボクのこと、いい人だって言ってた・・・謝ってくれた」

レック「あいつが悪い奴じゃないのはわかってるさ。ただまだ子供なだけなんだ」

ソロ「・・・・・。」

サマル「・・?」

ソロ「・・・サマル。・・許してくれとは、言わない・・・許されることでもない・・・・。
わかってくれとも、言うつもりはない。もうお前は知ってるんだろ・・・?」

サマル「・・・・・・・・うん」

ソロ「俺を許さなくていい。あいつのことも、お前には恨む権利がある・・・」