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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第20話

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一言一言を懸命に搾り出すように、ソロさんは言った。

ソロ「・・・・・ごめん・・・本当にごめんな・・・・・」

サマル「・・もういいよ・・・。もう謝らないで。ボクだって2人が辛いのわかってるから。もうこれ以上苦しませるのは嫌だから・・・もう、謝らないで」

確かに大切な人を殺したあの人を、きっとボクは許せはしないだろう。
だけどずっと恨んでいたって、悲しいし虚しいだけだ。
綺麗事かも知れない。でもボクには・・・あの人を恨めそうにない。

だから謝られると心苦しいんだ。ソロさんだって辛いはずなのに、人を殺したことにこんなに傷ついているのに。
それをさらに責めるなんてことボクには到底できない。

ソロ「自分の辛さを訴えて、赦してもらおうとしてるんだ、俺は。卑怯な奴だな・・・」

浅い呼吸を繰り返しながら、掠れた声でつぶやく。

サマル「そんな・・・」

ロト「そんなことはないよ。俺たちには君らを恨む権利も許す権利もあるんだ。どちらも選ばないという権利も。でも今の俺たちには君だけを裁く資格はないというだけ・・・そして同時に、君もまた裁かれるだけの理由を持ち得ていないんだ」

レック「ロト。・・いいのか」

ロト「ああ。俺もサマルと同意見だ。これ以上はもう心苦しい」



2日目 08時04分(7日目 22時22分) ―レック―



ロトだって、子孫を殺されたのだ。許しがたいはずのこと。
だが真実を知る前から一貫して、ロトは決してソロを責めようとはしなかった。

無論オレだってそうだが、自分でも少しだけ疑問に思うのだ。
人を殺すのは最も重い罪であり、理由などによっては己の命一つでは償いきれぬ程の大罪になりえる。

それなのになぜ、微塵たりとも憎しみが湧かないのだろうか。
純粋に、疑問に思ったのだ。

こいつが苦しむところを見てきたからか。でも、同情という一言でひとくくりにしてはならない何かがある気がする。

現にオレだけではなく、ロトもサマルも同じなのだから・・・

ムーンの死を認めて、殺したロベルタのことも認めたからか。
認めては・・・いけなかったのかも知れない。どんな事情があろうと、人間を殺したのだから。

認めてはならない存在に情けをかけ、干渉を繰り返しているのは・・・・・
・・オレの罪なのか・・・・・?

・・許すべきか許さざるべきか。それを裁く主権はオレにはないはずなのに。

・・・・・・・・そうか。わかった。これがこの疑問の答えなのだ。
権利のない問題を無理に解こうとしたから、そのものの本質を見失いかけていた。

許すべきか否か、有罪であるか無罪であるかは、神が裁くこと。
そも憎しみなど湧く余地はなかった。誰が悪いわけでもない。

大罪を背負わされたロベルタこそ、一番の被害者なのかも知れないと・・・・・
その時オレは思った・・・・・・。

常人には理解できないかもわからない、不可思議なこの心理。
この状況だからこそたどり着いたものだ。
これが正しいことかどうかは・・・まだわからないが・・・。

レック「・・・・・ソロ、落ち着いたか?」

ソロ「ん・・・ああ・・・」

立ち上がる時少しふらついたが、だいぶ回復したようだった。
・・・さて、時間がない。

ソロは多少苦しそうではあったが、移動することに支障はないように見えた。

3つある扉のうち1つはグシャグシャに歪んでいて、とても開きそうにない。
魔法で壊そうともしてみたが、やはり歯が立たなかった。

暗い灰色の金属でできた、小さくて綺麗な方の扉に入ると、部屋の中には神秘的な青い光が満ちていた。

旅の扉だ。

すぐ下の石碑には、こう刻まれていた。


生ける者には祝福を

死せる者には花束を

正義がために唯罪を恨み

不義がためにこの身を業火へ投げ入れよ


ソロ「これは・・・」

ロト「知ってるぞ。ルスティティア・インフェル二・・・・・何度も本で読んだ」

サマル「ボクも知ってる。お城の本に載ってた」

レック「オレもだ。・・有名なやつだったんだな・・・」

ソロ「・・・正義による自己犠牲の精神を叩き込むために暗記させるのさ。俺は18章まで全部覚えてる。嫌味な話だ」

・・・・・この行は1章の冒頭だ。オレも6章あたりまで読んでゾッとしてやめた記憶がある。

レック「これ確か・・だんだんおかしくなってくんだよな。最初はただひたすら、善いことをしましょうって訴えてくるだけだけど」

ソロ「総ての不義許さずにして、傲慢には死の制裁を。死を以て救済とすべからず、枯れて血の吐き尽すまで。無間地獄の槍の炎、ひとえに足溶かしつける。苦痛を以てこれ救済とせよ。
・・・5章くらいからはもうただの狂気じみた下手な文章だ。今でも頭にこびりついて離れない」

オレたちは、その旅の扉には入らなかった。

部屋を出て、もう片方の錆びた鉄の扉を開ける。

・・・そこは、まるで広い洞窟のようだった。

さっきの部屋の何十倍もある、巨大な空間。天井もかなり高く、声がよく響く。

・・・そうだ・・・・・・・・・・・ここには、来たことがある。
夢だ。黒い化け物の夢で見た場所だ。

そうわかった瞬間、ピインとオレの意識が張り詰めた。

しかし同時に、違和感もあった。夢と違う・・・・・・

レック「・・・・・・何だ・・・?」

壁に等間隔で、何かの器具が一直線に並んでいるのだ。
よく見ると・・・ニッパー?や鋸、腕輪のようなもの、鎖の先に杭がついたようなもの・・・どう使うのか見当もつかないような変な形をしたものがいくつも・・・

一体何なんだ?

ソロに聞いてみようと思ったその時、突然尋常じゃないほどの耳鳴りがオレを襲った。

レック「ッ!!?」

思わず両手で耳を塞ぐが、当然意味を成さない。
振り返るとロトとサマルにも同じことが起きているようで、オレと同様に耳を塞いでいた。

・・耳鳴りじゃない?

キィィィン・・・という甲高い、不気味な音だ。
ところがソロを見ると、何もせずにキョトンと突っ立っている。

もしかして・・・音の聞こえ方も違うってか?

すると、・・・・その音が徐々に低くなりだし・・・


ギキキキキキキギャギャギャギャギャガチガチガチッ


レック「う・・!!」

明らかに異様な音だった。だがオレはあることに気付いてしまう。

・・・・・・・これは音じゃない。

声だ。

振り返る。

・・・・・・微動だにしていなかったソロが、弾かれたように両腕で頭を覆い倒れるというよりは地面に体を叩きつけるようにして崩れ落ちた・・・!

ロト「!?」

レック「!!!」

今わかった。
さっきの耳鳴りや異様な音は、ソロのけたたましい叫び声だったのだ。

地面に倒れてうずくまったまま、今も凄まじい悲鳴を上げ続けている。
声だと認識できないほどではなかったが・・それでも人間の出す声とは思えなかった。

話しかけようにも、自分で自分の声が全く聞こえない。

一体何があったというのか・・・・・

ぐげぇぁああぁぁぁあああぁぁぁあああぎぃぇぇええええぇぇっ、・・尋常じゃない叫び声の中、オレたちはしばらくの間、何もできずにそこにいるしかなかった。