ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第20話
やがて骨が折れるような音とともに、肩や腕から血が噴き出し始めた。
まさかと思い注射器を用意し、体を抑えようとしたが・・・・
ソロは突然激しく吐血したかと思うと、そのまま血みどろになりながら立ち上がった。
その姿を見てオレは驚愕する。
左腕が異様に長くなっているのだ。指先が膝より下にある。
サマル「ヒッ・・・!?」
間違いない!
オレは駆け出した。
ソロの体を組み敷いて、注意書きにあった通りの箇所に抗体を打つため針を首に近づけたのだが・・・
レック「!」
そこはすでに皮膚が黒く変色していて、触るとまるで木のような感触だった。
それに驚いた隙に、抗体を持った手が強い力ではたかれた。
勢いで、抗体が手を離れて宙を舞う。
全身に寒気が走る。落として割ってしまったらシャレにならない!
その時、ロトが地面すれすれのところでそれを受け止めた。
ロト「・・どうなってるんだ・・・っ」
レック「ロト!頼む、手を貸してくれ!サマルはこれをっ・・・」
オレは万が一を考え、ソロの持っていた2つの銃をサマルの方に投げた。
サマル「う、うん・・・」
ソロは完全に錯乱状態になっていて、顔を手で押さえたまま滅茶苦茶に暴れ、金切り声を上げている。
押さえつけるには2人がかりでもなかなか骨が折れそうだ。
ソロ「ぐぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあああああああああ・・・!!!」
顔の目の辺りを押さえた指の間から、大量の血がごぽごぽと溢れ出てくる。早くも目が潰れてしまったのか・・・
ロトがその枝のようになった手を抱え込むと、目玉がなくなり、血が溢れ出すだけのぐしゃぐしゃの穴になった目が顕になった。
ロト「・・っ・・・・!」
口からも血が絶えず流れ出ている。体内の組織が崩壊を始めている。
もうすでに、もとの端整だった顔は影も形もない。
オレはロトと協力して、ソロをなんとかうつ伏せに押さえつけることができた。
その頃にはもう腕はどちらもありえない長さに変化し、おかしな方向に曲がり、足も・・骨が肉を突き破って出てきていた。
見るにも耐えない無残な姿となっていた。
肩を激しく上下させて呻くだけになったソロの首に、注射器の針を突き刺し――一気に抗体を注入した。
その瞬間、ソロは頭をもたげて絶叫した。
オレは抗体を打ち終えると、すぐに針を引き抜いてソロから離れた。
ロトも少し遠くから様子を伺っている。
・・・しばらくは腕を使って起き上がろうとしたり、血を吐いたり叫んだりしていたが、・・やがて・・・・糸が切れたようにうつ伏せに倒れると、動かなくなった。
骨の折れる異音もせず、血が噴き出す様子もない。静かだ。
・・・抗体の投与は、成功した・・か・・・・・・・・・・・
サマル「・・・・・・ソロさん・・・・・・・・・・・・・」
泣きそうな顔で、サマルが座り込む。
サマル「・・・助かる・・・・・よね・・・・・?」
レック「・・大丈夫だ、きっと・・・」
・・・・・まだ手が震えている。
予想以上のショックだった。
ロト「・・・・どうする?回復呪文は・・・・・・」
レック「いや、まだ・・・、・・・・・・・・・・・・・・!!」
・・・・その時。
・・ゆっくりと、・・・ソロが立ち上がり始めた。