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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第21話

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・・・ソロはゆっくりと起き上がった。後ろ姿だが、手の長さも足もいつの間にか元に戻っているのがわかった。

レック「・・よかった、効いたんだな・・・」

向こうをむいたままうなだれるような格好で下を向いている。微動だにしない。指先からピチャ、と血の雫が地面に落ちた。

ロト「・・大丈夫なのか?」

レック「・・・・・・・・・・・・・・。」

・・・立ってから、ピクリとも動かない。

レック「・・・・ソロ?」

呼びかけると。
ざり、と足で地面を摺るようにして半分だけこっちを向いた。そしてしばらくしてから、もう片方の足もこちらに向ける。

やっぱり下を向いたままで、目元は見えない。

・・・心配になって、もう一度呼びかけようとした時。

ドウッ、とソロの周りの地面が広範囲の円形にへこんだ。同時に、周りに落ちている小石や地面に置いた注射器、銃などがカタカタと揺れ始める。

ロト「・・・・・・・・・・・・・。」

風が起こり、ソロやオレたちの服と髪を揺らした。

・・・・・・・・ソロが無言のまま、ゆっくりと・・・1歩ずつ、こちらに近づいてきた。

それだけならよかった。

それと同時に、遠く離れているはずの壁が連続でとへこみ始めたのだ。
聞いたこともないような音と共に、一瞬で壁がへこみ周りに亀裂が入る。

ソロは少しずつ近づいてくる。

レック「・・・・・・・・。」

じりっ、と後ずさる。

何かまずい気がして、ベルトの銃に手をかけたその時・・・。

爆発にも似た音と同時に、左右から砂煙がすごい速さでオレに向かってきた。
いや、正確にはその砂煙は、オレに向かってきた‘何か’によって巻き起こされたものだった。

レック「!?」

体にすごい衝撃を感じて、一瞬でかなりの高さまで跳ね上げられた!
腕にきりきりと痛みを感じる。まるで手か何かに強く握られているかのような・・・

次の瞬間、オレは自然に落ちるよりもはるかに速いスピードで地面に叩きつけられた。

レック「ッ・・!!」

激痛に声を上げる暇もなく、今度はさっきよりもさらに上まで跳ね上げられる。確実に、無数の手に掴まれ引っ張り上げられている感じがした。

そして背中から思い切り壁に叩きつけられる。壁は大きくへこんで崩れ、オレはほぼ埋まるような状態になった。

レック「がはっ・・・!!」

ふっと見えない手が離れ、地面に落下する。とっさに受身を取り、地面を蹴って体勢を立て直そうとするが――その瞬間背中に強い打撃を受け、うつ伏せの状態で体ごと地面にめり込んでしまった。

手でぶん殴られたような感触ではあったが、力が拳のそれではなかった。

口の端から血が地面に落ちる。

ロト「レック!!・・っソロ、何を・・!!」

見るとロトがオレの方に走ってきている。

レック「ロト、駄目だ!こっちに来・・・ぐぅッ!?」

また見えない何かに、今度は首を絞められた。そのまま体を持ち上げられ、またしても上に引っ張り上げられる。

レック「が・・・ッぐぁ・・・!!」

ここでオレは、さっきから記憶の奥で蠢いていたものの正体を掴んだ。

クリアと呼ばれる、視認不可能な触手。変幻自在でとてつもない長さと力を持つ――

ロト「な・・・何なんだこれは・・!ソロ、やめろ!!」

その声に反応してか、ソロが視線をオレからロトに移す。
するとロトはまるで何かに弾き飛ばされたかのように吹っ飛び、壁が崩れ落ちるほどの力で叩きつけられた。

ロト「ぐあッ!?」

サマル「・・・・・・・・・・っ・・!」

レック「ぐ、くっ・・・・ぅ・・!」

ソロは俺に視線を戻し、ふっと浮かび上がると・・・オレと同じ高さまで飛んできた。

レック「――!?」

ソロはひどく悲しげな表情をしていた。目は元に戻ってはいるが、血の跡は消えていない。

突如、左腕の付け根に激しい痛みが走った。腕の部分を手で掴まれ捻られているような感じがする。見てみるとそこは手形に鬱血していて、かなりの力がかけられていることがわかった。

レック(・・・何を・・・・・!?)

痛みは増す。やがて肩から腕はねじられるようにして、無理な方向にどんどん回されて・・・

レック「うっ・・あぁぁ・・・!!」

ゴリッ、と嫌な音がした。こいつ、まさかオレの腕を・・・・・

レック「や・・・めろ、ソロ・・・!!」

尋常じゃない痛みに、オレはたまらず悲鳴を上げた。

しかしソロはやめるどころか、どんどん力を強めてくる。・・そして・・・

レック「・・ぎゃあああああああああッ!!!?」

おぞましい音と共に、腕が肩から離れた。
ブシィィッと血が吹き出て地面に落ちていく。オレは喉を仰け反らせて絶叫した。

体から離れた左腕は空中にとどまったままだ。

それを見て、ソロは最初無表情だったが、今は零れ落ちる血をどこかうっとりとしたまなざしで見つめ、かすかに笑みを浮かべていた。

ソロ「・・・・・・。」

ソロは無言のまま、肩を上下させて喘ぐオレに右手を向ける。
すると今度は右足にさっきと同じ痛みが走る。それに気付き何をされるかオレが察する前に、ぐりぃっ、と足が付け根からねじられて・・・

レック「う・・・っぁああぁああ・・!!」

グシュッ。

大量の血が弾け飛ぶ。

右足も引きちぎられてしまった。
そして間髪入れずに、右腕にも痛みが・・・・・・・

レック(・・おい待てよ・・・・・嘘だろ・・・・!?)

もう嫌だ、痛い・・・こんなに痛いのに・・・・・・・

レック「や・・・やめッ・・・・ソロ・・・・・」

声を出すこともままならない。目の前がチカチカ点滅し出す。
だが右腕もやがてねじり引きちぎられ、ほぼ同時に左足も・・・・・・・・

レック「・・あぅ・・・っぁ・・・・あ・・・・・」

・・・・・・オレの体、今・・どうなってる・・・・・・・?



2日目 08時24分(7日目 22時42分) ―ロト―


ようやく全身の痛みから解放され立ち上がると、目の前には信じられない光景が広がっていた。

胴だけになったレックが浮いている。そのすぐ前にはソロがいる。
・・・・・動かなくなったレックの周りには、ちぎれたその手足が空中にとどまったままだ。

ロト「―――」

体が動かない。あまりにも異様なそれに、目が釘付けになった。

ソロがレックに向けていた右手を下ろすと、レックの手足はふっと・・・まるで吊るしていた糸を切られたように落下した。

俺は何かを考えるより先に、大急ぎでベホマの詠唱をした。
レックの体が淡い光に包まれる。手遅れでなかったことを安堵したのも束の間・・・

それを見たソロが、目線だけで俺を見る。その後、こちらを向いた。
・・・そして無表情だった顔が突如、煮えたぎるような怒りに染まる。

ロト「!」

目の前に閃光が走った。

とっさに腕で受け止めたのがいけなかった・・・骨が砕け、腕が不自然に変形する。

ロト「ぐ・・・!!」

飛び退いて距離をとり、べギラゴンを唱えて炎の壁を作るが・・・ソロはまるで物ともせず、さっと右手を払う軽い動作だけで炎は消し飛んでしまった。