ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第21話
その言葉で、この雨の正体がわかった。
・・虚栄。無理した笑顔。強がり。誤魔化し。嘘。
我慢。見ないふり。忘れたふり。傷つかないふり。
それで身を守ってきたソロにとっては、この温かい雨はこの上なく心地良いものなのだろう。
レック「・・・・楽か?」
ソロ「ああ・・・」
自分の脆い心を守ってきたこの雨。何もかも投げ出して浴びて、浸かって、その温かさによって、痛みを癒していたのだ。
ソロ「・・・・・いつも、こうやって逃げてたんだ」
やがてかさを増してきた水が、ソロの全身を沈めた。
顔も全て水に浸かり、だが少しも苦しそうには見えない。
座っているオレも、背中の中程まで水に浸かった。
温かく優しい感触。
全身浸かって、何もかも放り出したくなる気持ちもわかった。
ソロは目を瞑り、・・まるで眠ってしまったかのように見える。
ソロ「何も見ないように聞かないようにして、逃げてた。
・・こうしてるとすごく楽なんだ・・・嫌なことを忘れられた・・・・・・」
レック「そうか。・・でもそれだとソロ、息ができないんじゃないか?」
オレも目を瞑って、しばしの間水の心地よさに身を委ねた。
ソロ「・・・そうなんだ。・・・これだと息が・・・できないんだ」
ふふ、と笑う声がかすかに聞こえた。
水の中で手に何かが触れた。
目を開けてそれを確かめる。
ソロはオレの手に自分の手を重ねていた。
ソロ「・・・・ごめん。ありがとう。こんな俺に。
自分を守ることに精一杯で・・・それ以上のことなんて何もできないくせに、誰にも弱さを知られたくなくて・・・いつも強がりばっかりで」
触れていただけの手が、弱い力で握られた。
ソロ「こんな俺に、優しくしてくれてありがとう。今はまだ弱くて何もできないけど・・・いつか絶対に、自分の力で自分を守れるようになって見せる。
だから・・・・・・」
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その後、ソロが何と言っていたのか思い出せない。
何かに邪魔されて、その先を思い起こすことができない。
今オレはどこにいて、何をするべきなのか。
何をどうすれば、最善の道を選べるのか。
そもそもそれはオレの手の中にあるのか。
・・・・・・ソロもオレも、・・もう知っているんだ。
闇よりも何よりも怖いのは、孤独だと。
どんなに辛い目にあっても、惨めな思いをしても、そしてそれに慣れてしまったとしても。
やっぱり、独りは嫌なんだ。
独りじゃさびしいんだ。
誰かが傍にいてくれなければ。
支えてくれなければ。
理解してくれなければ。
人は生きることなどできない。
笑顔になんて、なれない。
・・・独りで生きるなんて、できないんだ・・・・・・・・・・・・・。