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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第27話

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2日目 15時11分(8日目 05時29分) ―ロト― 



突然、洞窟全体が揺れ始めた。

壁や天井が崩れ、大小の瓦礫が雨のように降り注ぎ、砂埃を立てる。

ロト「!!」

目の前に巨大な影が落ちてくる、だがすぐにそれが大きな天井の破片だと気づく。
立ち上る砂埃の中、俺は行く手が塞がれたことを悟った。

誰も怪我をしていないことを確認し、目を凝らすと―――

レックとソロは俺たちから少し離れたところにいる。
見るとレックはぐったりしたソロを抱きかかえるようにして庇っていた。
ソロは気絶しているようだ・・・だからうまく身動きが取れずにいるんだろう。

アレフ「!!・・2人とも早くそこから離れて!!」

はっとして天井を見ると、レックたちの真上の天井が今まさに崩れ、落下しようとしていた。
あの下敷きになればただでは済まないだろう。

レックはアレフの声でそれに気付き、上を見上げる。
次の瞬間、レックが動く暇もなく天井が―――――・・・・・













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━─━─第二十七話 Resumption
















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ロト「・・・・・・・・・・・・・・」

・・・・・目を開くと、真っ先に視界に入ったのは・・・
もはや見慣れてしまった、色が反転した空の景色。
血のように赤い空。黒い雲。

そして案の定、あの生臭い匂いが鼻をついた。
・・この匂いだけはどうしても慣れられない。

仰向けに横たわっていた俺は、重い体を持ち上げるようにして立ち上がった。

エックス「ってて・・・。・・・どうなってやがんだ?」

周りにみんなもいた。
エックスが咳き込みながら辺りを見回している。

アルス「・・・・も、戻ってきた・・のかな・・・・」

見ると、1つ目の屋敷を出たあとから出現した色違いの屋敷が遠くにあった。
時間と場所が戻ったのだろうか。

レック「・・・・・・・・・・」

・・レックはしゃがんだまま、疲れ切った表情で地面を見つめていた。
大丈夫かと声をかけようとしたが・・・やめておいた。

ロト「・・・・・・屋敷に戻れということか」

アレフ「恐らく・・・・・」

―――――――――――――
―――――――――






・・・・・屋敷に戻ったあと、しばらく各自で休憩をとった。

だが以前のように他愛ない話をしたり、まして談笑などは少しもなかった。

レックと俺、そしてサマル以外は、事情も知らずにあんな惨劇を見る羽目になったのだ。まだ誰もそれについて口にしようとはしない。

ただ時間ばかりが過ぎていった。


・・・そんな時、俺が自室で本を読んでいると、扉が小さくノックされた。
その向こうに誰がいるかは気配でわかった。

ロト「・・・入っていいぞ」

ゆっくりと扉が開き、・・・入ってきたのはやはり、サマルとアレンだった。

サマル「・・・ロト様・・・・・・」

ロト「・・ん?」

サマル「・・・・・・・・・・」

アレン「・・・。・・あの、サマルから聞いたんです。その・・・少しですが」

ソロのことを。

アレンは目を伏せ気味に、そう言った。

アレン「申し訳ありませんでした。迂闊だった。・・・無知だったが故に・・・ロト様にも不快な思いをさせてしまっていたかも知れません」

・・・・・・・・・・・・。

ロト「・・・・・君が謝ることはないよ」

俺はため息をつき、申し訳なさと後悔から、彼らに背を向けた。

ロト「話すのが遅れてしまったのは俺たちの責任だ。ただ・・・俺たち自身も整理がつかなくてな。・・・・すまなかった」

アレン「そんな、ロト様は」

ロト「いや。謝らせて欲しい。もっと早く話していれば違う結果になったかも知れないんだ。みんなにも気を遣わせた。仲間が死んだのに・・・その原因も理由も明かさずにいたのは間違っていた」

サマル「ロト様・・・・・」

サマルが泣き出しそうな顔で俺を見上げる。
俺は頷いた。

ロト「今日、みんなに話すよ。全て説明する。あの屋敷であったことも、ソロのことも全部」

―――――――――――――
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――――――










8日目 05時29分 ―レック― 


レック「・・・・・・・大丈夫なのか?」

ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

レック「・・・・・・・苦しくなったら、すぐにやめろよ」

扉には鍵がかかっている。

ソロはベッドに仰向けになって、じっと天井の一点を見つめていた。

オレが部屋に入ってきた時から、ずっとこの状態だ。鍵もかかっていたし、何事が起きたかと思ったが。

オレがノックすると自然に鍵は開き、招き入れるように扉もひとりでに開いた。

何を聞いてもソロは答えなかった。発作を起こすこともなく、ただ無表情で天井を見つめ続けるだけ。眠るでもなく、ただじっと。

オレはそのまま出て行く気にもなれなくて、その傍らに佇んでいた。

何十分経っただろうか。いつまでそうしているつもりなのか、と問おうとした矢先、ソロは不意に口を開いた。

ソロ「・・・・・・・思い出せない・・・」

レック「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何がだ?」

ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ソロは無表情のままオレを横目に見て、・・・天井に視線を戻す。

ソロ「何が怖かったのか、思い出せないんだ。なぜあんなにも怯えていたのか。
俺は何を恐れていたんだ?」

・・・・・・・・・・・。

ソロ「・・・なあレック、教えてくれないか?」

天井を見つめたまま、何の感情も篭っていない声と表情でソロはそう言った。

オレは少し悲しい気持ちになりながら、天井を見上げた。

レック「教えられない。オレにもわからないんだよ。わからないのさ。
・・・わからなくていい。それでいい。教えたってお前はもう何も思い出せない」

・・・ソロは目を細め、うっすらと微笑んだ。

ソロ「本当に何も思い出せない。今までどんな気持ちでいたのか。
・・・・・・・・・」

ソロは体を起こし、ベッドに腰掛けると・・・自分の両手に視線を落とした。

オレは何も言わずに、それを見守っていた。

ソロ「・・・・・・・・・・・♪~・・・♫~~♫~・・・~♪~・・・・・・・・」

・・・・・・・その歌には微かにだが聞き覚えがあった。
天空語の歌だ。

寂しげで明るいとは言えないメロディラインだが、そこには悲しみだけではなく、かすかな希望の光を見据えて・・・それを愛しげに見つめているような。

同時に叶うことのなかった希望を、暗い諦めの境地から静かに眺めているような・・・

ソロは、この歌を知らない。・・・そう、知らない。

ソロ「昔聴いた歌だ。不思議だな。
・・・いつかここから逃げ出すことを望む・・・外の冷たい風の吹く世界へ。
そこでは誰もが隠すことができる。そこは寒くて広い場所。
温かさを見失うことができる・・・・・」

困ったような顔をして、ソロはため息をつく。