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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第27話

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・・・さて・・・ここからまた最初と同じように息を止めたまま、扉まで戻らなければならないわけだが。
無理があるな。無傷の時でもギリギリだったのにこの状態では・・・

・・仕方ないな。考えてる時間はない。
力押ししかしていなくて非常に気に入らないが、みんなの命には代えられない。

なるべく息をしないようにしつつ、壁伝いに進むしかない。

・・・早足で数歩動いただけでもう息が続かなくなった。運の悪いことに、気体になった酸のせいで早くも呼吸器官の一部が壊死してしまったらしい。

息を吸い込んだ瞬間、体の内部に火で直接炙られたような激痛が走った。
予想と覚悟はできていたが生理的に咳き込んでしまった。

道のりが異様に長く感じる。何度か血を吐いたせいか、喉や口の中が固く乾いて痛い。
視界が暗くふらつくようになってきた。

・・・しかし、暑いわけでもないのになぜこんなに汗が出るんだろうか。服が体に張り付いて鬱陶しい。

とにかく早く扉までたどり着かなくては・・・そう思い顔を上げると、そこにあったのは扉へ続くはずの道ではなかった。

どういうことだ?道を間違えるはずはないんだが・・・。・・・ああ。よく見ると、さっきまでと地面が違う。場所替えの魔法がかかっていたんだろう。

目の前にあるのは銀色の、鋭い杭がいくつも生えた壁。特殊な金属でできているのか、異様な冷たさとまるで発光しているかのように滑らかな表面を持っていた。

まるで鏡のような壁だが・・・目の前に映っているのは俺の姿ではなく、赤黒い色をした大きな塊だった。
不思議に思い腕を動かしてみる。すると壁に映った赤い塊からも同じように何かが伸び、動いた。
そして俺は動かした自分の腕を見て目を疑った。

右手はほとんど無傷だったはずなのに、7割の皮膚が溶け下の肉が露わになり、脈打つ血管が剥き出しに・・・・・・・・

俺は再び、目の前の壁に視線を向ける。
・・そこに映っていた赤い塊は、紛れもなく俺の姿だった。

気体化した酸によって全身を少しずつ蝕まれ、死の霧を吸い続けたせいで細胞が内側から崩壊を始めているのだ。
喉元などはもう完全に全層の皮膚とその下の肉が溶け、中のよくわからない物体や血管が見えた。
息をしてられるのが信じられない。

いや、実際にはもうしていないのかも知れないな。本当に必死になると他のことが気にならなくなると聞いたことがある。
そういうことにしておこう。

俺は体の向きを反転させ、引き返した。早くしなければ俺自身の体がもたない。
その時、背後から何かが外れるような金属音がした。

・・やっぱりな。絶対これだと思った。

俺はうんざりしながらも全速力で走り出した。
さっきの壁がすごい速さで追いかけてきている。なんて意地の悪い仕掛けだ。

とその時、左足が地面に付いたとたん軽い音を立てて折れてしまった。
そのまま倒れ込む。

膝をやられてる右足をかばうようにして走ってきたから、酸が早く染み込んだんだろう。ついに骨まで溶かしてしまったらしい。

ついてないな。

舌打ちをして立ち上がり、頼りなく揺れる左足を構わず地面に突き立て、走った。

金属音がどんどん近付いてきている。

だがあともう少しで横へそれる道に曲がれる。最後は壁から手を離して走り――ギリギリのところでかわすことができた。

そして顔を上げると、すぐ前に鉄の扉があった。

・・・・・時間切れになっていないことを祈りながら、取っ手に手をかける。
ひどく重かったが、渾身の力を込めて引くと、扉は開いた。

ほぼ倒れるようにして外に出る。床に手をつき、喉の奥に詰まっていた血の塊を吐き出した。

そして思い切り息を吸い込んだ。

俺が外に出たのとほぼ同じタイミングで扉は閉まり、取っ手の横に付いていた色の違う―魔法金属でできていると思われる―棒状の鍵がひとりでに動いて、重々しい音を響かせて扉をロックした。

鍵からオレンジ色の光が出て、扉の輪郭を伝い・・・一周してまたもとの鍵の場所まで戻る。
すると漆黒だった鉄の扉がまるで時間を早送りしているように、みるみるうちに錆びていく。
バキバキと音を立てて、どんどん劣化して・・・・・最後にはほぼ灰色のような色になり、扉と壁の境目は溶接したかのように繋がった。

この扉はもう絶対に開かない。
・・・・あと少し遅かったら、俺はこの中に閉じ込められていた・・・・・。

扉の下から滲み出る自分の血を眺めながら立ち上がると、俺は歩き出した。
ここでじっとしていたら、恐らく俺の体は俺が死んだのだと思って活動を完全に停止してしまうだろう。
そうなるわけにはいかない。

歩こう。

・・壁伝いに歩いていくと、小さなトラップを見つけた。一撃死タイプのものだ。こんな場所に・・・。
血痕を追ってくるだろうレックたちが引っかからないことを祈りながら、通り過ぎた。

しばらく歩いたところで、ついに体が限界を迎えたらしく意思とは無関係に倒れた。

呼吸が浅くなっていく。急速に体が冷え、力が抜けていくのを感じた。

・・今から俺にできるのは、レックたちが来るまでに自分が死なないよう祈り続けることだけだ。

寒いな・・・・・・。

右手に握っている青い鍵を見つめ、俺は目を閉じた。