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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第27話

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ソロ「言いたくないなら無理に言わなくてもいいけどな」

するとレックは少し困ったような表情になったあと、少し笑った。

レック「じゃあ、これだけ言っとく。シンシアさんは、今も変わらずいつまでも、お前を想い続けてるって・・・言ってた」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
え?

・・ああ。そうか、そうだった。
こいつには他人の夢に干渉する力があるんだったな。

申し訳ないことをした。・・・シンシアも・・・お節介はなかなか治るもんじゃないみたいだ。
また色々と言わなくていいことまで言ったに違いない。
だからこいつが下を向いて黙り込むなんて柄にもないことし始めるんだな。

・・・でも。
今の俺には確実に、救いになった。

ソロ「そうか・・・・・・・・ありがとう・・・・・」

―――――――――――――
―――――――――




やはり、今回は何かが違う。時間や会話がずれているだけじゃない。
もっと何か、別の力が関わってきている。

だとしたら・・・・・きっとここでも今まで通りにならないだろう。

絶対にここで死ぬわけにはいかない。

13分以内に鍵までたどり着かなくては逃げ場がなくなる。少し目に入った程度だが、罠の配置や霧の発生場所が違った。

息を止めたまま何分間も全速力で走るのは流石に何度やっても辛いが・・・少しでも息をすればその瞬間に肺が爛れる。

・・・・・・・・分かれ道が多いな。



・・やっと霧の届かない場所まで来た。くそ、目が痛いな。すごい出血だ。
あの霧を直接粘膜で受け続けてたんだから当然だが。

目の前にあるのは、何度か見たことのある大掛かりなトラップだ。
最も意地の悪い、よけられないタイプのやつ。

クソが。鍵を取りに来たのに手を使えなくされてたまるか。

この扉の中では魔力が封じ込められているため、自力で扉まで戻れるだけの状態でいなければならない。両足を失ったら、ほぼゲームオーバーだ。

それなのに今回はどうも、俺を扉まで帰す気はさらさらないようだ。
両手両足どころか爪一枚残さないつもりでいる。

・・・今俺の足元に広がっているのは、強力な酸の海だ。何と言ったか・・・確かエイチエフとかいうやつ。

目の前には強制的に手がひき肉になるトラップ、その下にはこれだ。進めない。
どうしろと?

・・・・苛立ちが募る。こうして立ち止まっている間にも時間はどんどん過ぎていく。
50分を過ぎれば例え扉まで戻れたとしても、外には出られず死を待つだけだ。

考えろ。どうすれば先に進める?

このトラップは奥にあるレバーを下げると崩れて残骸になるが、そこに手を伸ばせば前にあるむき出しの挽肉機に必然的に触れることになる。感覚が残っているうちに奥まで手を入れて、レバーを下ろさなければならない。
前に色々と考えてみたがこれは、単に手を使用不能にするためだけの装置のようだ。

思考を始めて数秒で、ある方法が思い浮かんだ。
一言で言うと、非常に馬鹿馬鹿しく安直かつリスキーだ。
これが正解とは思えない。

だがこの時俺は、焦りからかそれ以上考えようとはしなかった。もう既に1つ方法を見つけたのだから、それを実行せずに放っておいて思考を再開する気にはとてもなれなかったのだ。時間が無駄になると。

思い付くや否や、利き手ではない左手を装置の中に伸ばした。

表現し難い音とともに高速で肉が切り刻まれ、骨が粉砕される。
ミンチになった肉片が血と混ざってボタボタと落ちていく。

時間が勿体無いので機械の動くスピードに合わせず、無理やり手をねじ込んでとっととレバーを下ろした。

引き抜くと、当然だがまあひどい有様だ。でもいちいち気にしていてもどうしようもない。

トラップ装置は音を立てて崩れた。残骸が辺りに散らばる。
俺は一番大きなものを選んで、右手で掴み引きずってやっとのことで持ち上げると、渾身の力を込めて投げた。

派手に水しぶきを―“水しぶき”ではない気もするが―あげて、酸の海のほぼ真ん中あたりに落ちた。

俺はすぐに後ろに下がり、助走をつけて――思い切り地面を蹴った。

さっき投げた装置の残骸にうまく着地することができたが、当然ながら数秒経たぬうちに沈んで溶けてしまうので、瞬間的に再びジャンプする。

・・・ギリギリ、向こう側まで届いた。息を吐き、立ち上がって振り返ってみるとその時、酸の水面が突然数段増しに上がった。
そしてさっきまでいた向こう側の岸に、酸が川のように流れ込む。

危ないところだった・・・と思いたかったがそんな気持ちになるにはまだまだ早かったようで、俺は走り出した。増え続ける酸がこちらにも流れてきたのだ。

相当な勢いでかさが増えているらしく、少しするとかなりの速さで酸の流れがあとを追いかけてきた。

―――――――――――――
―――――――――



・・・・・片足の膝と片目と片腕を犠牲にし、結果的に鍵を手に入れることはできた。が。
釈然としないな。

戻る道が完全に・・・・・存在しない。どうしたものか。

まあ方法がないことはないんだが、どうもな・・・馬鹿らしい。
そんなことを気にしてる場合じゃないとかそういう次元ではなく、とにかく気に入らない。
昔から力押しは好きではなかった・・・と言ってもいいのだろうか。どう考えても馬鹿な力押しの無茶をしておいて。

というのは、どうやらさっき飛び越えた酸の海はかさが増えていたわけではなく、底がせり上がってきていただけのようで―今高台から見ているのでわかるのだが―、それが岸と同じ高さで止まり、海がなくなった代わりに・・・辺り一面、いたるところが酸に沈み浅瀬となった。

俺は今数メートル上からその様子を眺め、思案に暮れている。

流石にこればかりは・・・。

・・・・・・・・いや。迷っている場合ではない。これ以外に方法はないはずだ。
方法と言えるべき方法でもないのかも知れんが、これしか道がないのは確かだな。

俺は下に降り、膝下程の深さの酸を見下ろした。
かがんで無傷なほうの右手を伸ばし、薬指の先だけで少しだけ触れてみる。

・・・最初は何も感じなかったが、徐々にチリチリと焼けるような痛みが生じ始めた。
数秒経ってから指を見てみると浅い箇所は少し焦げており、内側は赤く変形して腫れていた。あと少し長く触れていたら溶けたのだろうか。

まあ、この程度なら。

俺は立ち上がり、青い光を放つ鍵を握り締め、走り出した。

なるべく飛沫を立てないように、しかし出せる限りのスピードで走った。
しばらくは何ともなかったが、やがて酸に沈む部分に血が滲み始め・・・小さく煙が上がり出した。

だんだんと痛みが強くなってくる。

これ転んだりしたら洒落にならないな・・・などと考えながら、来た道を戻っていく。
喉が焼けるように痛い。気体になった酸を吸ってしまっているんだろう。
血の味がする。

・・・・・やがて、最初に通った毒霧の通路が見えてきた。そこの地面は酸に侵されていない。

走り抜けて飛び越え、着地する。
・・けっこう痛いな。骨が見えているところもかなりある。