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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第29話

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サマル「ありがとう・・・ございます。ほんとにごめんなさい・・・」

ロト「大丈夫」

サマルが後ろを振り返らないようその背中に手を置いて、壁の方まで戻った。


エックス「ああびっくりした・・・質の悪い仕掛けだぜ」

ソロ「全くな。・・・このユニットはさっきのとほぼ同じルールだ。違うのは鍵を探さなくていいこと・・・それから」


誰かが死ななければ先に進めないこと。


・・・・・・・ソロは確かに、そう言った。







━─━─第二十九話~Bloody Shoulder~







アルス「え・・・」

エックス「なっ、どういう意味だよ!」

ソロ「正しくはほぼ必ず死ぬくらいの怪我を誰かがする、だ。まあ望みがないわけじゃない」

言いながら、ソロは壁に付いている錆びた何かの装置を操作し始めた。
すると、ビ―――ッというブザー音の直後、装置に触れていたソロの左手が半分ほど爆発して吹っ飛んだ。

壁に血飛沫が飛び、弾けた肉片の中から金色のボタンのようなものが出てきた。
ソロは平然とそれを拾うと、装置にあるくぼみに設置した。

ソロ「運が良かったみたいだ。こいつが埋められてるのが首か頭だったらゲームはここで終わってた」

エックス「・・・・や・・・・・・やめてくれよなそういうの・・・・・・」

危うく心臓が止まるかと思ったが、何事もなかったかのように機械をいじるソロを見てなんだか馬鹿らしくなってきた。




アレン「・・・・・・要は手分けして、トラップやギミックを解きながらゴールまで行けばいいんだな」

ソロ「そういうことだ。入る通路によっては何もしなくてよかったり、即死したりするけどな」

エックス「またいちいちそういうこと言う・・・」

12ある通路のうち、入るのは10。その即死するという通路に誰も入らなければいいんだが・・・

ソロ「無傷で済む通路は運が良くて1つあるかどうかだ。逆に100%即死するのは必ず1つ、一撃で瀕死になるのは合わせて6つ。ちなみにどれがどの通路になるかはランダムで、最初の1回以外はやり直しの度に入れ替わる」

・・そう都合良くはいかないか。

ロト「・・最初のやり直しではその前と通路の位置が同じってことだよな」

ソロ「ああ」

ならまだ、希望があるというわけだ。

アベル「時間制限は?」

ソロ「50分。それまでに1人でもゴールまで行けばいい」



・・・・・・しばらく進むと、他の通路の様子がわかるスペースまで来た。錆びた鉄で四方を囲まれた狭い道は途切れ、ガラスでできた少し広い部屋に出る。

まず軽く魔法を撃ってトラップがないのを確認してから入り、周りを見てみる。
暗闇が続く空間の中に、細い通路が入り組んで同じ方向へ伸びている。ところどころ、上方や下方にトラップがあるのが確認できた。

・・・・あれは・・・ギロチンか?通路の中からは絶対に見えない場所に、大きな斜め型の刃が吊り下げてある。しかもは刃の部分は下ではなく、通路の中を向いている。位置からしておそらく、首をはねるものだろう。
あれが、即死トラップか。

俺はその通路の入口の方をたどって見てみた。・・・・そして、息を呑んだ。

・・・・・・あそこには誰も入っていない!

ソロが機械で確率を計算して、即死トラップがある確率が最も高いので入らないでおこうと言ったものだ。
やった・・・ひとまず即死は免れた。このまま行けば被害は最小限で抑えられる。

極限の緊張状態で突然安心したからか、笑みと同時に涙がこぼれた。

だが、立ち止まるわけにはいかない。俺はそのまま歩き出した。

やがて、奥の方に扉が見えてくる。・・何か書いてある。
近くまで来ると、乱暴に「WAIT」と彫られてあるのがわかった。

試しに扉を開けようとしてみたが、何をしても開きそうにない。やはりここで待てということか。
よく見ると鍵穴はあるがそれは扉をそのまま貫通していて、鍵穴としての機能はなさそうだった。危険がないのを確かめてから、鍵穴を通して扉の向こう側を見てみる。
するとそこには、ユニットのゴールである赤い金属の扉があった。

ロト「・・・!!」

あれは・・・・・。じゃあ、俺が入ったこの通路は唯一の無傷で済む通路だったということ。
つまり、裏を返せば俺以外の全員が必ず危険にさらされるということだ。

ロト「っ・・・・・・・」

・・・・・・・・何も出来ない自分が情けない。このまま待っていることしか出来ないというのか・・・・・・。

その時突然、天井が大きな音を立てて左右に割れ、壁に入るようにして消えていった。

ロト「な・・・」

・・それは俺のいる通路だけに起きたことではなかったようで、見ると他も全て同じように天井がなくなっていた。


「・・・・・・開かない扉についた奴がいるだろう!誰だ?」

ソロの声だ。
俺は声を張り上げて答えた。

ロト「俺だ、ロトだ!扉に待てと書いてある・・・!」

ソロ「そうか・・・ならそこから動かなくていい。その通路は安全だがゴールすることができないからな」

そうか・・・そういうことか。く・・・・本当に何もできないということだ。

「・・ロト?もう一番奥まで着いたのか・・・?」

すぐ上の方からエックスの声が聞こえた。どこか弱々しい。

ロト「エックスか・・・ああ、俺の通路が無傷で済むところだったらしい・・・」

エックス「そっか、・・・悪いんだけどさ、俺・・・もう、動けそうにないんだわ。あんまりでかい声も出せない、し・・・ソロに、伝えてくんねえかな・・・」

ロト「っ・・・大丈夫なのか!?」

エックス「・・・ん・・・多分。ごめん・・・」

ロト「いや、お前が謝ることじゃない・・・なるべく体力を消耗しないようにしていてくれ」

苦しそうに絞り出すようなエックスの声を聞いて胸が痛んだ。自分だけが五体満足でいることが申し訳なく思えてくる。が、どうしようもないのも事実だった。

そしてすぐに、エックスのことをソロに伝えた。すると返ってきたのは、意外な返事だった。

ソロ「それなんだけどな・・・どうやら俺もだ」

ロト「え?」

ソロ「俺が動けないわけじゃないんだが、行き止まりだ。誰かが別の場所でロックを解除しないと通れない仕組みになってる」

ロト「・・・・・・」

ソロ「あと、追い討ちをかけるようだが頚動脈をやられた。なんとか止血してるがあまり長くはもたない」

ロト「なっ・・・・嘘だろ・・・・・・・」

ソロ「俺の心配はしなくていい。それより他の奴の様子を見てやってくれ」

・・・俺は目を凝らし、他の通路を探した。
・・・・・・・あそこにいるのはアレフか。まだ怪我はしていないみたいだが・・・通路の先の方に何かある。それに気付いているようで、警戒しながら進んでいた。

その横の通路にはアレン、上にはアルスの入った通路がある。

とその時、後ろの方からエイトの切羽詰った声が聞こえた。

エイト「ソロさん!ナインさんが・・・足が切られていて」

ソロ「ああ、わかってる。それからその通路の奥にあるのは両手を切断しないと進めないギミックだ。多量出血で死なない自信があるならそのまま進め」