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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第30話

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5日目 11時24分 ―ロト―


落ちていくとき特有の、内蔵が上へ持ち上げられていくような感覚。
重みで必然的に頭が下を向く直前、それは起きた。

バチン、と光と同時に破裂音がしたかと思うと、落ちていた体がぐんっと急に減速した。
そしてそのまま一瞬だけ止まると、今度は上へ吸い上げられるような力が加わる。
視界の端に銀色の板のようなものが見え、俺は体を一回転させてそこに着地した。

ロト「・・・・・・っと」

ソロ「おお、何も言わなかったのにうまいもんだな」

しれっと言うソロに文句を言おうと口を開きかけ、俺は気付いた。

・・・今自分がした動きから考えて、俺たちが立っているのは。

ロト「・・・・・・・どうなってんだ」

目の前では、壁に絡まった鎖が重力に従ってだらんと垂れ下がっている。
・・・いや、俺の視点からすると垂れ上がっている、とでも言うべきか・・・。
そう、鎖の先端は上に向かって垂れているのだ。俺は思わず壁から遠ざかった。

ソロ「何か言いたそうな顔だな」

ロト「当たり前だろ!何も言わずにサマルに銃を向けたり、いきなり飛び降りたり・・・少しはこっちの気持ちを」

ドタンッ!!

ロト「!?」

エックス「・・・・・いっててて・・・・何だってんだ?」

ソロ「よう。斬新な着地だな。まあどんな着地をしようとお前の勝手だが、今しばらくは俺を脅かさないでくれ。集中してるんだ」

ロト「・・・?」

見ると、ソロは俺たちの立っている床から伸びたコードのようなものに手をかざし、魔法を使っているようだった。ソロの手のひらは光を帯び、周りにはパチパチと電気エネルギーが渦巻いている。

ロト「・・・・何をしてるんだ?」

ソロ「みんながここに着地できるようにしてる。これは電力を使うことで磁力を引力に見立てて好きなところに発生させられるものだ。本来はこうして使うものじゃないんだが」

ダンッ!

アルス「い・・・・・・・ったぁ。びっくりした・・・・・・」

ソロ「・・・・・・・・・・。・・・幸いなことに魔法で電圧に似たものをを生み出せるから、応用すれば意外な使い道があるってわけだ。
・・・今結構な勢いで頭打ってたが大丈夫か?」

アルス「う、うん。あれ・・・?ここって」

エックス「うわ!ひょっとして俺たち、逆さまに立ってんのか!?」

ソロ「まあそうだ」

ロト「・・・・・・・・ここからどうするんだ?」

ソロ「とりあえず、全員が来るまで待とう」






━─━─第三十話 Confession






ナイン「・・・ありがとうございます。驚いた・・・・・・」

エックス「よし、これで全員だな。で?」

ソロ「ああ。・・まずは確認なんだが、誰か体全体もしくは一部が痛んだりはしないか?」

・・・・それぞれ、顔を見合わせる。

ロト「・・・いや」

エックス「得には」

アルス「さっき打ったところがまだ少し痛いだけかな・・・あはは」

エイト「気をつけてくださいね・・・。みんな平気みたいです」

ソロ「そうか。ならいい」

そう言う時、ソロは一瞬だけ、・・ほんの少し、眉をひそめた。

ロト「・・・どうかしたか?」

ソロ「いや・・・・。・・・・・・・・・・いいか。いずれ取り除かないといけない」

小声でそう呟くと、ソロは目を伏せた。

サマル「・・?」

ソロ「・・・・・・・・とても心苦しいんだが、ここを離れたらみんなには自分の体の中からあるものを取り出してもらわないといけない」

・・・あるもの?

ソロ「今俺たちがここに立っていられるのはそれのおかげなわけだが、当然異物を体の中に放置しておくわけにはいかないだろ?」

・・・・・・・・・まさか・・・

アベル「・・・・・磁力に反応するもの・・・それもかなり強く、というわけかい」

ソロ「その通りだ」

・・・・・・・・・・。

アレフ「・・・かなり信じ難くはありますが、この状況では納得せざるを得ませんね」

エックス「ん・・・・・つまりは、こうするために俺たちの体ん中にその・・・磁石に反応するものが埋め込んであるってことだよな。あれ?でもだったら」

ソロ「・・ああ。何人かが察してる通り、・・・みんなの体にそれを埋め込んだのは俺だ」

・・・・・・・・・・・・・・・やはりか。

エックス「え!?ど・・・どういうことだよ!」

アレン「なっ・・・いつそんなことができる時間があったと言うんだ」

ソロ「2つ目のステージ終了直後、全員が気絶していた時。ラリホーマを重ねがけして擬似的な麻酔状態にしてな。俺だけは自力で起き上がることができるんだ」

サマル「でもそれにはいろんな道具が必要だったでしょ?それに、その磁石に反応するものっていうのも・・・・いったいどこで」

ソロ「これさ」

ソロはハンドガンを取り出し、弾倉を取り外した。その中から出てきたのは当然ながら、銃の弾だ。大きさの割に重量感を持つそれは、黒く冷たく光っている。
ソロが手を離すと、それは自然に落ちる速さの数倍の速度で床に引き寄せられ、弾むことなくくっついた。

ソロ「武器はいらないと言った本人が銃を持っているのもおかしな話だろう?その時点で別の用途があると気付いた奴もいるだろうが――な」

弾を拾いながらソロがちら、と俺の方を見る。

ソロ「そんなわけで、あらかじめ伝えておこうと思ったんだ。・・まあ今までのステージをクリアできたみんなならそれほど辛くはないと思う」

エイト「・・・・あ・・・ありえない・・・あの短い時間で、・・眠っていた僕たち全員の体を切り裂いてそれを埋め込んで回ったって言うんですか・・・!?」

ソロ「・・・そうだ。生き残るためだからな」

エックス「でもよっ・・・そんな小さい弾じゃ、相当な数じゃねえと俺たちの体なんて支えられねえ」

ソロ「ああ、相当な数だ。でないとここにうまく着地できたとしても、弾が足りない部分は千切れて落ちていっちまうからな」

その光景と痛みを想像してしまい、ぞくりと悪寒が走った。

アベル「き・・・君一人でそんなことをやってのけたと言うのかい。・・いくら安全な近道をするためとは言えそれは・・・」

ソロ「フリーザールームはほかとは比べ物にならない。必ず数人は死者が出る・・・まともに正面から立ち向かえば取り返しのつかないことになるんだ。これが正解なんだ」

俺はその時なんだか、その言葉は俺たちではなく自分に言い聞かせているように感じた。

ソロ「・・・だからこっちを通ることに決めた。次は、この装置の中に入る。
そうすれば全てクリアだ」

エックス「本当か!?」

ソロ「ああ。この中にレックがいる。ただ少し問題なのは、トライアングルの中心が本来ならこんな短時間で終わるはずがないってことだな。今俺たちがいるこの空間と、中のレックがいる空間とで時間軸にずれが生じてるはずだ」

ロト「・・と言うと?」

ソロ「ここはゲームが始まってから5日目だ。だがこの中はゲームが始まってから7日目、つまり2日進んでいる。計算が正しければな」

エイト「何かまずいことがあるんですか?」