ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第32話
レック「・・・・・・・どういう・・・ことだよ・・・・・?」
ソロ「・・・・・・・・・・ゲーム開始時から既に死亡していた人物がいる。
俺たちは騙されていた・・・」
既に死んでる・・・・・・?
・・・・・・・まさか・・・・・・・・・
ソロ「・・・・・ロトは・・・・・この世界にはいなかった。最初から・・・。
ただ魂だけは俺たちと同じようにこの世界に拘束されてる。そして自分が死者であることを自覚していない」
・・・・・・最初から死んでいた・・・・・・!!??
レック「なっ・・・・おかしいだろ、そんなわけ・・・!!」
ソロ「俺も信じられない。全然気付かなかった。恐らく破壊神たちがロトの魂に何か細工をしたんだと思う」
レック「っ・・でも物には触れられるし、オレらが体に触れることだってできたのに」
ソロ「ああ。俺たちにも一種の催眠がかけられているんだ。本当には存在しないものがあるかのように見え、聞こえ、感じる。
よく思い出してみろ、ロトは今までに何度も物理的にありえないことをやってる」
・・・そういえば、オレたちとサマルが別の時間軸に飛ばされた時。
そこにいるはずがないのに、来れるはずがないのに、ロトはどこからともなく現れた。
でもそれだったらオレたちが突然飛ばされたのと同じ現象だと説明できるはず。
レック「っ・・・」
ソロ「それはありえない。あとから聞いたが俺たちが消えたあと・・・つまり別の時間軸に飛ばされたあと、みんなはブラッディローズという魔物と戦ったそうだ。そしてその時、ロトは死の直前まで追いやられた・・・いや、確実に一度死んだ」
・・・・・・・。
ソロ「しかしその直後ロトは忽然と姿を消した。そして俺たちのいる時間軸へ無傷の状態で現れた。生身の体が死んだ状態や瀕死の状態で時間軸の移動を行えば、負担に耐えられるだけのエネルギーが足りず身体は崩壊してしまうはず。どう考えてもありえない」
レック「で・・・・でも破壊神たちならできそうなもんじゃないか?体を保護して移動させることくらい」
ソロ「それもありえないんだ。俺はこのゲームの目的を理解している。あの場でロトを生かすことで生まれる意味はなかった・・・破壊神たちが彼を守るわけがないんだ。
だからといって魂の中にある記憶だけで俺たちの居場所を突き止めるのも不可能。
つまり破壊神たちの伺い知らぬところで、もっと別な大きな力が関わっていた」
レック「破壊神たちとは別な大きな力・・・!?」
ソロ「ああ。そして俺は、その存在の正体にも気付いた。
その力の正体は・・・・・」
レック「待て、待ってくれ。情報が整理できない・・・・・・」
どういうことだよ・・・・・?
まずロトはもう既に死んでいてこの世界にはいなくて、魂だけが拘束されていて・・・。
そのロトの魂が生前の姿として目に映るようオレたちには催眠がかけられていて。
そしてそれを保護する、破壊神たちとは違う大きな力を持った存在がいて。
保護・・・・・・ロトを、オレたちを・・・・・・・・助けて・・・・
・・・・・・・・・・・・!!
ソロ「・・・そうだ。その力の正体は、今までずっと俺たちを監視し続け、手助けをし、道を示してきたもの。
・・・・・あの注意書きの主だ」
━─━─第三十二話 Alter Ego
レック「待てよ、じゃあお前はあの注意書きをした奴の正体を知ってるのか!?」
ソロ「ああ。もちろんはじめから知っていたわけじゃない。この体になってから気付いた。
そしてそいつの目的も。なぜ俺たちを手助けするのかも」
・・・・・・・・・・・嘘だろ・・・・・・・・・・・・・・
レック「・・・・正直に言う。・・オレ・・・あれを書いたのはお前だと思ってた。
“犠牲者”としてオレたちに道を示すために」
ソロ「実を言うと俺もそうじゃないかと思ってたんだ。筆跡や言い回しが似ていたからな。俺の口癖まで入ってた。違う時間軸の俺が俺たちを助けようとしてるもんだと」
レック「で・・でもそうじゃないんだろ?そいつはソロとは全く違う関係ない奴で・・・だったらわざわざお前に似せる目的は何だ?」
ソロ「・・全く関係なくはない。ただ俺に似せてたのは、注意書きを書いたのが俺自身だと思わせ、ある段階に物語が進むまで注意書きの正体を俺に悟らせないためだ」
レック「・・・・・そいつの正体をオレに教えることは、できないのか・・?」
ソロ「・・残念だができない。俺以外が知ると物語が正規のルートを外れてしまう」
・・正規のルート・・・?何を言ってるんだ・・・!?
レック「何だよそれ・・それじゃこの先オレたちがどうなるのか何もかも全部、お前は知ってるってことなのか・・・?・・そういうことなのか・・・・?」
ソロ「・・・・・・・・俺はこのゲームの目的を知っている。
またこのゲームの結末も知っている。それまでに誰が何をし何がどう動くのかも全て知っている」
レック「な・・・・・・・ッ・・・!!」
・・・信じられない言葉だった。
・・・・・・・・・・何も言えず立ち尽くしていると、ソロは苦しげに視線を下げた。
ソロ「・・・・・・全て、今日夢の中で話す。レックだけには・・・伝えておく。
俺はもう人間じゃない。何もかも知ってしまった。
だから、勇者としてこのゲームに参加することはできない」
レック「・・・・・そんな・・・・・・・・」
ソロはオレの右手を両手で掴んで顔を上げ、オレの目を見た。
ソロ「覚えておいて欲しい。俺はもうこのゲームのプレイヤーの1人じゃない。
みんなをサポートして、最善の結果へ導くための道具だ」
――――――――――――――――
――――――――――――
8日目 ?????? ―レック―
・・・・・・・・白い空間。何度か見た景色だ。
ここは夢の中。何も隠すことのできない精神世界。
夢の主の心を映す鏡。
・・・今までここに来たときは青い雨が降っているか、ただただ白が続いているかのどちらかだった。
でも今は違う。
大小様々の焦げ目のような黒い染みが、いたるところに現れては消え、現れては消えを繰り返している。
時折その染みから真っ黒な、固まりかけた血のようなものがどろりと垂れてくる。
それはゆっくりと下に落ちていき、やがて・・・
足元に溜まっている、透明な水の中に沈んで消えた。
その透明な水はオレの膝上まで溜まっていて、ほんの少し温かい。
染みから垂れてきたその黒いものは水に触れた瞬間溶けて、くすんだ紫や青、灰色などが混じった一言では言い表せない色に変わり、やがて色を失う。
オレはソロを探して歩き出した。
・・・寒い。ここがこんなに寒いと思ったのは初めてだ。
足元の水の温度が上がったような気がする。
・・かなりの時間歩いた。
夢の中で主が現れるまでの時間は、意図的に夢に入り込んだ者を受け入れることに、主が躊躇する度合いと比例しているとオレは考えている。
やがて水を押し分ける足に疲れが出てきた頃。
・・・・・前の方に人影が見えた。
レック「・・・・・・・・・・・ソロ」
ソロ「・・・・・・・・・・ゲーム開始時から既に死亡していた人物がいる。
俺たちは騙されていた・・・」
既に死んでる・・・・・・?
・・・・・・・まさか・・・・・・・・・
ソロ「・・・・・ロトは・・・・・この世界にはいなかった。最初から・・・。
ただ魂だけは俺たちと同じようにこの世界に拘束されてる。そして自分が死者であることを自覚していない」
・・・・・・最初から死んでいた・・・・・・!!??
レック「なっ・・・・おかしいだろ、そんなわけ・・・!!」
ソロ「俺も信じられない。全然気付かなかった。恐らく破壊神たちがロトの魂に何か細工をしたんだと思う」
レック「っ・・でも物には触れられるし、オレらが体に触れることだってできたのに」
ソロ「ああ。俺たちにも一種の催眠がかけられているんだ。本当には存在しないものがあるかのように見え、聞こえ、感じる。
よく思い出してみろ、ロトは今までに何度も物理的にありえないことをやってる」
・・・そういえば、オレたちとサマルが別の時間軸に飛ばされた時。
そこにいるはずがないのに、来れるはずがないのに、ロトはどこからともなく現れた。
でもそれだったらオレたちが突然飛ばされたのと同じ現象だと説明できるはず。
レック「っ・・・」
ソロ「それはありえない。あとから聞いたが俺たちが消えたあと・・・つまり別の時間軸に飛ばされたあと、みんなはブラッディローズという魔物と戦ったそうだ。そしてその時、ロトは死の直前まで追いやられた・・・いや、確実に一度死んだ」
・・・・・・・。
ソロ「しかしその直後ロトは忽然と姿を消した。そして俺たちのいる時間軸へ無傷の状態で現れた。生身の体が死んだ状態や瀕死の状態で時間軸の移動を行えば、負担に耐えられるだけのエネルギーが足りず身体は崩壊してしまうはず。どう考えてもありえない」
レック「で・・・・でも破壊神たちならできそうなもんじゃないか?体を保護して移動させることくらい」
ソロ「それもありえないんだ。俺はこのゲームの目的を理解している。あの場でロトを生かすことで生まれる意味はなかった・・・破壊神たちが彼を守るわけがないんだ。
だからといって魂の中にある記憶だけで俺たちの居場所を突き止めるのも不可能。
つまり破壊神たちの伺い知らぬところで、もっと別な大きな力が関わっていた」
レック「破壊神たちとは別な大きな力・・・!?」
ソロ「ああ。そして俺は、その存在の正体にも気付いた。
その力の正体は・・・・・」
レック「待て、待ってくれ。情報が整理できない・・・・・・」
どういうことだよ・・・・・?
まずロトはもう既に死んでいてこの世界にはいなくて、魂だけが拘束されていて・・・。
そのロトの魂が生前の姿として目に映るようオレたちには催眠がかけられていて。
そしてそれを保護する、破壊神たちとは違う大きな力を持った存在がいて。
保護・・・・・・ロトを、オレたちを・・・・・・・・助けて・・・・
・・・・・・・・・・・・!!
ソロ「・・・そうだ。その力の正体は、今までずっと俺たちを監視し続け、手助けをし、道を示してきたもの。
・・・・・あの注意書きの主だ」
━─━─第三十二話 Alter Ego
レック「待てよ、じゃあお前はあの注意書きをした奴の正体を知ってるのか!?」
ソロ「ああ。もちろんはじめから知っていたわけじゃない。この体になってから気付いた。
そしてそいつの目的も。なぜ俺たちを手助けするのかも」
・・・・・・・・・・・嘘だろ・・・・・・・・・・・・・・
レック「・・・・正直に言う。・・オレ・・・あれを書いたのはお前だと思ってた。
“犠牲者”としてオレたちに道を示すために」
ソロ「実を言うと俺もそうじゃないかと思ってたんだ。筆跡や言い回しが似ていたからな。俺の口癖まで入ってた。違う時間軸の俺が俺たちを助けようとしてるもんだと」
レック「で・・でもそうじゃないんだろ?そいつはソロとは全く違う関係ない奴で・・・だったらわざわざお前に似せる目的は何だ?」
ソロ「・・全く関係なくはない。ただ俺に似せてたのは、注意書きを書いたのが俺自身だと思わせ、ある段階に物語が進むまで注意書きの正体を俺に悟らせないためだ」
レック「・・・・・そいつの正体をオレに教えることは、できないのか・・?」
ソロ「・・残念だができない。俺以外が知ると物語が正規のルートを外れてしまう」
・・正規のルート・・・?何を言ってるんだ・・・!?
レック「何だよそれ・・それじゃこの先オレたちがどうなるのか何もかも全部、お前は知ってるってことなのか・・・?・・そういうことなのか・・・・?」
ソロ「・・・・・・・・俺はこのゲームの目的を知っている。
またこのゲームの結末も知っている。それまでに誰が何をし何がどう動くのかも全て知っている」
レック「な・・・・・・・ッ・・・!!」
・・・信じられない言葉だった。
・・・・・・・・・・何も言えず立ち尽くしていると、ソロは苦しげに視線を下げた。
ソロ「・・・・・・全て、今日夢の中で話す。レックだけには・・・伝えておく。
俺はもう人間じゃない。何もかも知ってしまった。
だから、勇者としてこのゲームに参加することはできない」
レック「・・・・・そんな・・・・・・・・」
ソロはオレの右手を両手で掴んで顔を上げ、オレの目を見た。
ソロ「覚えておいて欲しい。俺はもうこのゲームのプレイヤーの1人じゃない。
みんなをサポートして、最善の結果へ導くための道具だ」
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8日目 ?????? ―レック―
・・・・・・・・白い空間。何度か見た景色だ。
ここは夢の中。何も隠すことのできない精神世界。
夢の主の心を映す鏡。
・・・今までここに来たときは青い雨が降っているか、ただただ白が続いているかのどちらかだった。
でも今は違う。
大小様々の焦げ目のような黒い染みが、いたるところに現れては消え、現れては消えを繰り返している。
時折その染みから真っ黒な、固まりかけた血のようなものがどろりと垂れてくる。
それはゆっくりと下に落ちていき、やがて・・・
足元に溜まっている、透明な水の中に沈んで消えた。
その透明な水はオレの膝上まで溜まっていて、ほんの少し温かい。
染みから垂れてきたその黒いものは水に触れた瞬間溶けて、くすんだ紫や青、灰色などが混じった一言では言い表せない色に変わり、やがて色を失う。
オレはソロを探して歩き出した。
・・・寒い。ここがこんなに寒いと思ったのは初めてだ。
足元の水の温度が上がったような気がする。
・・かなりの時間歩いた。
夢の中で主が現れるまでの時間は、意図的に夢に入り込んだ者を受け入れることに、主が躊躇する度合いと比例しているとオレは考えている。
やがて水を押し分ける足に疲れが出てきた頃。
・・・・・前の方に人影が見えた。
レック「・・・・・・・・・・・ソロ」