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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第33話

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レック「・・・・・・・・ん・・・・・・ぅ」

レックさんが小さく身をよじった。表情がさらに険しくなり、息遣いもどんどん苦しげになっていく。

レック「は・・・・っ・・・・・・・は・・・ぁ・・・・う・・・・・」

ソロ「・・・レック。目を覚ませ」

ソロさんがゆっくりとレックさんの頬に触れた。慈しむようにそっと撫で、悪夢から救い出そうと優しく声をかける。

ソロ「レック・・・・」

すると。
レックさんの腕が少し浮いて、ソロさんの袖を掴んだ。

そして、うっすらと目を開く。

レック「・・・・・・・・は・・・・っ・・・・ソ・・・・ロ・・・」

その目の端から、涙がこぼれた。
ソロさんがレックさんの上半身を抱き上げ、自分にもたれさせる。

サマル「・・・・・・・・」

・・・・・・・あれ?
これに似た光景を、前にも見た気がする。でもその時は・・・・

サマル(・・・・・・逆だった・・・・)

錯乱したソロさんをレックさんが抱きしめて、その涙を受け止めていた。
今は立場が全くの逆になっている・・・。

レック「・・・・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・
・・・・・・・こんなことに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ソロ「・・・大丈夫か?」

レック「・・・・・・・・・・・・・・・・」

レックさんはまだ朦朧としていて、ぐったりとソロさんに身を預けたまま何も言わなくなってしまった。

ただ虚ろに開いた瞳から涙がこぼれ、半開きの口から浅い呼吸の音が漏れる。

ソロさんは悲しそうにも悔しそうにも見える表情で、黙ってレックさんを抱きしめていた。

サマル「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

・・・・・ひどい状態だった。

レックさんはまるで別人のようだった。最初に会った時はとても明るくて元気そうで、笑顔の絶えない印象が強かったのに。

その人が・・・・・・光のない虚ろな目で、何も言わずただただ涙をこぼしながら、それしかすることがないかのように必死に呼吸を繰り返している。

ボクは今まで生きていて、こんなにも辛そうな様子の人を見たことはなかった。

ソロ「・・・きっとまた、俺がいなくなった夢を見たんだろう。
本当に申し訳ないことをした・・・」

・・・・・・え?

ソロ「・・・・・・こいつもな、サマル。お前と同じことを考えてたんだ。
俺が消えてなくなって、全く違う人物が俺に成り代わり・・・みんなを危険に晒そうとしていると」

サマル「・・・・・レックさんが・・・・・・・・」

ソロ「ああ。全く同じことを言ってた。
・・・そしていくら言い聞かせても、俺は消えてしまったのだと・・・死んでしまったのだと信じて疑わないんだ」

ソロさんは、声のトーンが落ちそうなのを我慢しているようだった。
・・・・ソロさん自身も傷ついているに違いない。自分の選択で、大事な仲間をこんなにも苦しめてしまった。それを後悔していることを・・・ボクに分かられたくないんだろうな。

ソロ「・・・どうしてだ?なんでこいつもお前も・・・同じこと言うんだ?
俺はそんなに間違ったことしたか?
ただ・・・誰も傷付けたくなかっただけなのに」

・・・・・・目を覚ましそうにないと判断したのか、少し落ち着いたレックさんを再びベッドに横たわらせた。
そうしながら声の調子を変えることなく、だけど心底悔しそうにソロさんは言った。
・・・ほんの少し、手が震えていた。

サマル「・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・ボク、無神経だった。
ソロさんが一番嫌なのは他人を傷付けてしまうことだって知ってたのに」

ソロ「・・別に謝らなくたっていい。俺が悪かったんだ・・・軽率だった。
レックがどれだけ俺のことを思ってくれているか知らなかった。
新しい力を手に入れて、それを過信した故の傲慢だった・・・・・・」

・・・・・・・ソロさんでも、こんな失敗をすることがあるんだ。
それを知ってどこか安心してしまったボクは、まだまだ駄目で卑屈な弱虫のままなんだろうか。
でも今の感情は、これまでとは違った。
なんだかソロさんの言葉が、そのままいつかボクが言うセリフになりそうな気さえしたんだ。

サマル「・・・・・・・・・話、聞かせてくれて・・・ありがとう・・・。
ボク・・・・・もっと、頑張るよ。ソロさんやレックさんや・・ロト様たちの助けになれるように。
足手まといにならないだけじゃなくて、役に立てるように。
生きてる意味が・・・わからなくならないように」

そう言って、ボクは席を立った。
頭を下げて、ドアノブに手をかける。

・・ソロさんの方を見て、

サマル「・・・・・だから、ソロさんも・・・・・頑張って・・・」


・・・・・・返事を待たずに、ボクは部屋を出た。





・・・・こんなボクでも、出来損ないの勇者でも、みんなの役に立てるかも知れない。

少しだけ、自信がついた。











━─━─第三十三話 As long as you like













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「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だよ、バレバレじゃねえか」

「・・・・・・・。・・・・あのチビ・・・・・油断できねえな・・・・・・・」

「・・・・わかる奴にはわかるんだな。なあ、レック」

「・・・・・・・・・何とか言えよな・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・ま、俺はマニュアル通りに動くだけだから頑張るも何もねえわな」

「・・・・・・・・・・なあおい、あんた本当にこれでよかったのかい。
一番大切な奴をこんなにしちまって。自分は永遠に無の世界を彷徨い続ける」

「そんなことしてまで、助かりもしない人間に情けをかけたいのかよ」

「・・・・・。無駄なことだって、本当はわかってんだろ。ただの自己満足だろ」

「色んな死を悲しんで向き合ってそれを背負いながらも、最後には望む結末を手に入れる。大切な仲間たちと一緒に」

「・・・それは、あんたにとって幸せなことなんじゃなかったのか」

「それを全部捨てて、ただただ脱落する者が生きていられる時間を少しでも伸ばしたいってだけで、自分が地獄行きになるって言うのか」

「・・・・結局は助からない運命なのに・・・・・」

「・・・・・・・・全く理解できない。理不尽だ。
何にもならない無駄なことのために、あんたは自分の全てを棒に振ったどころか・・・最悪の結末を選んだ」

「仲間の幸せがあんたにとっての幸せだって言うならまだ分かるが、これじゃ元も子もない。
誰も喜ばないだろ、こんなことしても。あんたの望むものは一つとして手に入らない」

「・・・・・・・・・・・・・理解できないな・・・・」

「・・・・・・そのうちわかることなのか・・・?」

「・・・・・・悲しいな。誰にも理解されない。自分にさえ。
でもそれがあんたの選んだ道だ」

「全く、わけがわからねえぜ。矛盾と理不尽が絡み合ってできてるな、あんたの思考は」