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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第37話

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レック「・・・決着・・・・・?」

サマル「ボクたちをこの世界に閉じ込めたのは“今の”ソロさんだよ。
“今までの”ソロさんとはもう違うんだよ。だからもう、忘れなきゃ」

・・忘れる?

レック「忘れるって、何を。・・・“今までの”ソロをか?
そんなことできるわけない!それにオレは約束したんだ、オレは絶対に」

サマル「違うよ。忘れるのはボク達じゃない。“今の”ソロさんだよ。
ボクもレックさんももう気付いた。そして世界の狭間に残された「感情」を消さないといけない。ボクらにしかできないんだよ」

レック「は・・・?どういう意味だよ、サマルお前・・・まさか自分で。
自分ひとりの力で・・あ、あいつの心理を理解したってのか!?」

そんな、まさか。オレには絶対にできないのに。
第一それで正気を保っていられるはずが・・・!!

レック「嘘だろ・・・なんで、どうやって・・・!」

サマル「・・・ボクは、近かったんだ。一番、ソロさんと同じ結論に辿り着きやすい性質だった。“今の”ソロさんがヒントをくれたんだけどね・・・。
だから大丈夫だよ。レックさんよりボクの方がよっぽどおかしいから」

そう言って微笑むと、サマルは向こうの壁に目をやった。

サマル「・・・ここはたぶん、“今までの”ソロさんが一番遠ざけておきたかった感情の中。少しでも表に出てきてしまえば即ゲームオーバーになる・・・「狂気」。
「恐怖」とか「欲望」とか色んなものが限界まで混ざって、飽和して最後に出来上がるもののはずなんだけど・・・」

・・・。・・でもここは・・・・

サマル「他の基礎的な負の感情より全然広くて大きい。むしろここが一番大きいよ・・・。
つまり“今までの”ソロさんの心で一番多くを占めていた感情だってことだね・・・」




━─━─第三十七話 Departure




レック「そんな・・・信じられない・・・・」

サマル「ボクもだよ。ここに来て初めて知った。全然そんなの感じなかったもんね・・・。ソロさん、本当に頑張って我慢してたんだね」

・・そんなはずない。抱えきれない悲しみや重責からくる錯乱は確かにあった。でもこんな・・・自分の内側ではなく外側に向けられた激しい負の感情など、面影すらなかった。
そんなもの、匂わせることすらしなかった。なのに・・・なぜ。

サマル「何も取り繕えない、剥き出しの感情の世界だから。理性で押し付けることも制御することもできない。人間の心がある以上どうしたって抗えはしない」

サマルは右手に持っていた本を開き、眼前に翳した。

ページがひとりでにめくれていく。

  かえ して  か え   して   かえ   し  て か  えし て  かえ せ   か  えせ か え せ  か   えせか え せ  かえ せかえ せ かえせかえせかえせかえせかえせかえせかえせ

同じ単語の羅列が目まぐるしいスピードで現れては消え、現れては消えを繰り返しどんどんページがめくれていく。

レック「っ・・・なんだこれ・・・」

サマル「たぶん、この感情の世界の核になっているものじゃないかな。
レックさんの力のおかげでボクはこれをこうして持っていられる。そうじゃなければもうとっくに飲み込まれてたと思うな・・・」

・・・最初にサマルの気配を感じた時のあれか・・・。
今でもオレが無意識のうちに、ソロの激しい負の感情を押さえつけて制御しているんだ。
・・・そうでなければ。
最も激しく危険な感情の中にいるオレたちが無事でいられるはずがないのだ。

そうか、だからオレの力が必要なのか・・・。
ソロの感情を制御できるオレと、ソロの感情を理解しているサマルが、“今の”あいつにはできないことをしなければならない。
・・・この感情の世界を消せば、今の時間軸には“今までの”ソロの形跡はなくなる。そうしなければいけない理由がどこかにあるのだ・・・きっと。

レック「・・・でも、どうしてだ?なんで“今の”ソロが、隔離された感情を消す必要がある?もう干渉できないんだから同じだろ?なんで・・・」

サマル「それは・・・ボクにもわからない。“今の”ソロさんが何を考えているのか、ボクには全然わからないから・・・」

・・話しているうちに、周りの景色が変わり始めた。

顔をくり抜かれた人形たちが奇妙な動きで徘徊を始め、壁や天井がみるみる劣化して変色していく。ひび割れた隙間からは血が流れ落ち、薄暗く青黒かった色彩は徐々に赤みを帯びていく。紫色になり、やがて辺り一面がどす黒い赤で彩られた。

壁や天井などそれら自体が赤いのではなく、雰囲気が。この景色全体が赤い光で照らされているような・・・。

そしてその壁、天井、床に至るまで、一面に殴り書きされた血文字が現れた。


 が我我疑ああああぁぁ赤赤赤血生頭目目目目なる目憎苦俄 ガガガがが
子 自 あ覚手手手手手手手えええええええ獲   偽ぁぁぁ
時疑十時じじじじじじじじじじじじ時疑じじじじ10 11 12 13 14 15 16 17 18 20
にしたか っ た愚愚愚愚愚愚愚愚あ が あああああ 戦線戦線見目
くろくろ黒黒黒黒黒黒空光光光光ひかりひかりきいりいいいいぁぁぁ
殺殺ころすころすこるこおおこ手めめめめめ殺せ殺せみげええええええええええええええんごめんなさいごめんなさいごめなゆるしてたすけてだしてだしてだしてくださこ我我我あろ本本本本し    て      し    ま       う
期ああありがとおありがとうございます殺す微疑疑疑わすレる 戻すス愚亜ぁ殺す来るくるくるくまわルまわ疑まわるまわるマワる


解読不能の支離滅裂な文章が途切れることなく続く。だがその中にはわずかながら、単語や文として意味の通るものもあった。

・・オレは意識を集中し、宥めるように呼びかけた。迫ってくる壁や天井を押し返すように。泣き喚く幼子の頭を撫でるように。

大量の顔のない人形たちが、一斉にこちらを向く。そしてオレの近くにいたものからヒビが入り、次々と壊れて床に崩れてゆく。

壊れなかったものは一斉に、両手を体の側面に沿って上げ、首を回し、・・踊るようにくるくると回り始めた。
するとそれらはみるみるうちに巨大化していき、オレとサマルを見下ろして踊りだす。

サマル「・・・・・・!」

サマルは持っている本に手を添え、白紙のページを指でなぞり始める。
するとそこには文章が現れ、追いかけるようにして現れる「かえせ」という文字を打ち消していく。

すると巨大化した人形たちの動きが徐々にぎこちなくなっていき、やがて手先に亀裂が走り、それは広がって・・・頭が割れ、人形たちは崩れ落ちた。

レック「・・・一体何が起きてるんだ・・・!?」

サマル「止まってた感情が動き出した・・ボクたちを取り込もうとしてる。飲み込まれないように自我を保たなきゃ・・・」

レック「・・とりあえずこいつらの攻撃を防ぐことに集中すりゃいいんだな。けどサマル、オレには防ぐことしかできないぞ」

サマル「うん、わかってる。・・・がんばってみるよ・・・・」

オレは深呼吸をし、悲しい激情を押さえ込むことに集中した。