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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第37話

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まず狂気を真っ向から否定し、穏やかで優しい感情を出来うる限り強烈に思い描く。
するとオレとサマルを取り囲み守るように、青い光を放つ半球状の結界のようなものが現れた。なるほど、見えやすくっていいな。

レック「オレがこれを支えてられる間は安全だ。・・なんとか頼むぜ」

サマル「・・・うん・・・!」

今度は壁や天井を突き破り、巨大な腕が数本現れた。傷だらけで血を滴らせながら奇妙な動きで結界を剥ぎ取ろうとしてくる。
指先から手首のあたりまでを赤い光が包み、引き寄せるように力を加えられる。

レック「ぐっ・・・!」

何もかもを投げ出して喉が枯れるまで叫びたくなるような異様な衝動に駆られたが、両足に力を込めて重心を落とし、冷静にそれを否定する。

やがてオレの心が落ち着いてくると、結界を剥ぎ取ることは諦めたのか、ひとつの腕が円状の赤い光を生み出してこちらに投げつけた。
するとサマルが、あらかじめ指でなぞり出現させておいたと思われる文章を声に出して読み始めた。

歌を歌うように高らかに、また嗜めるように優しく、それでいて叱るように強く。
するとその声が青い円状の光を生み出し、向かってくる赤い光にぶつかって相殺した。

だが安心はできない。他の腕たちも同じように赤い光を生み出し、次々と襲いかかってくる。
サマルは声をより大きくし、より感情を込めて歌い上げるように高らかに宣言する。
出現した青い光の輪が回転しながら大きくなり、分散して全ての赤い光を打ち消した。

レック「やるじゃねえか!・・ん?」

サマルの持つ本が突然、強烈な青い光を放って宙に浮いた。
そしてその光が消えると、表紙の色が変わった。

暗い緑色で黒ずんでいたのが、一度眩しい純白に包まれる。そして目を見張るほど鮮やかな蒼翠に・・・。

サマル「・・・やった!」

サマルが本を頭上に掲げる。
本から迸る青い光が徐々に大きく膨らんで変形し、やがてヒトのような形になった。
これは・・・・・・まさか。

そしてオレたちの頭上に舞い上がると、両手を広げて、一度畳み込むように体を丸める。
そして両手両足を一気に広げ、“理性”を放出する。

光から放たれるそれの凄まじいまでの正しさに、「狂気」は押さえ込まれ、立っていられないほどの揺れを生み出した。
青い光の環が目にも止まらぬ速さで閃き、赤い光もろとも傷だらけの腕たちを一斉に打ち砕く。

サマル「・・・・・すごい・・・・・」

レック「さすがだな・・・オレらには伝わってこないわけだぜ」

これほどまでの意思の固さがあったのだ。感じられなくて当然だ。
・・・・やっぱりお前はすげーよ。

やがて腕が砕け散った人形たちの残骸とともに完全に消え去ると、光は少しずつ薄れ、消えていった。

サマル「・・・・・・・・やった、のかな」

暗く赤く、心がざわつくような雰囲気は消えて、屋敷の玄関ホールの光景もバラバラと剥がれ落ち消滅した。

レック「ああ、やったんだよ。・・・お前はやっぱり理解してるんだな。狂気の間を縫って理性を召喚するなんて。あいつの思考の傾向を完璧にわかってないとそんなことできない」

サマル「・・・・・うん・・・でもぎりぎりだったよ・・・」

・・・無音。静かな空間。真っ白だ。・・何もない。
ここは・・・・・ソロの夢の中の世界に似てる。
一体・・・・・?

サマル「・・・・レックさん」

レック「ん?」

サマル「・・まだ、終わりじゃない・・・見て」

白い空間の、遥か下方。サマルの指し示す方向には。

レック「・・・・・・・!」

・・どこからか水の中で金属を打ったような澄んだ音が聞こえる。
青い・・・でも理性の力強い光ではなく、もっと弱々しい・・・儚げな蒼だ。
そんな色をした正四面体のような巨大な物体が、静かにゆっくりと回っている。

意識を下に向けると、身体がまるで水の中を沈んでいくように降下を始めた。
サマルも後に続いて降りてくる。

・・・それはとてつもなく大きかった。切なげな青い光を放ちながら、どこか歌うように。
オレたちがすぐ近くまで来ると、それはぱっくりと開いて平らになり、丸い魔法陣のようなものに変わった。

レック「・・サマル、ここって・・・」

サマル「・・うん。ここは・・・・「悲愴」だね。間違いない・・・」

・・・悲愴。・・悲しみ。後悔。痛ましさ。底の見えない、絶望。
それらが混ざり合った、ただの悲しみではない複雑な・・・。

そうか。これが・・・ソロの感情の核だ。
溢れそうなまでの「狂気」を包み込み、全ての底にあった元素。
それを証明するのは、この悲愴の世界が今までの他の感情のように、現実の世界に存在するものを模していないこと。地下牢でも屋敷でもない。
何かに例えられるものではないという事実。

・・青い魔法陣のような円が光り、二重になってそれぞれ反対方向にゆっくりと回り出す。
その中央から同じ色をした腕が二本、柔らかな動作で伸びてくる。

サマル「・・・いいのかな。これを消してしまったら・・本当に・・・」

レック「・・・・。・・・・そうしないと、いけないんだ。きっと」

よく見ると腕は普通の腕ではなかった。手首に見える、丸い球体関節。
・・これは人形の腕だ。なぜ・・・・・

だが、腕から肘、そして次に頭が姿を現すと、オレはその理由を理解することになる。

青い光で形成されたそれは、ぼろぼろとまるで零れ落ちる涙のように壊れつつ、しかし溢れ出る悲しみは絶えることなくせり上がり、それを形作っていく。

空洞になっている目と口。しかしその表情は悲哀に満ちており、両手は救いを求めるように頭上に掲げられている。

腰の関節部分が見えるか見えないかのところで、「悲しみ」の動きは止まった。

レック「・・・・ソロ」

表面は絶えず波打ち、零れ落ちながら流動している。
止まらない悲愴。打ち切れない連鎖。枯れることのない涙。

サマル「・・・レックさん、あんまり考えない方がいいよ・・・取り込まれちゃうよ・・・」

胸が痛い。痛みはじわじわと広がり、やがて何かが刺さったように鋭く強烈な痛みが全身を支配した。

レック「・・・・!・・・は・・っ」

苦しい。駄目だ、思考を悲しみから離さないと・・・!

顔を上げる。
すると静止していた「悲しみ」が動き出した。背中を反らし両手を広げて頭を大きく回したかと思うと、オレとサマルの足元に青い魔法陣のような円状の光が現れた。

レック「・・・!」

サマル「危ない・・・!!」

ものすごい力で吸い込まれそうになったところを、サマルのおかげで助けられた。
・・・「悲愴」も、オレたちを飲み込もうとしているのだ。
はっきりそう実感したオレは、唇を噛み締めて意識をソロから離した。

「悲しみ」はゆっくりと両手を前方に翳し、小さな円を描くように動かす。その度にいたるところに青い魔法陣が現れる。

飲み込まれないよう常に場所を変えながら、オレたちは思案を練っていた。

レック「一体どうすりゃいいんだ?方法が見つからない・・・悲愴をそれ以外の感情で押さえ込もうとしたってそんなこと無理だ!どうすれば止められる・・・!?」