ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第38話
・・・レックさん。ついさっきまで、一人きりで泣いていた。みんなを殺して、誰もいない無音の世界で、罪の重さと喪失の絶望に泣き叫んでいた。・・もう目が覚めているだろうか。
・・・・胸が痛い。どうしてボクがこんな夢を・・・・・・?
その時、静かにドアの開く音がした。・・・涙を拭いて顔を上げると。
サマル「・・アレン・・・アレン・・・!!・・うぅ・・・うわぁぁあぁ」
アレン「ん?ど・・どうしたんだよ。・・もう大丈夫なのか・・?」
ボクは夢中でアレンに抱きついた。・・せっかく拭いたのに、また涙が出てくる。ぼろぼろ、ぼろぼろ。・・・怖かった。悲しかった。苦しかった。目をそらしたかった。
アレン「・・・嫌な夢見たんだな?すげえうなされてた。もう大丈夫だ」
もう3回も、アレンが死ぬところを見た。辛くないはずなかった。でもいてくれる、アレンはここにいてくれる・・・そう思うと、涙が止まらなかった。
サマル「・・・・アレン・・・ボク、ぅっ・・・ううぅうぅぅう・・・・ッ!」
アレン「・・・・大丈夫。・・俺はずっとお前のそばにいるから」
優しく頭を撫でられる。・・しばらく泣き止むことができなくて、ボクはずっとアレンの胸に顔をうずめたままだった。
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―・・・~♪~~♫♪・・~♬~・・・
―・・おっ。いたいた、ソロー
―・・・・。・・他人様引っ張り出しといて遅れんじゃねえよ
―なんとか説得してきたよ。あそうそう、今歌ってた歌知ってる。ロベルタの記憶の中にあったものだね。ホントよく出来てるよねえ君
―・・・。早く戻りたいんだ、用件言ってくれ
―あーうん。君、サマルって子に何かしたかい?
―・・何かって何だよ
―例えば別の平行世界の記録に干渉できるようにしたとか。主に14から15ラインのを、トート経由で
―何もしてない。そんな意味のないことするほど暇じゃないんでな
―ふうん、だとしたらあの子が自力でやったってことだよね。うーん
―・・・他に何か問題あるか
―いいや。・・違う部分で問題発生だ。あのサマルって子、君のベースを読み取りつつあるよ。つまりソロが生まれた本当の理由をいつか知られることになる
―別に構わないだろ。それで消えるなら俺もソロもそれまでだ
―いやいや、こっちが困るんだよ!もう面倒な仕事押し付けられるのゴメンだから!最悪もう全員に平行世界のことだけでも知らせちゃってよ
―トート本人に頼めばいいだろ。俺はあらかじめ決まってることしかできない。そういう概念だからな。・・もう戻るぞ
―ええー、もう・・・。なんか君、突然冷たくなったねえ。何か嫌なことでもあった?
―嫌なことって何だよ。何をどう嫌がればいいってんだ・・・サマルが何を知ろうと俺のできることは変わらない。・・・規律違反の手出しはもうするなよ。即行でエノシアにチクるからな
―うわ、やめて。彼の説教はもう沢山だ。・・まあいっか、こっちで何とかしよう・・あーあ、使えないなあ~まったく・・・
―悪かったな
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9日目 18時15分 ―レック―
ソロ「・・なあ」
レック「うお、びっ・・・くりした。いきなり現れんなって・・・」
部屋を出ようとした瞬間、背後から声が聞こえた。いつでもどこでも消えたり出てきたりするからいちいちビビる。
レック「・・何だ?」
ソロ「・・・・・・・・・」
オレが顔を見た途端、なぜか下を向いて口をつぐんでしまった。
珍しく黙り込む姿に一瞬、あいつの面影が重なりかけたが、やはりすぐに霧散してしまった。・・・少し悔しい。もっと無意識に見ていればよかったのだろうか。
レック「・・・何だよ?何か言えよ、こえーよ」
ソロ「・・・・わから、ない」
レック「・・・。・・何がだ?」
計算ずくで設計された瞳を遠慮がちに揺らがせ、オレの目を見た。
・・何度目でもどきっとする。体が冷たくなるというか・・・。
ソロ「考えれば考えるほど、ソロが俺に何をさせようとしてるのかわからないんだ。答えを出そうとしても式が途中で矛盾してしまって・・何度やっても」
レック「・・それをさせるためにソロはお前を造ったんだろ。きっと後々わかってくるんだと思うぜ」
ソロ「そうだろうか。・・・夢を、見なかったか」
レック「ん?」
ソロ「今さっきだ。・・お前が、俺と戦って殺す夢・・いや、ソロを。
最後は死ぬ寸前のソロと2人で、仲良く話してる・・・笑いながら」
レック「・・・は?・・・何言ってるんだ?」
・・・オレがソロを?わけがわからない。何の話だ?