ドラクエ：disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第４０話
―ねえ、エノシア
―何ですか？
―本当によかったのかい？また評議会の連中がうるさく言ってくるんじゃないの
―構いませんよ。この儀式の責任者はあくまでも私ですから。それにね
―・・ん？
―私も興味があるんですよ、彼の性質と進化には。何より私も・・退屈していましたから。きっと面白くしてくれるでしょう
―ふうん。・・・説教なしで普通にしゃべるの、久しぶりな気がする
―いい加減、貴方の素行の悪さには愛想が尽きましたし。もう諦めました
―ひどいなあ。仕事はちゃんとやってるじゃないか
―指示されたことだけこなしていればいいというわけではありませんよ。たまには私を驚かせるようなことをしてのけて下さい。もちろんいい意味でね
―そんなこと言われても。あーあ、昔はよかったよなあ・・・めんどくさい規制も制約もなくて好き放題してられたのに
―だからまずその考えを捨てなさいとあれほど。・・いえ、やめておきましょう。それが貴方の性質ですからね。・・・私はね、貴方にまで退屈したくはないのですよ。何もかも思い通りになってしまえば、これほどつまらないことはありません
―・・よく言うよ、僕が指示通りに動かないと滅茶苦茶するくせにさあ
―勿論それも含めてですよ。まあせめてもう少しだけでも真面目にやってくれれば、私の席を譲ってもいいんですけどねえ。実力だけなら十分あることですし。実力だけなら
―２回言わないでよ。いいんだよ、僕そういう責任とかが伴ってくる立場にはなりたくないから
―それは結構。ま、好きにやってて下さいな。では・・・私はもう少し責任者としての仕事があるのでね
―はいはい、いってらっしゃーい。ふわぁ・・・・
―・・・のんきに欠伸なんかしてんじゃないわよ、ちょっと！
―うわ！なんだキミか・・・どうしたのさ
―まあっ、どうしたのじゃないわよ！なに無断で私の脚本持ってってんのよっ
―あーごめん。だってキミ全然聞く耳持たないんだもの。言ったじゃん、最後のは予定通りキミに任せるからさあ
―いきなり話が違うじゃないのよ。一体どういうつもりよ、仕事ほっぽり出してこんなところでサボりくさって。ていうか・・・何かあったわけ？
―え？何が？
―あんたがマトモじゃないことは知ってるわ。でもさすがにこれはおかしいわよ、こんなにいきなり物語の筋道を変えるなんて。しかも持ち主に無断で！今回ばっかりは黙ってられないわッ
―ごーめんごめんごめん、ついうっかり手が滑ってえー
―なわけないでしょー！！ったく、エノシアはどこ行ったのよ！
―彼ならちょうど今出かけたところだよ。たぶん評議会だろうね
―何ですって！？あーもうっ
―まあまあいいじゃないか、今度はちゃんとやるからさー
―もうそのセリフ聞き飽きたわよ！
――――――――――
―――――
━─━─第四十話 Premonition of the end
セキュリティシステム作動： セーフティコードを入力
001-■■■■ 545-■■■■■
The Riemann hypothesis class
ライセンス選定： 要求レベルとライセンスコードを入力
One-The nail downer ■■■■Level 5
ライセンス取得。承認しました。
ごきげんよう、アレッサンドラ・ベルティーニ博士。
―――西暦２２■１年 ■■/■ 以下、音声会話記録です。
アクセスレベル４ データロック済み
V.E.スワードソン博士： おはよう、ワン。気分はどうかな
object no.001： おはようございます、ミスター。優れています
博士： さっそくだがこれを見てもらいたい。何に見える？
001： ・・・円と正三角形です、ミスター
博士： そうか。ではこのふたつのどちらかひとつを選ぶとしたら、君はどちらを選ぶのかな？
001： ・・・・・左の円です
博士： なるほど。理由を聞かせてもらえるかな
001： ・・・・・・。・・・断言はできないのですが、明確な理由と言えるべきものはありません。しかしどこか漠然とした「柔らかさ」をそれから感じるからです。そちらの方が私を安心させます
博士： そうか、ありがとう。
―――西暦２２■１年 ■■/■ 以下、音声会話記録です。
アクセスレベル４ データロック済み
K・カズモト医師： なぜwalker達を処分するのが怖いんだい？少しでもいいから自分でわかることを話してくれないかな
object no.001： ・・わか・・・・り・・ません。ただ、こわいのです。こわくて、・・・彼らも同じ、いきもの・・・なのに・・・（一部、音声不明瞭）・・がずっと、頭に・・頭にのこっていて・・・・それで・・・・
医師： そうか、それは怖い思いをしたね・・・。そう、深呼吸して。大丈夫だよ。理屈はわからないけど、本能的な恐怖を感じるということだよね？・・・じゃあ・・・この写真を見ても同じように怖いと思うかい？
001： ・・嫌、ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい嫌ですいや、いや（一部、音声不明瞭）
医師： 落ち着いて。これは君がやったんじゃない、事故で死んだものだ。よく見てごらん
001： いやだあああああああああ（一部、音声不明瞭）
西暦２２■３年
レベル５オブジェクト ナンバー：００１番に関する概要、記録
アレッサンドラ・ベルティーニ
001―非常に難解かつ危険度の高い生物エヴィギラヴィット（ネイルダウナーとも呼ばれます）のうち、最初に生成された“アダム”です。
遺伝子操作ではなく、２２■１年“ラファエル”にて採取されたエヴィギラヴィットの原初体の細胞を自己再生させて創られました。
若い青年の姿をしていて、光の投射角度によって様々な色に見える頭髪と瞳（髪は濃いカシミアグリーン、瞳はアメジストブルーに見えることが多いです）、透けるような独特な質感を持つ皮膚を有します。
“術式処置”を施してありますので、食事や排泄の必要はなく、生命維持に必要な熱量の補給などは全て点滴で行われます。またその特性から頭髪や爪などの長さや形状が変化することはありません。
そして最も難点とすべきなのは、いかなる成分の薬品であってもある一定の量（大抵は通常の一度の投薬分量より少ないですが）を超えて投与すると、まったく効果が表れなくなることです。そのため“術式処置”の際は開始１６分で麻酔の効果が切れてしまい、やむなく強制的に昏睡させるもやはりすぐに目が覚め、結果的にはとても気の毒なことに、意識も痛覚もはっきりしたまま物理的に身動きのみを封じた状態で手術が行われました。
―何ですか？
―本当によかったのかい？また評議会の連中がうるさく言ってくるんじゃないの
―構いませんよ。この儀式の責任者はあくまでも私ですから。それにね
―・・ん？
―私も興味があるんですよ、彼の性質と進化には。何より私も・・退屈していましたから。きっと面白くしてくれるでしょう
―ふうん。・・・説教なしで普通にしゃべるの、久しぶりな気がする
―いい加減、貴方の素行の悪さには愛想が尽きましたし。もう諦めました
―ひどいなあ。仕事はちゃんとやってるじゃないか
―指示されたことだけこなしていればいいというわけではありませんよ。たまには私を驚かせるようなことをしてのけて下さい。もちろんいい意味でね
―そんなこと言われても。あーあ、昔はよかったよなあ・・・めんどくさい規制も制約もなくて好き放題してられたのに
―だからまずその考えを捨てなさいとあれほど。・・いえ、やめておきましょう。それが貴方の性質ですからね。・・・私はね、貴方にまで退屈したくはないのですよ。何もかも思い通りになってしまえば、これほどつまらないことはありません
―・・よく言うよ、僕が指示通りに動かないと滅茶苦茶するくせにさあ
―勿論それも含めてですよ。まあせめてもう少しだけでも真面目にやってくれれば、私の席を譲ってもいいんですけどねえ。実力だけなら十分あることですし。実力だけなら
―２回言わないでよ。いいんだよ、僕そういう責任とかが伴ってくる立場にはなりたくないから
―それは結構。ま、好きにやってて下さいな。では・・・私はもう少し責任者としての仕事があるのでね
―はいはい、いってらっしゃーい。ふわぁ・・・・
―・・・のんきに欠伸なんかしてんじゃないわよ、ちょっと！
―うわ！なんだキミか・・・どうしたのさ
―まあっ、どうしたのじゃないわよ！なに無断で私の脚本持ってってんのよっ
―あーごめん。だってキミ全然聞く耳持たないんだもの。言ったじゃん、最後のは予定通りキミに任せるからさあ
―いきなり話が違うじゃないのよ。一体どういうつもりよ、仕事ほっぽり出してこんなところでサボりくさって。ていうか・・・何かあったわけ？
―え？何が？
―あんたがマトモじゃないことは知ってるわ。でもさすがにこれはおかしいわよ、こんなにいきなり物語の筋道を変えるなんて。しかも持ち主に無断で！今回ばっかりは黙ってられないわッ
―ごーめんごめんごめん、ついうっかり手が滑ってえー
―なわけないでしょー！！ったく、エノシアはどこ行ったのよ！
―彼ならちょうど今出かけたところだよ。たぶん評議会だろうね
―何ですって！？あーもうっ
―まあまあいいじゃないか、今度はちゃんとやるからさー
―もうそのセリフ聞き飽きたわよ！
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ごきげんよう、アレッサンドラ・ベルティーニ博士。
―――西暦２２■１年 ■■/■ 以下、音声会話記録です。
アクセスレベル４ データロック済み
V.E.スワードソン博士： おはよう、ワン。気分はどうかな
object no.001： おはようございます、ミスター。優れています
博士： さっそくだがこれを見てもらいたい。何に見える？
001： ・・・円と正三角形です、ミスター
博士： そうか。ではこのふたつのどちらかひとつを選ぶとしたら、君はどちらを選ぶのかな？
001： ・・・・・左の円です
博士： なるほど。理由を聞かせてもらえるかな
001： ・・・・・・。・・・断言はできないのですが、明確な理由と言えるべきものはありません。しかしどこか漠然とした「柔らかさ」をそれから感じるからです。そちらの方が私を安心させます
博士： そうか、ありがとう。
―――西暦２２■１年 ■■/■ 以下、音声会話記録です。
アクセスレベル４ データロック済み
K・カズモト医師： なぜwalker達を処分するのが怖いんだい？少しでもいいから自分でわかることを話してくれないかな
object no.001： ・・わか・・・・り・・ません。ただ、こわいのです。こわくて、・・・彼らも同じ、いきもの・・・なのに・・・（一部、音声不明瞭）・・がずっと、頭に・・頭にのこっていて・・・・それで・・・・
医師： そうか、それは怖い思いをしたね・・・。そう、深呼吸して。大丈夫だよ。理屈はわからないけど、本能的な恐怖を感じるということだよね？・・・じゃあ・・・この写真を見ても同じように怖いと思うかい？
001： ・・嫌、ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい嫌ですいや、いや（一部、音声不明瞭）
医師： 落ち着いて。これは君がやったんじゃない、事故で死んだものだ。よく見てごらん
001： いやだあああああああああ（一部、音声不明瞭）
西暦２２■３年
レベル５オブジェクト ナンバー：００１番に関する概要、記録
アレッサンドラ・ベルティーニ
001―非常に難解かつ危険度の高い生物エヴィギラヴィット（ネイルダウナーとも呼ばれます）のうち、最初に生成された“アダム”です。
遺伝子操作ではなく、２２■１年“ラファエル”にて採取されたエヴィギラヴィットの原初体の細胞を自己再生させて創られました。
若い青年の姿をしていて、光の投射角度によって様々な色に見える頭髪と瞳（髪は濃いカシミアグリーン、瞳はアメジストブルーに見えることが多いです）、透けるような独特な質感を持つ皮膚を有します。
“術式処置”を施してありますので、食事や排泄の必要はなく、生命維持に必要な熱量の補給などは全て点滴で行われます。またその特性から頭髪や爪などの長さや形状が変化することはありません。
そして最も難点とすべきなのは、いかなる成分の薬品であってもある一定の量（大抵は通常の一度の投薬分量より少ないですが）を超えて投与すると、まったく効果が表れなくなることです。そのため“術式処置”の際は開始１６分で麻酔の効果が切れてしまい、やむなく強制的に昏睡させるもやはりすぐに目が覚め、結果的にはとても気の毒なことに、意識も痛覚もはっきりしたまま物理的に身動きのみを封じた状態で手術が行われました。