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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録001

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2■24 ■■/■■
 未完成オブジェクト(Expected)
レベル4 “Sphere Packing”class  「Molecule Changer」についての概要


“ラファエル”にて観測されたが、採取には至っていない。

というのも、彼らはどうやら壷型宇宙における「人間」に該当する生物であるようで、我々と同様個体によって能力や性質に大きく偏差が生じている。そのため説明は極めて困難であり、現段階ではデータサンプルの取得は難しいと言える。

中には亜種の存在も確認されており、皮膚の色や身体構造の違いがあり、使用する言語も種族ごとに分かれている(時代によっては統一されていることもある)。
レベル5オブジェクト「Nail Downer」通称Re.ar(エヴィギラヴィット)や、レベル4オブジェクト「Continuer」通称MA.d(ミクスタクム・ディーレ)などもこれの派生に当たる。

共通の特性は、色に関わらず皮膚がどこか透き通るような、色のついた水に半透明のゴムを被せたような色感を持ち、瞳の瞳孔の大きさが極端に変わること、そして頭髪や瞳の色が光の投射角度により変わること(またそれはこの宇宙に存在しない色素を持っていることもあり、時にはありえない色彩が現れることもある)。

また物理法則の差異から、我々からすればさながら映画やコミックのような、常識を逸脱した身体能力を持っているとされる。

決定的なのは、個体によっては存在する分子を自在に操ることができるという点だ。

分子どうしの組み合わせを変え、空気中の物質を急激に酸化させ炎を作り出す、水分を氷塊に変える、気圧を一箇所に特化して変化させ風を起こす、さらには意図的に化学変化を起こす分子どうしを組み合わせて爆発を引き起こすこともあるという。

だがいわゆる“物”を無から構築することはできないようで、操作は非物質を構成することがほとんどだ。
つまるところ物というより、現象を引き起こすと表現した方が妥当かも知れない。

確認された中では、メカニズムは依然として不明だが何らかの方法で重力を操り、物体の重量や運動ベクトルを変化させることも可能なようで、それを応用し空中を飛行する、物体の耐久力を上昇させる、運動速度を操作することも可能だと予測されている。


“たまげたもんだ。その宇宙じゃこんな滅茶苦茶なミュータントみたいなのが普通の人間やってるってのか。笑えねえジョークだ”―ミカエル・べクスター博士

“これこそ色んなものに応用できそうだけどなあ。ハイリスクハイリターンの教科書みたいなものじゃないか”―ヴィンセント・スワードソン博士


また興味深いのは、彼らは一貫してこの特性を“魔法”と呼び、精霊や神の力を借りてその魔力を消費するのだとしていることだ。
そのためこの能力を発現させるには“呪文”の詠唱が必要であり、発声が不可能であったり何らかの理由で詠唱ができない場合は“魔法”が使えないと信じられている。

しかし部分的に、“魔術を極めた熟練の賢者”なるものであれば、詠唱なしでも“魔法”を使うことができるとされている。


“ちょうどクソッタレ宗教の胡散臭いことこの上ない聖典の世界観に似てやがるな”―ランドルフ・クロウ博士

“こりゃ面白い。彼らは何千年間もそのクソッタレな世界観の中で生きてきたんだよ、科学とかいうややこしい危険物には手をつけずにね。いや、そもそも彼らの世界にはそんなもの存在しないのかも”―ヴィンセント・スワードソン博士


また“ラファエル”の報告によれば、彼らの使用する言語は全く未知のものでありながら、どこか我々の使用するイングリッシュのニュアンスを含んだ単語もちらほら存在しているのだという。
この事実は我々より前に、我々の宇宙から彼らの宇宙への干渉があったことを意味している。

そしてその言語は極めて発音が困難な細かい音の羅列で構成されており、我々には発音は不可能とされている。
録音された音声を耳にした研究員によれば、「ドイツ語とラテン語と日本語を同時に喋ってそれを逆再生しているようだった」とのこと。

規則性や法則を読み取り言語として分析するのは、ノーメマイヤーをも唸らせるほど困難を極め、解析は断念せざるを得なかった。


“これは凄いな、一体全体どこからこんな音を出してるんだ。確かに何か喋ってはいるんだろうが・・・おい、こいつらの喉と口の構造をもっとしっかり調べるべきだぜ”―ミカエル・べクスター博士

“少なくとも我々には発音できないだろうな。なあそこのお前、今俺が言った言葉の音を全部逆さまにして言ってみろよ”―ランドルフ・クロウ博士


現在、研究の継続が困難になったため、このオブジェクトについての探索は行われていない。






━─━─記録001 背徳の超文明






・・・・・雪。それと夜空。
認識できたのはそれだけだ。

白と、黒。それだけだった。なぜならそれ以外の一切は、記憶にも知識にも存在しないものばかりだったからだ。

そう、白と・・黒。それ以外の色はもはや、支離滅裂に混じり合い原型を留めておらず、色を識別することができない。

体を締め付けるような寒さ。痛みに近いそれは、吐き出す息をことごとく白い霧へと変える。
空気に混じる細かな振動、低い音、化学薬品を思わせる匂い。

そして夜とは思えない目が眩みそうな程の、眩い光たち。
夜空を埋め尽くすように立ち並ぶ巨大な建造物たちが放つ、不自然な光たち。

・・・これは一体何なのだろう?

あまりに馴染みがなく見覚えのない景色だった。


「・・・・・・・・ここが・・・・・第二ステージなのか」

「そうみたい・・・・・だね・・・・・・」

高層ビルの屋上に、いくつか人影があった。

白い雪は、彼らが踏みしめる灰色の硬い床に舞い降りると、たちまち溶けて消える。そして水に変わる過程を飛ばし、気体へと昇華する。

その不思議な現象を眺めつつ、彼らの足は自然と屋上の端へと移動していた。

・・・・・高い。眼下に霞む地面。芥子粒のような・・・人?あれは人なのだろうか。

どこもかしこも光り輝いて、煌めいて・・目がおかしくなりそうなほどの光の群れに、彼らは圧倒されていた。

不自然極まりない、白と黒のコントラスト。

彼らの生きた世界とはあまりに違う、あまりに対照的なその景色は、この世界の事情・歴史の一切を未だ知り得ない彼らに悟らせた。

この世界は、歪んでいる。

あるべき形ではなく、人が手を加えて良い限度を超えた何かによって構成されている。
神の掟に背いた世界・・・・・・。

「・・・・前の世界とは別の意味で、ひでえ空気だな」

「ああ。この雪もどうやら自然に降っているものじゃあなさそうだよ」

「・・・またとんでもないところに飛ばされたものですね・・・」

勇者たちは歪んだ世界を見下ろし、自分たちに与えられた使命を反芻した。

この世界を、破滅の運命から救い出す。

それが神々のゲームにおける第二ステージの勝利条件。
失くした命に報いる手段。

そして。

「・・・・おい、あいつはどこに行ったんだ?」