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僕らズイ探検隊

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僕らの住む町のはずれには不思議な遺跡がある。
奇妙な文字が書かれた石盤。いったい何のためにあるのかわからない。
ただその遺跡はそこに存在しているだけ。
ただ存在しているだけなんだ。

「隊長、ほんとに行くんですか?」
気弱そうにズイ探検隊隊員ミヨがたずねた。
「いくに決まってますよね。隊長。
神秘のベールに包まれた遺跡が俺たちの手で明かされる!
こんなことなかなか出来ることじゃないっすよ。」
「そんなこと言わないでください、副隊長。何かあったらどうするんです?」
僕は決断に迫られた。ミヨの言うとおりもし遺跡で何かあれば僕らに身を守る術はない。
(なんせ僕らはまだモンスターボールを持つことは許されてないのだから。)
しかし副隊長、ダイの言うとおりこれはあまりにも魅力的過ぎる。
(いつも子供扱いする大人たちの鼻をあかせるのだから。)
僕は決断した。
「隊長としてズイ探検隊全隊員に告ぐ。」
全隊員が(と言っても3人だが)こちらに注目した。
「全員撤退。」
「そりゃないっすよ隊ちょ・・・。いや、そりゃねーだろガイ。せっかくここまで来たのにさ。」
「女性が行きたくないって言うんだから男性としてその意思は尊重すべきだ。」
「相変わらずのフェミニストめ。」
「もういいじゃない。行かないって隊長命令出たんだし。
ダイ君もほんとはちょっと怖かったんじゃないの。」
 ミヨがダイの顔を覗きこみからかった。
「うるせーやい。」
「顔真っ赤。」
 そう言ってくすっと笑うと淡いスカートを翻し駆けていく
「この野郎。」
「ダイ、ミヨは野郎じゃなくレディーだ。」
 こぶしを振り上げ、追いかけるダイに声を投げかけた。
 いつも通りの風景。いつも通りのやりとり。何事もなく帰るはずだった。
 そう帰るはずだった。何事もなく。

「使えないな。」
「確かに。だれかのミスでしょ。このポケモン。」
「もっと強いポケモンがワレワレには回って来るべきなのだ。」
 声のした方を僕らは見た。
 二人組みの男女。その下にはバトルに負けたのであろう傷ついたポケモン。
 あれは・・・。
「キャモメだわ。すぐ手当てしないと。」
「逃がしちゃおっか。」
彼らの言葉にミヨの顔と動きが凍りついた。
そして彼らはそのままキャモメを置き去りにしようとした。
「ちょ、ちょっと待ってください。」
 ミヨは駆け寄り、彼らの服の裾をひっぱた。
「何かしらお嬢さん。」
「あの子をどうして置いていくんですか。怪我してるじゃないですか。」
どうしてです、とミヨは詰め寄った。
「五月蠅い餓鬼だ」
そう言って男はミヨを突き飛ばした。そしてそのまま構わず去っていった。
「あいつ!」
「まて、ダイ。相手は大人だ。ここは落ち着いて。」
「ミヨが突き飛ばされたんだぞ。落ち着いてられっかよ。」
「だけど・・・」
「それとも怖いのかよ。フェミニストは口だけか。」
「そうじゃない、ただ・・・。」
 詰め寄るダイに僕は反論しようとしながら横目で2人組を見る。
 もう姿は見えない。
「ただ、なんだよ。なんだってんだよ。」
「けんかはやめてよ。わたしなら大丈夫だから。」
 立ち上がり服を払う。言葉の通り怪我はないようだ。
「ここで争うのは得策じゃないだろう。ミヨが大丈夫と言うならそれで・・・」
「女、口実にして逃げんのかよ。臆病者。」
「やめてってば。いまはポケモンセンターに行こう。この子だいぶ苦しんでるから。」

 ジョーイさんが言うにはキャモメはすぐよくなるらしい。
 たださっきの一件は後味の悪い結果を残した。
 ポケモンセンターから出た後、僕とダイは口を利かなかった。
 ミヨはそんな僕らの間に入っていろいろ会話を成り立たせようとしたが
 それも無駄だなことと分かったのか独りでキャモメが心配だからとポケモンセンターに戻って行った。
 僕らはそれぞれの家路についた。

 あれから一週間、僕は外に出ていない。出たらダイと顔を合わせてしまうだろう。
 別に探検に出なくたって知的好奇心を満たす方法はいくらでもある。
 本だってテレビだってパソコンだってある。
 だた、こんなに2人と顔を合わせないのは初めてな気がした。
 家も近所で昔から一緒だった。これからも一緒だと思っていた。
「ガイ、ミヨちゃんのお母さんから電話よ。」
 僕は違和感を覚えた。ミヨじゃなくてどうしておばさんが?
「はい、お電話代わり・・・なんですって!」
 電話の内容は驚くべきことだった。
「ミヨがいなくなった・・・。」
 僕は電話を放り出し外へと駆け出した。

 真っ先に向かったのはポケモンセンターだった。
 ここにいないとしても何か手がかりがあるかもしれない。
 キャモメのベッドに向かった。ジョーイさんの言うとおりキャモメの怪我はすっかり治っていた。
 もぞもぞと何かをくちばしでくわえ僕に差し出した。
「これは、手紙。」
 逸る気持ちを抑え僕は手紙を読んだ。
『けんかしてるガイ君もダイ君も嫌い。二人ともけんか続けるならわたし一人で探検に行きます。』
「ミヨ・・。」
 僕は唇をかみ締めた。自分が不甲斐無く感じた。けど、
「ミヨはきっと遺跡だ。」
 今やるべきことは後悔じゃない。
 行動だ。僕は手紙を握りしめ病室を飛び出した。

 遺跡の口がぽっかりと空いている。この中にミヨがいる。口の中が渇く。覗き込む遺跡の中は薄暗かった。
「でも僕一人ででも」
 ミヨを・・・。
「誰が一人なんすか、隊長。」
「ダイ! どうしてここが。」
「もう、探検は始まってる。副隊長でしょ。隊長。」
 その言葉に僕はごほん、と咳払いをして尋ねた。
「どうして分かったんだ副隊長。」
「簡単っすよ。こいつが教えてくれたんっす。」
「キャモメが・・・。」
 ダイの肩にとまってるキャモメを見た。
「出発命令を隊長。」
 にいとズイ探検隊副隊長ダイが笑う。
「ズイ探検隊、出動。」
「ラジャー。」
 任務は隊員ミヨの捜索だ。

「すげー入り組んでるなここ。ミヨを見つけても帰れるのか?」
 きょろきょろと見まわしながらダイが言った。
「穴抜けの紐は用意してる。抜かりはない。」
「さすが隊長。」
 褒め言葉を素直に受け入れることはできなかった。
「隊長失格だよ僕は。隊員がこんなにも追い詰められていたことにも気づかなかったんだからな。」
 そのとき肩にとまっていたキャモメが突然飛び立った。
「見つけたのか?」
 前を追うキャモメを僕らは追う。
「きゃあ。」
「ミヨの声だ。」
 顔を見合わせて階段を駆け下りた。
「ミヨ隊員。」
「あ、アンノーンが・・・。」
 ミヨの周りには多くのアンノーンたちが浮いていた。
「ここはアンノーンの住処だったのか。」
 僕らはうなずき意を決した。
「今そっちへ向かう。落ち着いて待っていてくれ。」
 僕らはアンノーンたちをなだめながら奥へ、ミヨのいる方へ向かった。
「ミヨ隊員無事か?」
作品名:僕らズイ探検隊 作家名:まなみ