地球最後の一日2
夕食も済み、各自思い思いに好きなことをしている。
「そういえば、他の奴らは何してんのかね?」
フランスがふと、思い出したかのようにそう呟いた。
「スイスさんは、リヒテンシュタインと、最後の夕食を楽しんでいるそうです。」
微笑みながら言ったのは日本。
「兄ちゃんは、スペイン兄ちゃんと、トマト収穫してるって~」
と、イタリア。
「今更だな・・・。兄貴はオーストリアとハンガリーとで外食中らしい」
愉快そうにドイツ。
「最後は一人楽しすぎにならなくてすみそうあるな。台湾、香港、韓国、ベトナムは家で神経衰弱してるらしいある!」
我も混ぜてほしかったある・・・と続けて中国。ちなみにマカオはポルトガルと一緒らしい。
北欧のみんなはデンマークの家。
バルト三国はポーランドを交えて酒を飲む。
ミクロネーションズはオーストラリア。ニュージーランドも一緒だという。
オランダ・ベルギー・ルクセンブルクは近くのバーで最後を迎える準備。
一国だけ、という国はないらしい。
「最後・・・。最後だから一緒にいたかったなあ・・・」
そう、ロシアがボソッと呟いた。
「ロシア・・・さん?」
「今日も、ベラルーシと姉さんを置いて、ここに着ちゃったんだ・・・」
嫌われちゃったかな、と後悔するようにロシアは続けた。
「・・・ロシアさん。」
「何、日本君?」
「その気持ち・・・、きっとベラルーシさんやウクライナさんに伝わっていると思いますよ」
「・・・・。」
「兄が嫌いな妹、弟が嫌いな姉など、存在しません」
「・・・・・・・日本君・・・・・」
「そう・・・だよね」
「はい」
ロシアは少し天を見上げると、正面に向き直り、優しく笑った。
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「最後くらい、一緒にいたかったね」
「・・・兄さん・・・。私は、嫌われた・・・か?」
「ベラルーシちゃん・・・。」
「しつこく、結婚を迫ったから・・・・・嫌われた・・・のか」
「・・・泣かないで、ベラルーシちゃん・・・」
「でもっ・・・」
「あのね、妹が嫌いな兄なんて、いないのよ」
「・・・姉さん・・・」
「また、会えるわよ。・・・生まれ変わっても、国として、生きたいわね」
「・・・そうだな、・・・人も捨てがたい」
「ふふ、少しは楽しみね」
「・・・・・・・・・・・・ありがとう」
「・・・・ベラルーシちゃん・・・。・・・・・ボルシチ、食べましょうか」
「・・・・・・・・・・・うん・・・」
透明な液体が、雪に消えた。
地球最後まであと6時間。
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