二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
なかのあずま
なかのあずま
novelistID. 54195
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

機動戦士Oガンダム

INDEX|21ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 

 やっと見つけたかと思えばこのように逃げられしまい、なかなか尋ねられずにいた。砂塵が、砂の粒が肌にぴったりついたノーマルスーツに当たる。
 「くっそぉ・・・もっと聞き出せばよかった」
 「もうあげるものないですよぉ?」
迫水がはぁ、とため息を吐いていると
 「お〜いそこの!あんたらなにしてんだ」みすぼらしい恰好をした中年の男が声を掛けてきた。「おぉ・・・!」
 声を掛ければ必ずと言っていいほど避けられる中、わざわざ自ら赴くみすぼらしいただの男が、迫水の目には砂漠の中のオアシスにすら見えた。
 「俺たちこういう人を探してるんですよ・・・見てないですか?」
男は端末に表示された女の画像をしばらく眺めると口を歪めた。「あぁ見たよ」
 「本当か!!」
 「あぁ」
 「いやぁ〜助かったぁ〜!ここの奴らえらく不親切でねぇ、人の話を聞かないどころか逃げだす始末で」迫水は水を得た魚の如く謝意を最大限に表したついでに、余談という名の鬱憤を彼にぶつけた。
 「逃げだすねぇ・・・」
 「なんというか、凶悪犯を見たようにねぇ?こちとら何もしてないってーのに」
 「そりゃきっとあんたらの格好だろうなぁ」男はにひひと不気味に笑う。
 「はぁ?」ジオン軍のノーマルスーツに何の文句があるんだと言わんばかりに、迫水は不服の態度で「こんな僻地でなにをいまさら」
 「ここには定期的に今のあんたらの格好したやつらが食料とかの物資を届けに来るんだ」<改ページ>
 「あー、ここ降りた時に囲まれましたよ」
 そういうことかと半ば呆れつつ、さらに話を聞くと、なんとも気味の悪い話を男が始めた。
 「そんでな、それと同時にこのコロニーから何人かが消えるのさ」
「消える・・・・・?」
 「あぁ、人さらいだよ。配給が来る度に何人かいなくなるのさ。等価交換ってやつかもなぁ」
「つ、つまりそれは・・・ジオンがここでナニカをやってるっていうことか・・・?」
 「さぁなぁ、俺も詳しかしらねぇよ。けどなぁ、さらわれた奴は二度と帰ってこねぇ。不思議だなぁ」
「そ・・・そうか」
 急転直下、後味の悪さと薄気味悪さに、迫水は口が乾いていくのを感じずにはいられなかった。
                    ≠
 リモーネとファナの二人は相も変わらず景色の殆ど変わらないヒビだらけの路地裏を躓きながら歩き続けていた。
 「ふう・・・ちょっと疲れちゃったね」
 「はい・・・」
 「アイス食べたいなぁ・・・」
「あれっ?!タロ兄ちゃんのねえちゃんじゃん!」
2人がコロニーの天を見あげていると活発な声がした。その方を見ると痩せた少年がいた。
 「あ!えーっと・・・」
 「ケンだよ!タロ兄ちゃんいないの?」
 「あ・・・うん」
 「なんだぁー?昨日も来てないんだぜ?」
 兄のタロ・アサティは家どころかこのコロニーの何処にもいない。すでに手の届かない所へ行ってしまった。その思いが「・・・・・ごめんね」という言葉と共に目からおちる。
 「あっ!」と少年は声をあげると、リモーネを指さした。「さっきこのねーちゃんのことさがしてる人がいたぜ!」

 リモーネはドクンッと胸が脈打ち、胃液を吐き出しそうになった。なんとか吐き気をこらえて
「じゃあそれまでキミの家で休んでいいかな?」
 とケンに言ったとき
 「よぉ〜少年!」時間切れの鐘が鳴った。「さっきおっさんに聞いたらこっち行ったっつわれてさーって・・・・・」<改ページ>
 「おぉ〜、解決ですね〜」
そこには先ほどまで群衆に囲まれていた依頼主、ゼーレーヴェ隊の迫水とエヴァがいた。
 「あっ!あの人だぜ探してたの!」ケンはさらに「いたぞー!」と二人の依頼主にパトリシアを指差しながら言った。
 「・・・キミ、先に家まで行っててくれる?」
 「え?なんで?」
 「ちょっとこの人たちとお話しするから」
 柔らかに微笑みながら言うパトリシアの表情は『ズレ』ていた。「う、うん、わかった」
 ケンがこの場から逃げると彼女は、二人を見据えた。「私を連れ戻しに来たのでしょう?早く連れていきなさい」
 言葉とは裏腹にどこか殺気を孕むパトリシアに2人は身構え、金縛りの如く固まっていた。
 「あぁ、えぇっとじゃあ…ほら、連絡いれて」
「あ、は〜い」

 「ファナちゃん、ニュータイプって聞いたことある?」
 着々と連行の手筈が進む中で、彼女は遺言を残すかのように昔話を始めた。
 ニュータイプという言葉に、ファナの脳裏に兄との別れがフラッシュバックする。
「エスパーのように人よりも勘が鋭い人のことをいうの。
一年戦争の時からジオンはその研究に力を入れてて、ニュータイプと呼ばれる人たちを実験台にして兵器を開発していった。戦争に負けてからもその研究は続けられていて・・・私はその研究所に入れられた。
 最初はニュータイプの脳波検査とか新しい兵器のテストパイロットとかだった。でもジオンの研究は、ニュータイプを造りだすようにまでなっていったの・・・ニュータイプの、クローンを
 私はその実験台の一人になった。何人もの私が造られ、失敗してはゴミの様に捨てられた。やっと人のかたちになっても実験は続けられて・・・・・・
 10歳の私たちが戦場へ出ていくことが決まったの。もう何も考えられなかった。そんな時に新しい実験で別の場所へ行くことになって、その途中で逃げ出してきたの」

 ファナは言葉を紡げずにいた。彼女の明るいあのふるまいからはとても想像できることではない。
 彼女だけでなく迫水とエヴァも同様だった。“ただ彼女を目的地まで運ぶ”程度の名目しかない迫水に受け止められるものではない。<改ページ>
 「リモーネさん・・・」
 「ごめんね。これが私の在り方だから」

 「えっと・・・じゃあこれで」
 命令に背いて予定外の行動をとるわけにもいかず、パトリシアを拘束し港に停泊している艦へ向かおうとした時、
「あの・・・」ファナが静かに口を開いた。

 「その人を連れて行くなら、わたしも連れて行ってください」

 彼らだけでなくパトリシアまで振り返った。ファナが何を言ったのか、誰も呑みこめていない。「いま・・・なんて・・・・・」
 「わたし、なにもできないから、今までお兄ちゃんに頼りっきり…だったから」
 「だめ・・・ダメだよ・・・・それ以上いっちゃだめ!」ファナを行かせてはいけない、その先に、その向こう側にあるものは・・・
 「いいんです」
いつから心に決めていたのか、ファナの目は揺るぎない意志を宿していた。
「良くない!私と来ることがどういうことかわかっているの!?あなたにはまだ」
 「ここでなにができるっていうの!!!」
    激昂
もはや誰も、ファナ・コ・アサティを止められなかった。
 「あなたたちはニュータイプが欲しいんでしょ?リモーネさんはニュータイプだから、だから捕まえに来たんでしょ?」

 「わたしもニュータイプです。これでいいですか?」

この時、パトリシアは、ファナの辿る運命を感じとっていた。


 「ねーちゃんたち来ないなぁ」ケンはひとり、冷たい部屋で、もう来ることのない客人を待っていた。
<改ページ>