機動戦士Oガンダム
「あの…あの子にはお兄さんがいるみたいなので・・・目が覚めたら彼女に聞いてください」
「えっ?」
「ジュドー・アーシタ・・・だったと思います…確か」
彼女は何も言わずタロの目を、自分を同じ青い瞳を見つめていた。
「・・・・わかりました。では後は私たちが」
「あ、あのっ!」タロは思わず声を張り上げていた。「・・・・よろしくお願いします!!」
その姿に、それまで厳たる表情だった彼女が僅かに微笑んだ。
「・・・・えぇ大丈夫よ、だから泣くんじゃありません」
リィナを何とか送り届け帰路に就いた二人はダカールへ向かわず、降り立ったコムサイまで車を走らせていた。
「なんつーか…人助けに地球に降りたって感じだな。どうすんだ?命令違反で軍法会議もんだぞ?賊に軍法会議なんてねーだろーけど」<改ページ>
「目的は達成してますよ。僕は地球人を見に行くだけでよかったんですから」
「ニュータイプの考えてる事はわからねぇや」ニロンはフッと夜空に投げかけた。「けど、やっと16歳に見えたよ、おまえ」
砂埃の混じる夜風が、二人に吹いた。
≠
「止血完了、何とか呼吸も安定しました」
医療者の中でリィナの体から銃弾が取り除かれ、一先ずの救命処置が終わった。幸いにも傷は銃創としては深くはなかった。「後は血液型しだいね」
彼女が「ふぅ」と一息つくと、ラドが目を潤ませて「ありがとうございました」と深々と頭を下げていた。
「まだ安心しきるのは早いわ・・・けど、あなたの応急処置がこの子を救ったのよ」
「い、いえ…私はほとんど何もしていません。あの二人が…あの少年が必死になってやっていましたから」
「あの少年・・・」
「えぇ、タロ・アサティという・・・」途端、彼女の顔が曇りラドは言葉を止めた。「どうしたんですか?」
「いえ、たいしたことじゃないわ。ただ」彼女は、遠い昔を見ていた。「あの子の目が、とても兄に似ていて・・・」
「あれ?」医療団の一人から声が飛んできた。「ご兄弟いらっしゃったんですか?」
彼女はそれには答えず、通話機を手に取りどこかへ掛けていた。
「お久しぶりね、カイ。調べてほしい人がいるのだけど・・・」