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なかのあずま
なかのあずま
novelistID. 54195
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機動戦士Oガンダム

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 「嘘は言っていないだろうしなぁ…ただ、彼が会ったというシャアが本物の確証もないし・・・どちらにしてもうかつに報告はできないなぁ」
 『重力に魂を引かれる』なんて表現をすればほぼ間違いはないのだが、再びジオンの反乱がおきている中に新たな火種を放り込んで混乱させるのは得策ではない。
 「それよりも気になるのはハマーン・カーンの弟だ。姉はいたらしいが弟は聞いたことがない
 まったく気味の悪い話だなぁ」
「・・・もしかしたら“姿なき海賊団”の可能性もありますね」
 「まさか!ただの噂だろ?」
 ジョブ・ジョンは笑い飛ばしたが、内心はそうではなかった。ここ最近、連邦、アクシズに関係なく機体が自爆するなどの小さな事故が多発していた。それをまるで誰かの仕業のように皮肉ったのがその“姿なき海賊団”であった。
 「・・・それこそいるかどうかすら怪しいやつじゃないか」
 その時、タロが個室を抜け出しメインブリッジへ入ってきた。「あの・・・」
「おっ、決めたかい?」
 「はい、俺を家に送ってください」
「・・・よしわかった。クシナ、送ってってやれ」
 彼の決意を固めた青い瞳に従うしかない。無理に引き留める道理はこちらにはないのだから。

 「よかったんですか?」とオスカが聞くと
「ま、仕方ないさ!」
 ジョブ・ジョンの声はいつもの軽さに戻っていた。
                    ≠
 タロとファナの暮す部屋のある建物の前にZガンダムMk-?が着地し、砂塵を巻き上げた。ジム・セークヴァが中破していたので無傷のZ Mk-?がその役を担ったのだ。
 「…じゃあね」
「あの・・・クシナさんも来てくれませんか?」<改ページ>
Z Mk-?の手のひらに乗せられると、タロは言った。
 「えっ?」
「お願いします」
                    ≠
 ドアをたたく音がした。
勢いよく開けると兄、タロ・アサティの姿があった。その奥に、女性がいた。
 「あの・・・」
 彼女の事を尋ねようとした時、タロに強く抱きしめられた。「ごめん」
「えっ?!なに?」
 「しばらく家を出ることにした」
「・・・・え?」
 ファナの中にタロの思いが広がってゆく。それは、とても残酷な選択だった。
「今までゴメンな・・・兄ちゃん、ファナがもっといい暮らしができるようにするからさ、それまで待っていてくれ」
 タロは一層強く抱きしめた。ファナは体と心が圧迫される中、何とか振り絞って「バカ」とだけ答えた。
 そして、タロの腕が離れ
 「行ってきます」という言葉と共にドアが閉まった。

                    ≠

 マイクロ・アーガマに戻るとジョブ・ジョンが歓喜の色を浮かべ迎え出たが、タロの表情で、それは消えた。
 タロは再び居住スペースの個室に入り、ひとり泣いた。

 マイクロ・アーガマは一先ずの任務を終え出港の手筈を整えていた、といってもほんの数時間の滞在かつ補給も出来ないのでこれといった手筈もないのだが。
 「何か映らないか?」
 ジョブ・ジョンはマイクロ・アーガマのレーダーをフルで機能させ、コロニー内をできる限り見張っていたが
 「ダメですね・・・ミノフスキー粒子の濃度が高すぎます」
と、マーカーが応じた。
 ミノフスキー粒子とは<改ページ>
  宇宙世紀にミノフスキー博士によって発見された粒子であり、レーダーのかく乱や重力下での戦艦浮遊、さらにはビーム兵器としても活用出来るとても便利な代物である。
 「ったく、こんなコロニーでもミノフスキー粒子はいっちょまえなんだから」
「それにしてもこの濃度は異常です。ここで戦闘があるとも思えません。隅々まで調べる必要がありますよ」オスカだ。
 「出来ればそうしたいが…この状態じゃなぁ・・・」
 二機のジム・セークヴァが中破した今、動かせるのはZ Mk-?とアウター・ガンダムだけだ。
 もしコロニー内にジオンの勢力が集結していたら、いくらガンダム二機でも苦しいだろう。
 「ニュータイプの扱いも難しいだろうし一旦引き上げよう、タロ君を呼んできてくれ」
「わかりました!」
 クシナがタロを呼びに行った。

 ノックをするも返事が一向に返ってこない。ためしに扉に手をかけるとロックはされておらず、ドアは開いていた。
 「入りまーすよー・・・」
 中は、ベッドの上でタロがうずくまっていた。こちらに反応する素振りすらない。基本的に誰とも仲良くなるクシナだが、彼に対してはそれが通じなさそうだ。
「あのー、艦長が呼んでます、そろそろ出港するからって」
 「・・・・・・・・・」
「あのぉ!」
 「大丈夫です、聞こえてます」

 「俺の判断は…良かったんでしょうか・・・」
 しばしの沈黙の後に、ぽつりと言った。
「え?え〜っと・・・」
 先ほど目の前で寸劇を見せられたクシナは何といえばいいかわからず、そのままぽろっと「よくわからないなぁ」と言った。
「そうですか・・・」
 「えっ、えーっと!」声が裏返ってしまった。若干面倒くささを感じながら『何かいい言葉』をさがす。
 「あ、そうだ」<改ページ>
 クシナはポケットから音楽プレーヤーを取り出し、スピーカーをONにして一つの曲を流した。

 「“Stay with you 星のように”っていう曲、いつも聴いてるんだ」

 タロがクシナに連れられメインブリッジへ姿を現すと、ジョブ・ジョンは振り返った。
 「準備は良いかい?」
「・・・・はい!!」
 「よし、スラスター全開!!クシナとタロ君、ガンダムでコロニーのハッチを開けてくれ!」
タロは誰かに呼ばれたように外の景色をしばらく見て、自らの意志でアウターへ向かった。
 正常に作動しない太陽光反射鏡が、コロニーの中に時間はずれの金色の斜陽をつくりだしていた。

 Z Mk-?とアウターがマイクロ・アーガマから発進し、コロニー内部のハッチを開けた。
 慎重に内側のハッチを通過すると、景色が人の住む空間から無機質な機械に変わってゆく。
 太陽の暖かい光が影を潜め、温度の無い無表情な空間へ。

 マイクロ・アーガマが無事通過し、内部ハッチを閉める。続いてZ Mk-?が外部接続ハッチを開く。
 ゆっくりと宙域に出るマイクロ・アーガマの後を追いかけるように、アウターは無重力の海へ
 コックピット内の全天周囲モニターが透明な黒に染まっていき、タロは悠久の時の中に溶けてしまいそうな感覚に包まれた。

 「そっか・・・俺、この中にいたんだ」

 長い刻を過ごした空間を外から見れば『こんなものか』という思いもこみ上げてくる。
 「行ってきます・・・!」
 マイクロ・アーガマへ着艦しようとスラスターを噴かした時
『ピピピピピッ』「!?」
 コックピット内のアラートが鳴り、警告灯が点滅し

五つの機影が迫っていることを知らせた。