のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版
休憩スペースはそこまで広くなく、のび太一人でも探索は容易であった。その結果、冬にストーブを使うためのものであろう灯油の入ったポリタンクと、給食の残飯処理について書かれたプリントを発見した。灯油はゾンビ復活を阻止するために必要になるだろう。プリントのほうは、生徒の食中毒を防ぐために生ゴミの分別を徹底することが書かれていただけで、のび太も特に気には留めなかった。
「よいしょっと……これで死体の処理もできるようになったぞ」
四次元カバンの口を広げ、手に入れたポリタンクを中に入れようとするのび太。
「あの、のび太君……その灯油とライターを貸してください……知子ちゃんを燃やしてあげないと……」
「そうね。早く貸してちょうだい……ちゃんと燃やしてあげなくちゃ……」
だが、それを聖奈と咲夜が引き止めた。
「な、何言ってるんですか二人とも!? この人は友達なんですよね!? それを燃やすだなんて……!」
いきなりとんでもないことを言い出した聖奈と咲夜に、のび太は思わず食ってかかった。
「友達だからこそよ、のび太君……このまま放っておいたら知子ちゃんはゾンビになるわ……知子ちゃんだってゾンビになんてなりたくないはずよ……」
「私たちもそんな知子ちゃんは……見たくありません……」
のび太は二人とも友達を喪ったショックで気が触れてしまったのかと思ったのだが、そうではなかった。このまま放置して友達をゾンビ化させてしまうより、せめて自分たちの手で遺体を火葬して弔いたい、というのが二人の気持ちであった。
「……そう、ですね。ゾンビとしてではなく、人間として知子さんを天国に送ってあげましょう」
のび太も二人の気持ちを尊重し、知子を丁重に送り出すことにした。ポリタンクの蓋を開け、知子の遺体に灯油をかけると、四次元カバンからライターを取り出してそっと火をつけた。そして黙祷を捧げている聖奈と咲夜の横に並び、自らも目を閉じた。
炎は知子の魂を汚された肉体から解き放ち、その役目を終えると自然に消えた。
「……そろそろ、行きましょうか」
「えぇ」
「そうですね」
聖奈の言葉に咲夜とのび太が頷き、三人は休憩スペースを後にした。
「グオォォォォォォォォォォォォ……」
「「「……ッ!?」」」
遠くのほうから何かの咆哮が聞こえてきたのは、それとほぼ同時であった。
作品名:のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版 作家名:カテゴリーF