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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録009

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・・・まるで時間が戻ったかのようだった。が、昔以上に落ち着いてそれでいて手放し難い感情を彼女は抱えていた。

「・・・・・ワン、今夜は眠れそう?」

「・・はい。とても眠いです。疲れたからでしょうか」

「そう。それは良いことだわ。ゆっくり休んで頂戴ね。・・また明日、たくさんお話ししましょう」

「はい。・・・おやすみなさい」

格納装置に横たわるワンに微笑みかけ、パネルを操作してシェルターを閉じる。
・・しばらくその場に佇み目を閉じた彼の顔を眺めてから、自分のオフィスに戻るため装置に背を向けた。

静まり返った廊下を一人歩いていると、ふと背後に気配を感じた。まるであの時のように。
ベルティーニ博士は足を止め、その気配に背を向けたまま口を開いた。

「・・また貴方に感謝しなければならないわね。私自身をまた救ってくれて、あの子をも救ってくれた。礼はいらないなんて不愛想なことは言わないで」

「そうか。じゃあ言わないことにしよう。だがワンを救ったのは俺じゃない、紛れもなく君自身だ。そしてこれからどうするかもまた君が決めることだ」

ワンと同じ、だがワンのものより力強く抑揚のはっきりとした声。軽い口調。振り返ると、顔もまた彼と同じ―表情や立ち居振る舞いのせいでそうは見えないことが多いが―男が立っていた。

「・・・私に何か言うべきことでも?」

「ああ。提案だ。ワンに人殺しをさせた犯人・・・君の例え話で言うならテロリストの正体とその目的。気にならないか?」

「・・勿論よ、でも・・・今は過ぎたことの究明に熱心になっている場合ではないの。それにこうなる前に散々調べたけれど、何も掴めなかったわ。手がかりさえ。あの子のために犯人を突き止めたい気持ちはまだ大きいけど、もう・・・」

「そうだな。それにこればっかりは君や他の博士達の気持ちからしても、いくら細胞の持ち主だってぽっと出てきて何でもさっさと片付けちまう俺みたいなのが解決しても気が晴れないだろうし、あんまり意味はないわけだよな」

「・・何が言いたいの?」

「気付いてほしいんだ。または既に気付いている人間から情報を得てほしい。テロリストの正体にな。完全犯罪のように見えるが、実は意外なところに案外大きな落とし穴がある・・・まずはそれに気付くことから始めるんだ。それさえわかっちまえば、答えはもうすぐそこだ」

「・・・また何かのヒントなの?テロリストの正体に既に気付いている人間がいると言ったわね。その人物は、正体をわかっていながらなぜ犯人を明らかにせず黙っているの?・・・そうできない理由があるか、またはその人物も共犯だということよね」

「ああ、実際は前者だ。そいつには犯人を君の前に突き出せない大きな、深刻な理由を抱えてる」

「・・・脅されている、とか・・・?でも貴方がこんなわかりやすい言い方をするはずないわよね。一応確認なのだけれど、その気付いている人物と言うのは貴方のことではないのよね?」

「無論だ。まずはどうやっても手がかりさえ掴めない理由を考え直してみるといい。そして気付いている人物が特定できたなら・・・・その先からはもう俺は何も言わない。君自身の力で解決することに障害はないはずだ。何も難しいことはない。
・・言いたいことはこれだけだ。ああ、それと今日はもうオフィスに戻ったら素直に休めよ。徹夜で考え事なんてのはよろしくない。美容の天敵だ。じゃあな」

「ええ、お気遣いどうも。・・・・・・・・」

空間に溶け消えていったソロの言葉をもう一度反芻する。

・・・・あの5年前の実験の日、ワンを過活動状態にさせる薬物をウイルスに運ばせ、一度に数十の命を奪った悪魔のような存在。その正体を知る人間がいる。
・・まずはなぜデジタル世界・アナログ世界ともに痕跡が残っていないのかを考え直し、正しい答えが出たのなら次は“気付いている人物”を探す。

(・・・・・私の固い考え方じゃきっと埒が明かないわ。他の人にも一緒に考えてもらう必要がありそうね・・・・・・・)

しばらく立ち止まったあと、ベルティーニ博士は再び廊下を歩きだした。








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