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【APH】無題ドキュメントⅤ

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「フン」

一度、机上に投げ捨てた書簡を掴むと、プロイセンは椅子を軋ませ立ち上がった。




 以前は王宮に住んでいたが、王宮を管理するメイド長に、

「国家殿、お部屋のがらくた類を整理していただけませんか?雪崩を起して死人が出ます」

と、言われ、長いこと生きてるお陰で溜まりに溜まったその時代時代の思い出の品や、物心ついたころから付け始めた日記は既に膨大な量になっている。仕方無しに、プロイセンは王宮からそう遠くない場所に小さな屋敷を求めた。専ら書庫代わりに使うつもりでいたのだが、弟が出来てからは人を雇い、手入れさせたお陰でかなり住み良くなった。
 自分が使っていた書斎は本が好きだという子どもの為に譲り、倹約を旨としている訳でもないが、国から出る給金のようなものが溜まりに溜まっていたので、一度散財しとくかと思い切って書斎を改装し、プロイセンは子どもが興味を示したもの、ありとあらゆる知識と叡智の詰まった書物を、見たこともない色使いの異国の画集を取り寄せた。これが子どもにとっての最高の贅沢らしい。感激の余り言葉を詰まらせた子どもに抱きつかれて、何度もお礼を言われた。それを思い出し、プロイセンの口元は自然に緩んだ。

「ルッツ、いるか?」

重厚な樫のドアを叩き開くと、採光の為に大きく取った窓から、レースのカーテンを通して柔らかな冬の日差しが降り注ぐのが見えた。部屋の壁一面には本棚。みっしりと詰まった革表紙の本はプロイセンが所有し、数百年時を経た本もあれば、何冊もある聖書に奇書、かの大王の書きかけの楽譜や手書きの原本らしい随筆が無造作に詰め込まれていた。室内はお世辞にも片付いたものではなく、未整理で雑多であったが、子どもの一番のお気に入りの場所だ。
「…兄さん?」
新しく本棚を増やしたものの棚に入りきらずに溢れた本は床に平積みにされ、山がいくつも出来ている。大量の本のインクの匂いが微かに鼻につく。本に埋もれ姿の見えない子どもの姿をプロイセンは捜す。積み上げられた本の間から金糸が覗き、山を崩さないようにと気づかいながら、大きな本を抱えた子どもが出てきた。
「読書中、悪いな。…これを」
子どもが抱えていた本を取り、手にしていた書簡を手渡す。子どもは丸められた紙を広げた。




 明後日、そちらに伺います。


ローデリヒ・エーデルシュタイン

作品名:【APH】無題ドキュメントⅤ 作家名:冬故