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【APH】無題ドキュメントⅤ

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一行だけの短い文面に子どもは顔を上げた。
「ローデリヒとは兄さんの知り合いなのか?」
「古い顔見知りだが、虫唾が走るほど嫌いな奴だ。……ローデリヒって言うのは、オーストリアの社交上の名前だ。私事の用件にはアイツはこの名前を使う」
「………オーストリア。……兄さんにも、名前があるのか?」
「ああ。俺にはギルベルト・バイルシュミットって名前がある。お前は俺の弟だから、ルートヴィッヒ・バイルシュミットになるな」
「…ギルベルト・バイルシュミット…その名前は兄さんが自分で付けたのか?」
「いや、俺が一人前の騎士になったときに当時の騎士団団長が付けてくれたんだ。…ってまあ、その話は今度してやるよ。それより、これだ」
プロイセンは紙を弾く。
「……オーストリアは兄さんに会いにくるんだろう?」
「違う。オーストリアはお前に会いに来るんだ」
「おれに?」
不思議そうに首を傾けた子どもに、唯一本に浸食されていないソファに座るようにプロイセンは促し、その傍らに自分も腰を下ろした。
「お前が本当に「ドイツ」と成り得るかどうか…、アイツは見定めるつもりなんだろうよ」
「………」
「心配するな。俺がいる。オーストリアなんぞにお前の…俺の邪魔はさせねぇよ」
いずれ機を見て、連邦を脱退し、オーストリアとは一戦を交えることになるだろう。ドイツの統一に盟主は二人はいらない。赤い瞳を光らせるプロイセンを見やり、子どもは何か言おうとして、本能的に言葉を飲み込んだ。

 おれがドイツになったら、兄さんはどうするんだ?

ドイツの北の地を領有するのは、この目の前の青年だ。自分がドイツとなれば、青年の居場所はなくなるのではないか?それとも、青年は自分を傀儡とするつもりなのか?

…訊かなくてはと思う。

でもそれは禁忌であり、寄る辺のないこの身に縋れるものは目の前の青年しかいない。でも、その青年の口から、その返答を訊くのを恐ろしいと思う。…どちらの答えを訊いても、自分は絶望するだろう。

「…で、オーストリアのことなんだけどな」

「あ、…ああ」
プロイセンの声にハッとして子どもは顔を上げる。それに、プロイセンは子どもの額を指先で小突いた。
「ひとの話はちゃんと訊けよ」
「すまない。ちょっとぼーっとしてしまった」
「…具合悪いのか」
作品名:【APH】無題ドキュメントⅤ 作家名:冬故