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LIFE! 5 ―Sorry sorry sorry!―

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 不意に手首を握られた。驚いてアーチャーを上目で見る。
 腕を振りほどこうとするけど、ビクともしない。
(放せよ、なんで、なんで?)
 混乱する。アーチャーがわからない。マスターでいろと言ったり、消えると言ったり、腕を掴んで放さないのに、こいつは口端すら動かさない無表情で、不安でしようがなくて、こわくて、こわくて……。
 もう、何を言えばいいのか、どう謝れば許してもらえるのか、見当もつかない。
 ガキみたいに涙が止まらなくて、掴まれた腕を、必死になって放そうとした。
「し、士郎、その……」
「は、はな……せ、よっ……、はなっ……っ……」
 喉がヒクついて声が出ない。
 アーチャーの手からも逃れられず、何も叶うことのない俺は、自分の腕を掴んで引き寄せようとするまま、涙をこぼすことしかできなかった。
 アーチャーの手が頬に触れてビクつく。
 わけがわからなくて、俺はただ逃げたくて、腕だけを残してギリギリまで後退る。
「士郎、何も、しない、だから、逃げるな……」
 アーチャーの声はやけにたどたどしい。
 耳まで俺はおかしくなってしまったのか?
 少し顔を上げる。
 ぎくり、とした。この表情はわかる。いくら、無表情だからって、この顔は……。
(困らせてしまった……)
 俺はまたアーチャーを困らせている。
 本当にもう、こんなのは、やめなければいけない。
 渾身の力で自分の腕を引く。アーチャーの手にさらに力が籠もった。握りつぶされるのかと思うほど痛い。
「はな……っ……」
 声を絞ったけど、ヒクつく喉はうまく発声できない。掴まれた手首の痛さに目を瞑る。腕を引っ張られ、身構えた。何をされるのかわからない。
 強張った身体を大きな手が包んでくる。恐る恐る目を開けると、アーチャーのシャツが見える。
 アーチャーに抱き締められているみたいだ。
「すまない、士郎。泣かせたかったわけじゃない。泣くな、泣くな……」
 きつく俺を抱き込んで、アーチャーは、泣くな、と繰り返す。
 頭を大きな手で包まれるように撫でられ、震える手でそのシャツを握って目を閉じた。
 もう、どうすればいいのかわからない。
(俺は、どうやって、こいつを自由に、幸せにしてやればいいんだ……?)
 目と鼻の先の一歩さえ踏み出せなくて、俺は小さくなって震えていることしかできなかった。


LIFE! 5 ――Sorry sorry sorry!―― 了(2016/1/14初出・7/5,10/13誤字訂正)