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それはまるで雪解け水のように

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季節は冬。
しんしんと冷える空気は心までも凍りつかせる。


…目を覚ますと同時に身体の傷が痛んだ。


高「―――――っ」


体を起こせば体に巻かれた包帯から血が滲む。
それを見るとまだ自分が生きていることを実感させられる。




高「俺ァいつまで、あいつの背中ばかり見てるんだろうな…」



隠された左目へ無意識に手が行き、先ほどまで見ていた夢を思い出す。






餓鬼の頃、道場破りとして勝負を挑むたびに銀時に負け、呆れたように俺の前から立ち去っていく姿。

攘夷戦争時代、気が付けば俺を守るように立っていた……そうやって何度も銀時に守られて生き延びた事。

何度行くなと止めても、人の制止も聞かず一人で突っ走って行く姿。


戦争が終わるや否や、別れも告げずに俺たちの元を去って行った銀時の背。






そんな昔の事を、ここの所ずっと夢で見ている。







…数日前、久しぶりに銀時に会った事が原因だろう。


感情のまま刀を交えれば互いに血を噴いた。
決着がつかない事に飽きたのかあいつは何も言わず、何も読み取れない目のまま去って行った。


…俺はまたあいつの背を眺めてるだけで………気が付けばこの有り様だ。



こうして自室に居るってことは、万斉あたりが拾ったんだろう。



高「…余計な事を」



苛立ちながら着物を着替え部屋を出る。
すると向こう側から万斉が歩いてきた。




万「晋助…?起きて大丈夫なのか?」


高「大したことねぇ。余計な世話だ」


万「しかし晋助、本当に酷い怪我だったのだぞ…?このように出歩けるのが不思議なくらいに」


心配そうに手を伸ばしてくるがそれを拒む。


高「俺に触るな」


万「っ…。……晋助、誰とやりあったのだ」


高「てめぇには関係ねぇよ」


興味なさげに通り過ぎようとするが万斉に止められる。


万「待て晋助!…どこへ行く」


高「どこへ行こうが俺の勝手だろ。いちいちうるせぇんだよ」


万「そうはいかぬ。どうせまた白夜叉の所に…」


高「おい万斉。…てめぇは俺の監視役か?…それ以上騒ぐとお前でも容赦なく斬るぜ」



本気の忠告に一瞬躊躇したが、言葉を続ける。



万「…分かった、お主がどこへ行くのかはもう聞かぬ。…だが、これだけは聞いてくれ。…どうやら最近、我ら鬼兵隊を敵視している天人どもが江戸の街をうろついているらしい。どこかで我らが江戸に居る事を嗅ぎ付けたのだろう。晋助、お前が負けるとは思っていない。だがその手負いの体では多勢に無勢となった時…。だから、くれぐれも無理はしないでくれ」


高「…そうかい。一応覚えておいてやるよ」



そう告げると煙管をふかしながら船を出た――――。






―――――
―――



降り立った場所は勿論江戸の街。
白い息を吐きながら大通りを避け裏道を歩く。


何処かで待ち合わせをしている訳でもない。
今何処で何をしているかも知らない。

それでも、この街に来れば必ず何処かで逢える……そんな淡い期待を抱けば傷が疼いた。





探していないと言ったら嘘になるが、宛ても無く歩いていると人通りの少ない開けた場所に出た。
そこは静かで何処か懐かしい気持ちになる場所だった。



高「へぇ…江戸にもまだこんな場所が残っていたとはねぇ…」



誰に向けた訳でもないその言葉は冷えきった空気の中へと消える。


空を見上げれば今にも雪が舞い降りそうな曇天。



高「そういや、あいつが俺たちの元を去ったのもこんな季節だったなァ…」



ふと目を閉じれば今でも鮮明に思い出すあいつの後ろ姿。


雪が降る中、後ろも振り返らずにどんどん前へと進んで行く。

いくら手を伸ばしても届きはしない。



そんな事を思い出していると露出した首や手にふわりと冷たい何かが触れた。
正体を確かめようと目を開けば視界には雪が舞い散りそして…――――――その先には銀時が居た。

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驚きで片目を見開くもそんな事気にも留めていない様子で銀時が告げる。




銀「…何でてめぇがこんな所に居るんだ。…高杉」


高「…何処に居ようが俺の勝手だ。…てめぇこそこんな所にまで根張ってんのか、銀時」


銀「まぁ、それなりにな。…さっさと此処から立ち去れ」



殺気を漲らしてるその姿はやはり俺を拒絶していた。



高「てぇめの言う事聞く筋合いはねぇな。…それでも退いてほしいってんなら力ずくでやれよ」


銀「…止めておけ。この間も殺り合ったろ。お前は俺に勝てねぇよ」


高「っ……てめぇ…!!」


銀「お前が去らねぇってんなら俺が行くさ。…じゃあな」


高「…逃げんのか!銀時!」



怒鳴るように投げつけた言葉と同時に抜いた刀を去っていく相手めがけて振りかざした。
…だがやはりそいつは俺の刀を簡単に受け止め鈍い音が響く。



銀「…何度言ったら分かるんだ、てめぇは」


高「分からねぇからこうして何度も刀振りかざしてんだろ」


銀「…は、そうだったなぁ。お前は餓鬼の頃からそうやって何度も何度も俺に向かってきてたっけ」



つばぜり合いをしているとは思えない会話が続いたがそれを断ち切ったのは銀時の方だった。



銀「お前は…何も変わってねぇ……だから俺には勝てねぇんだ…よ!!」


高「く…っ、るせぇ…俺は…!!!」



高杉が言葉を紡ごうとしたその隙を銀時は見逃さず、せり合いで相手を押し返せばその刹那、腹を思いっきり蹴り飛ばした。
…そこは先日殺り合った時に出来た傷が刻まれており、呼吸はおろか直ぐには立ち上がれないほどの衝撃だった。



高「がはッ……っ、…て、……め……」



上手く呼吸が出来ないまま片膝着き思わず腹に手が行けばジワリと血が滲む。



銀「…いい加減、これで分かったろ。………俺に関わるな」



倒れる相手に冷たくも悲しい視線向け再び背を向け歩き出す。



高「待、て………っ」


声を絞り出しても相手は振り向くどころか止まりもしない。


高「銀……時……」


いつかと同じ…雪が舞い散る中その背を見つめ、手を伸ばしても届かない。


高「行く、な……」


その呟きは先と同じように冷たい空気の中へと消え去り、気が付けばその背も見えなくなっていた……――――。






―――――――――
――――――
―――


あれから何時間ここに居るのか分からない。ふと肩を見れば白い結晶が積もっているが寒さは感じない。
ようやく息が出来るようになり傷から滲み出る血が止まっても高杉はそこから動けずに居た。
何処かが痛かった訳ではない。 …刀も鞘に納めぬままただそこに座り込み空を見上げていた。

しんしんと降る雪を眺めていると何故か安心する。



…そんな時、一瞬で辺りの空気が変わった。…理由は振り向かなくとも分かる。どうせ万斉が言っていた奴等だろう。



「これはこれは……鬼兵隊の高杉殿とお見受けする」


あぁ……聞き苦しい声だ…


答えるのも面倒になり黙っていれば向こうからペラペラと話し出す。