ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録010
「えーーーーーーーー!!」
「嘘だろ!?なんで!?」
「マジかよ・・・!!」
翌日。早朝から、36階のメイン連絡会議室にはなぜか絶叫が木霊していた。
鼓膜が破れるほどの大声の主はMolecule Changer達である。
博士達はソファに座ったまま、そのあまりの音量とあまりの唐突さに言葉を失い何の反応もできずにいた。
・・・というのも、彼らはこの部屋に入ってくるなり突然、どういうわけか叫び始めたのだ。
別段何があったわけでもない。ごくごく平和な朝の時間が流れていただけである。
後からついてきた者も、先に入った者がもう十分に叫んだにも関わらず、いちいち叫ぶ。まるで何かに壮絶なまでに驚いているようにも見えた。
「うえぇぇええぇぇ!?」
「えええぇぇ嘘ぉぉ!?」
・・・そしてひとしきり叫んだ後も何やら慌てた様子で忙しなく言葉を交わしているが、まだソロが来ていないのでどうすることもできない。
「・・・・な・・・・・何なんだ朝っぱらから・・・・。耳がおかしくなるかと思った」
「一体どうしたんだろうね・・・困った。まだソロは起きてきてないのか。というか、そもそも彼に睡眠が必要なのだろうか?」
「・・いらないはずだよな。いつでもどこからでもエネルギー補給できるとか言ってたし」
「あいつまたバックレてんのかよ!通訳がいないと話になんねえのわかってんのか!?」
「誰が通訳だこの野郎・・・」
「うわあ!!」
ベクスター博士までもが大声を出す羽目になったが、ひとまず彼らがなぜ絶叫し続けたのか説明してくれる存在が現れたため、スワードソン博士は安堵して肩を落とした。
「呼ばれて飛び出てやってきたぜ・・・。何か用か?あんまどうでもいいことだったら怒るぞ」
ソロは多少低く掠れた声でそう言うと、眠たそうに目を細めたまま欠伸をした。
「ああその・・・ってか、お前寝てたのか?」
「いや。消えてた。この身体は今作ったばっかのアレをアレして・・・、温度が低くて・・・アレなんだよ。そうそう。で?はあ・・・酸素が足りない」
「あ、ああ。えっと・・・君の仲間達が何かに凄く驚いてるようなのだが、理由として思い当たるものが何かないかね?」
言われてソロがぼんやりと部屋の中を眺める。・・・そして一点に焦点が合うと静止して、・・・そして再び視線を動かそうとするが思い直したようにもう一度視線を戻して二度見した。
「ん?・・・・ん!?」
「・・どうかしたか?」
「・・・いたのかお前ら・・・おい、飛びかかって来るなよ。・・あーもう、言ってるそばから。こら、服に入るな!ったく、ワンは毎朝こいつらに埋もれてたのか?」
目を輝かせながら、小さなすべすべした生物―velvetyと呼ばれている―がソロを見つけるなり、テーブルから飛び跳ねて頭や肩などに乗ろうとした。
「ああ、そうなんだよ。本当にワンによく懐いていたからね・・・面倒で予知していなかったのかい?」
「そんなどうでもいいことまで予知するわけないだろ・・・はぁー。こんなことでいちいち呼び出さないでくれ・・・忙しいんだから・・・」
一体ずつクリアでつまんでテーブルに戻しながら、ソロはため息をついた。
「・・で、あいつらはつまりこれに驚いてると」
「そうだ。・・・ふわぁ」
テーブルの上、ソロを見つめながら嬉しそうにぴょこぴょこと跳ねる小さな生物達を眺めながら、クロウ博士は膝に肘を置き頬杖をついた。
━─━─記録010 英雄たちの休らい
「なんでまた・・・お前らの宇宙ってこいつらなんかハムスターに見えるような化け物どもが死ぬほどたくさんいるんだろ?なんで驚くんだ?」
「ああ、その通りだ。・・ああいうのが俺らんとこにはたくさんいる。だから驚いてんだ」
「ん?・・・いや、モンスターは見慣れているんだろう?だったらこの愛らしいvelvety達を見たって驚かないはず・・・ひょっとして可愛いから驚いてると?」
「そーじゃない・・・たくさんいるから、驚いてんだってば・・・」
「・・12匹もいるからか?いや、それはないだろ別に驚くほどの数じゃ・・・」
「違うっつの。俺達の世界にたくさんいるから、驚いてんだよ!」
・・・・数秒間沈黙した後、やっとその意味が理解できた博士達はほぼ同時に息を呑んだ。
「ああ。ああ!このvelvety達がお前らの世界にたくさんいるって意味か!」
「なるほどな、そりゃ驚くわな!・・へえー・・・すっげえ偶然だなあ・・・」
「・・今の言い方ではいささかわかり辛かったよ。そうか、だからこの子たちを見て驚いていたんだね彼らは・・・」
頷きながらテーブルの上に視線を送る博士達を尻目に、ソロは心底うんざりした様子で顔を歪めた。
「スライムだ!カラフルなスライムがいっぱいいる!」
「なんでスライムがこの世界にいるんだ!?」
「しかもなんかちっこい!」
本来人間の膝くらいまでの大きさを持つはずのその生き物たちは、なぜか握った拳ほどの大きさしかなかった。
透き通った色でティアドロップ形の身体に、丸い目と常に微笑んでいる口、そしてすべすべしたゼリーのような質感と適度な弾力を持っている。誰がどこからどう見ても愛らしいその生物は、彼らのいた宇宙では最も有名な弱小モンスターだったのだ。
彼らを見つけるとつぶらな目をぱちつかせ、興味津々と言った様子でしげしげと見つめ始めた。
「か、かわいい。なんだこれ・・・」
「・・・あー、なるほどな・・・スライムはもともと非常に順能力の高い生き物だ。例えばバブルスライムの起源だが、普通のスライムがなんか・・マズって毒の沼地に転落した結果身体が破裂し、液状になってしまった。しかしその状態で生き延びてやがて毒沼に順応したらしい。
たぶんこいつらもこの宇宙に連れてこられて、ここの・・・なんかアレに順応しようとした結果、小さくなったりするよう進化したんだろうな・・・」
「・・進化って、こいつらまだ第一世代だぞ?それは突然変異って言うんじゃないのか」
「いいや、こいつらが生き延びるために自らのアレを意図的にアレしたんだ。それなりに長い時間をかけてな。つっても数十年だが・・・突然変異って言葉は当てはまらない・・んじゃねーかなぁ・・・」
「・・お前さっきから喋りがうやむやだぞ?眠いなら寝た方がいいんじゃないのか?」
「いやあ眠いわけじゃなくて、まあ似てんだけど・・・寝ると血圧が下がって余計ダメになる・・・・くそ・・昨日のうちにやっとくんだったなあ・・・」
「できたての身体だと細胞の経験がリセットされて、ここの物理法則に慣れていない状態に戻ってしまうということかい?」
「ん、そう。大量の熱量と酸素と・・アレが必要。ああ・・・天井が回ってる・・・・・」
ソファに腰を落とすと、息を吐き出しながら背もたれに大きく寄り掛かって呻いた。
「ちっちゃいカラフルスライムかわいいー。ねえねえソロさん、なんでここにスライムが連れて来られたの?」
「あー・・・あの・・・アレがアレを使って・・・なんか・・・こう・・・あーーーー」
「だ・・大丈夫?なんか辛そうだけどどうしたの?」
「嘘だろ!?なんで!?」
「マジかよ・・・!!」
翌日。早朝から、36階のメイン連絡会議室にはなぜか絶叫が木霊していた。
鼓膜が破れるほどの大声の主はMolecule Changer達である。
博士達はソファに座ったまま、そのあまりの音量とあまりの唐突さに言葉を失い何の反応もできずにいた。
・・・というのも、彼らはこの部屋に入ってくるなり突然、どういうわけか叫び始めたのだ。
別段何があったわけでもない。ごくごく平和な朝の時間が流れていただけである。
後からついてきた者も、先に入った者がもう十分に叫んだにも関わらず、いちいち叫ぶ。まるで何かに壮絶なまでに驚いているようにも見えた。
「うえぇぇええぇぇ!?」
「えええぇぇ嘘ぉぉ!?」
・・・そしてひとしきり叫んだ後も何やら慌てた様子で忙しなく言葉を交わしているが、まだソロが来ていないのでどうすることもできない。
「・・・・な・・・・・何なんだ朝っぱらから・・・・。耳がおかしくなるかと思った」
「一体どうしたんだろうね・・・困った。まだソロは起きてきてないのか。というか、そもそも彼に睡眠が必要なのだろうか?」
「・・いらないはずだよな。いつでもどこからでもエネルギー補給できるとか言ってたし」
「あいつまたバックレてんのかよ!通訳がいないと話になんねえのわかってんのか!?」
「誰が通訳だこの野郎・・・」
「うわあ!!」
ベクスター博士までもが大声を出す羽目になったが、ひとまず彼らがなぜ絶叫し続けたのか説明してくれる存在が現れたため、スワードソン博士は安堵して肩を落とした。
「呼ばれて飛び出てやってきたぜ・・・。何か用か?あんまどうでもいいことだったら怒るぞ」
ソロは多少低く掠れた声でそう言うと、眠たそうに目を細めたまま欠伸をした。
「ああその・・・ってか、お前寝てたのか?」
「いや。消えてた。この身体は今作ったばっかのアレをアレして・・・、温度が低くて・・・アレなんだよ。そうそう。で?はあ・・・酸素が足りない」
「あ、ああ。えっと・・・君の仲間達が何かに凄く驚いてるようなのだが、理由として思い当たるものが何かないかね?」
言われてソロがぼんやりと部屋の中を眺める。・・・そして一点に焦点が合うと静止して、・・・そして再び視線を動かそうとするが思い直したようにもう一度視線を戻して二度見した。
「ん?・・・・ん!?」
「・・どうかしたか?」
「・・・いたのかお前ら・・・おい、飛びかかって来るなよ。・・あーもう、言ってるそばから。こら、服に入るな!ったく、ワンは毎朝こいつらに埋もれてたのか?」
目を輝かせながら、小さなすべすべした生物―velvetyと呼ばれている―がソロを見つけるなり、テーブルから飛び跳ねて頭や肩などに乗ろうとした。
「ああ、そうなんだよ。本当にワンによく懐いていたからね・・・面倒で予知していなかったのかい?」
「そんなどうでもいいことまで予知するわけないだろ・・・はぁー。こんなことでいちいち呼び出さないでくれ・・・忙しいんだから・・・」
一体ずつクリアでつまんでテーブルに戻しながら、ソロはため息をついた。
「・・で、あいつらはつまりこれに驚いてると」
「そうだ。・・・ふわぁ」
テーブルの上、ソロを見つめながら嬉しそうにぴょこぴょこと跳ねる小さな生物達を眺めながら、クロウ博士は膝に肘を置き頬杖をついた。
━─━─記録010 英雄たちの休らい
「なんでまた・・・お前らの宇宙ってこいつらなんかハムスターに見えるような化け物どもが死ぬほどたくさんいるんだろ?なんで驚くんだ?」
「ああ、その通りだ。・・ああいうのが俺らんとこにはたくさんいる。だから驚いてんだ」
「ん?・・・いや、モンスターは見慣れているんだろう?だったらこの愛らしいvelvety達を見たって驚かないはず・・・ひょっとして可愛いから驚いてると?」
「そーじゃない・・・たくさんいるから、驚いてんだってば・・・」
「・・12匹もいるからか?いや、それはないだろ別に驚くほどの数じゃ・・・」
「違うっつの。俺達の世界にたくさんいるから、驚いてんだよ!」
・・・・数秒間沈黙した後、やっとその意味が理解できた博士達はほぼ同時に息を呑んだ。
「ああ。ああ!このvelvety達がお前らの世界にたくさんいるって意味か!」
「なるほどな、そりゃ驚くわな!・・へえー・・・すっげえ偶然だなあ・・・」
「・・今の言い方ではいささかわかり辛かったよ。そうか、だからこの子たちを見て驚いていたんだね彼らは・・・」
頷きながらテーブルの上に視線を送る博士達を尻目に、ソロは心底うんざりした様子で顔を歪めた。
「スライムだ!カラフルなスライムがいっぱいいる!」
「なんでスライムがこの世界にいるんだ!?」
「しかもなんかちっこい!」
本来人間の膝くらいまでの大きさを持つはずのその生き物たちは、なぜか握った拳ほどの大きさしかなかった。
透き通った色でティアドロップ形の身体に、丸い目と常に微笑んでいる口、そしてすべすべしたゼリーのような質感と適度な弾力を持っている。誰がどこからどう見ても愛らしいその生物は、彼らのいた宇宙では最も有名な弱小モンスターだったのだ。
彼らを見つけるとつぶらな目をぱちつかせ、興味津々と言った様子でしげしげと見つめ始めた。
「か、かわいい。なんだこれ・・・」
「・・・あー、なるほどな・・・スライムはもともと非常に順能力の高い生き物だ。例えばバブルスライムの起源だが、普通のスライムがなんか・・マズって毒の沼地に転落した結果身体が破裂し、液状になってしまった。しかしその状態で生き延びてやがて毒沼に順応したらしい。
たぶんこいつらもこの宇宙に連れてこられて、ここの・・・なんかアレに順応しようとした結果、小さくなったりするよう進化したんだろうな・・・」
「・・進化って、こいつらまだ第一世代だぞ?それは突然変異って言うんじゃないのか」
「いいや、こいつらが生き延びるために自らのアレを意図的にアレしたんだ。それなりに長い時間をかけてな。つっても数十年だが・・・突然変異って言葉は当てはまらない・・んじゃねーかなぁ・・・」
「・・お前さっきから喋りがうやむやだぞ?眠いなら寝た方がいいんじゃないのか?」
「いやあ眠いわけじゃなくて、まあ似てんだけど・・・寝ると血圧が下がって余計ダメになる・・・・くそ・・昨日のうちにやっとくんだったなあ・・・」
「できたての身体だと細胞の経験がリセットされて、ここの物理法則に慣れていない状態に戻ってしまうということかい?」
「ん、そう。大量の熱量と酸素と・・アレが必要。ああ・・・天井が回ってる・・・・・」
ソファに腰を落とすと、息を吐き出しながら背もたれに大きく寄り掛かって呻いた。
「ちっちゃいカラフルスライムかわいいー。ねえねえソロさん、なんでここにスライムが連れて来られたの?」
「あー・・・あの・・・アレがアレを使って・・・なんか・・・こう・・・あーーーー」
「だ・・大丈夫?なんか辛そうだけどどうしたの?」