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伝説の超ニート トロもず
伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録011

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「・・・・・そうか。・・まああいつがそんなに言うんなら・・・仕方ないんだろうな」

「彼が彼自身を赦すための通過儀礼と言う意味合いなんだね。だがよかった。それは同じく彼が我々の過ちをも赦すということにも繋がる」

「・・事後報告になってしまって申し訳ないわ。でも両手足のものは取り除いておきました」

数十分後、博士達はベルティーニ博士からある報告を受けた。
それは今朝行われた緊急手術についての概要、そして行われた理由。ワンがなぜ、自らの首に埋め込まれ固定された爆破装置の取り換えを望んだのか。

「・・・首に埋め込んだものは本当に最後の手段、絶対的な保険掛けとして機能していたものだったはずだろ。あえてそれをより威力の強い優秀なものに変えることの理由がそれか・・・」

「・・それで彼が彼自身と我々の本当の姿を見ることができるのなら、良い手段だ。5年前以前ともそれ以降とも違う、我々と彼自身が望む存在になると・・・ワンはそう言ったのだね。
ありがとう、ベルティーニ博士。君は本当に・・科学者としても人間としてもよくできたこの上なく優秀な人だ。私はこの生涯の中で君のような仲間に恵まれたことを神に感謝するよ」

ベルティーニ博士はどこか寂しそうに微笑むと、小さな声でスワードソン博士に感謝の言葉を述べた。

「ああ。その点についてはワンは幸せ者だな。きっと君は将来、最高の母親になるだろうね」

クロウ博士が笑いながら言う。

「・・今のところ、誰かの母親になるつもりはないのですけどね。良い母かどうかは別にして、まず私のような女を好いてくれる物好きな男性がいるかどうか、それが問題だわ」

「うん。大抵の男はあらゆる面で君には勝てっこないからな。君自身だって自分より能力の劣る頼りない男に将来を預けたくはないだろ」

「あら、なぜ私がその方に将来を託すのが前提なのかしら。その方が私に将来を託すのよ?」

「はっは、それもそうか!どこからどう考えたってそうだろうな、はははは」

可笑しそうに笑って言い放つベルティーニ博士に感嘆し、声を上げて笑いながらクロウ博士は執拗に隣のベクスター博士の背中を叩く。

ベクスター博士は恨めし気に彼を睨みつけながら無言で耐えていた。


━─━─記録011 煩雑な使命


「・・教会?この世界にも教会があるの?」

「ああ。俺達の知ってるのとは別の種類の神様に祈ることになるが、それでも同じく大きな意味があるししっかり加護も受けられる。ちなみにこれまでの行いを告白する相手としては機能してくれないから、それは代わりに俺が引き受ける。平たく言うと俺がセーブポイントだ」

「せー?・・何だって?」

「まあとにかく、定期的に起きた出来事をまとめて俺に話してほしいってことだ。形式上だけでいい。
どうだ、見学もかねて今から行ってみる気はないか?」 

「・・・お祈り・・・・ボク、行きたいな。いつまでも気持ちが変わらないのも良くないけど、やっぱり・・・忘れないために」

少し申し訳なさそうに願い出たサマルの言葉に、誰もの表情が曇った。
あまりにも辛く悲しい出来事を思い出してしまったがために。そして同時に、悲しみと罪悪感に塗り潰されてしまわぬよう無意識のうちに思い出すのを避けていた自分を戒めた。

「ご・・ごめんなさい。辛いこと思い出させちゃって・・・あの・・・」

「・・俺も行く。決して忘れはしないが、いつまでも罪悪感が心に取り憑いたままだとそれはやがて悪質な毒になる。あの二人もそんなことは望まないはずだ。・・それと・・・純粋に二人のために祈りたい」

アレルも同意した。するとアレフも顔を上げる。

「私も同行させて頂きたく存じます。アレル様の仰った通り、罪の意識に心を喰われ続ければ最悪の場合命にも関わりましょう。二人のためにも、取り除かねばなりますまい」

「・・そうだね・・・僕も行くよ。理由は同じかな・・・」

「オレもだ。放っておいて目をそらし続けても良いことはないよ」

「・・・僕もそう思います。祈りたい気持ちも、罪悪感もみんな同じだけあるはずです。・・・全員で行きましょう、ソロさん」

エイトの言葉に、ソロは神妙な顔で頷いた。

「・・みんなならそう言うと思っていた。それじゃあ、祈りに行こうか。正しく職務を全うしてる神は、あらゆる宇宙の生きとし生けるものに等しく加護と力を与えてくれる。そして思いが通じれば、俺達の宇宙まで祈りを届けてくれるだろう」

そして会話している博士達へ振り返り、声をかけた。

「ちょっと教会に用事がある。悪いが少しだけ貸切らせてくれないか」

「・・ああ、もちろん構わないが。用事というのは?・・我々には明かせないものかい?」

「いいや。これまでのゲームで命を落とした仲間のために祈りを捧げたいんだ。俺達自身で折り合いをつけるためにも」

「なるほど。・・・不躾かも知れないが、我々も共に祈らせてはくれないかね。自己満足にしかならないとは思うが、命の恩人である君達の仲間に追悼の意を表したい。君達と我々とでは少しばかり意味合いが異なるかもわからないが・・・」

「・・・・・そうだな・・・もうお前らは既に仲間を失ってるんだったな。もし俺らみたいな部外者が祈ってもいいなら、気持ちだけでも添えさせてもらえないか?」

ソロは柔らかく微笑み、頷いた。

「ああ、もちろんいいさ。みんなも喜ぶだろう。・・宇宙を隔てての祈りなら、神もきっと感心して快く彼らの魂に届けてくださるだろうよ」
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―エリアN21 カテドラル­­-大聖堂-にて

「・・我らの父、正しき神よ。全てをお救いになる善の神よ。願わくば罪深き我らをお許し下さい。願わくば我らを悪よりお救い下さい。
・・我ら等しく命あるものなり、汝より授かりしこの名において邪神の子を討つをどうか赦し給え・・・」

彼らはみな胸に手を当て、跪いて目を閉じ、一斉に同じ祈祷文を口にしている。聞いている博士達には非常に長い文に思えたが、誰もがその文章を完璧に暗記しているらしく一字一句違わず同じ発音で祈りを捧げていた。

「・・・・命の母なる大地よ、海よ、空よ、そしてそれらを司る精霊達よ。我らに力と希望を与え給え。我らに討たれし尊き命に祝福を与え、その魂を善なる器へと導き給え。
正しき神よ、我らは汝が御心と御名のもとに。全ては限りなく汝のものなればなり」

その文を唱え終わると全員が一度立ち上がり、胸に当てていた手を高く掲げてから両手を合わせ指をたたんで組むと、再び跪く。

「死とは別れ。死とは悲しみ。この永遠の別れと悲しみを忘れることなかれ。
死とは始まり。死とは安寧。肉の器より放たれ永遠となりし善なる魂に永久の安らぎを。今ひとたび、あなた様のご加護を。
あなた様の世界に尽くせし善き使徒に、どうか永久なる祝福と名誉をお与えください・・・」

・・・聖堂内が静寂に包まれる。彼らはしばらくの間微動だにせず、まるで石像のように祈り続けていた。
そして次に、彼らの背後にいた博士達が十字を切り、同じように手を組んで目を閉じた。
代表としてスワードソン博士が聖書の一部を朗読する。