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同調率99%の少女(6) - 鎮守府Aの物語

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 那美恵はこれぞと思って用意してきた策を使う間がなかった。校長に対しては提督のほうが効果てきめんだったのだ。結局素直に自分の感じたまま思ったままのことを話すしかなかった。事前に那美恵は提督に話をすり合わせようと言い、マイナスになる部分は書かないから言わないでとお願いをしていたが、提督はバカ正直に、策を弄するのは嫌いだと言い結局那美恵のその願いだけは聞き入れなかった。この校長に対しては、提督のような誠実さでないと立ち向かえないと那美恵は気づいた。

 那美恵は口から自分に似合わぬセリフを吐き出し続けながら頭の片隅でこうも思っていた。
((結局あたしは提督を自分色に染めて影響を与えるつもりが、逆に提督の影響を受けてバカ正直になってきてる。こうして、学校は違うけど後輩の五月雨ちゃんのいる前でアホみたいにまじめに自分の思いの丈を吐き出しちゃってる。そりゃ真面目な会議の場ではあたしだって形だけはちゃんと振る舞うけど、こんな素直になっちゃうのは本来のあたしじゃない。真面目ちゃんはあたしのキャラじゃないんだよぉ。ちっくしょ〜提督めぇ。いつか絶対、あなた……をあたし色に染めてやる。))


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 那美恵からも思いや考えを聞いた校長は最後まで彼女の言葉を噛み締めてじっくり味わうように、頷いて聞き入っていた。その様子は最初から最後まで変わらぬ校長の態度である。そして校長は那美恵の言葉を評価した。
「そうですか。光主さんの気持ち、大変よくわかりました。あなたのお気持ちは本物のようですね。」
「え?」
 那美恵は聞き返す意図ではないが、一言だけ声に出していた。
 校長は数秒の間を作り、再び口を開いた。
「私の考えでは、正直申しましてあなた方を化物と戦わせることに反対です。そのための許可など学校として生徒に承認することはできません。」
「!!」
 ピシャリと校長は反対の意思を示した。那美恵と提督はビクッとするが、その後の校長の言葉によりこわばらせた態度をわずかに和らげる。

「……でもそれはお二人の言葉を聞くまでのことです。あなた方のお気持ちを聞けて、私は考えを改めようと思いました。」
「校長……!それじゃあ!?」
 那美恵が乗り出そうとすると、校長はその反応を気にせず言葉を再開する。
「えぇ。ですがその前に、私はみなさんに正直に言わなければいけないことがあります。あなた方の気持ちだけ聞いて私のことを話さないのは卑怯ですものね。それに今この時が、きっと話すべき時なのだと思ったのです。光主さん、私が時々みなさんの前で話すお話、覚えていますか?」
 校長が件の話に触れてきた。那美恵は考えていた対策をどうするか瞬時に思い出し始める。が、那美恵の行動を待つ気はない校長は話を続けた。

「あの話はね、実は私の体験談ではなくて、私の憧れの人たちのことなの。」
「憧れ……の人ですか?」
「えぇ。それはあなたもよくご存知で、尊敬している人よ。」
 校長のその言葉に那美恵は一瞬眉をひそめて自身が考えていたことの正解を確認しようと脳裏に思い浮かべる。校長がわずかに口元を緩ませて言及した人物は、那美恵の想像通りの人だった。
「それはね、あなたのお祖母様のことです。」
 校長の口からはっきりと実体験ではない、その体験の主のことを聞いた那美恵は唾を飲み込み、校長の話の続きを待った。

「あなたのお祖母様とその世代の方々の経験は、今の私たちにとってもおそらく大事なことだから、どうしてもどんな形であっても伝えたかったのです。」
「おばあちゃんの経験が……ですか?」
「えぇ。ようやくあなたたちに話すことができます。」

 校長はかつて起こった事件の当事者である那美恵の祖母たちから伝え聞いたことを語り始めた。