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はろ☆どき
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ちょこれいと兄さん【ガン流2 無配ペーパー】

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「あら、大佐。お願いした書類は終わったんですか」
 奥の給湯室からホークアイが戻ってきて声をかけた。
「あ、ああ。至急のものは終わらせた。確認してくれたまえ」
 ロイは焦る必要もないのに背筋がひやりとする。そして、気を取り直して自ら持ってきた書類の束をホークアイへ渡した。
「ありがとうございます。お呼びいただければ取りに伺いましたのに」
 ホークアイはロイの様子を気に留めるでもなく、書類に目を通しながら言った。
「甘い香りが執務室まで届いていたからね。何があるのか気になるじゃないか」
「大佐にも後でお持ちするつもりでおりましたよ。エドワード君達からの感謝を込めた贈り物ですもの。ね、エドワード君」
 ホークアイはにっこりと微笑んでエドワードに話を振る。恐らく先ほどの会話を聞いていたのだろう。そして、どうやらホークアイも店側の主張に乗ることにしたらしい。確かにその方が彼女も恩恵に預かることができる。
「……おう。大佐の分も買っておいてやってるぜ」
 エドワードが目を逸らしながらぼそぼそと言った。照れているのだろうか? 案外、可愛いところもあるじゃないか……。
「そ、それよか、急ぎの仕事終わったんならオレの報告書早く読んでくれよ! すげー待たされたんだからな」
 前言撤回。一瞬でも、可愛げがあるなどと思って損をした。ロイは再び機嫌を急降下させた。
「まったく……自分はさっさと美味しいものを食べておいて、私には休憩無しで仕事をしろということかね」
 すっかり臍を曲げた上官に対して、部下達は「また始まった」とばかりに無視を決め込む。
「だったら、早く食べろよ。ほら」
 さすがに悪いと思ったのか、エドワードはフォンダンショコラとやらが乗った皿をロイに差し出してきた。
「早く食べて、そんで報告書読んでくれよ」
 ロイはエドワードの両手を見比べる。右手にはケーキの乗った皿、左手には食べかけのケーキとチョコの付いた生身の指。
「ふむ。ならば遠慮なく」
 そう言うと、ロイはエドワードの左手首を掴んで顔を寄せ――食べかけの欠片と指についたソースをぺろりと舐めとった。
「あまいな……」
「う……? ぎゃーっ!」
 一瞬の間の後、エドワードの顔がボンっと真っ赤に爆発し、叫び声があがった。
「た、たいさが、オレのゆび、くった? や、オレのケーキ食った! いやおれのゆびなめたぁぁ……!」
 狼狽えて大混乱状態のエドワードを見て、ロイの溜飲が下がる。なんとも大人げない、と言わんばかりのホークアイの冷めた視線が突き刺さるが気にしない。
「ご馳走さま。美味かったよ。お礼にこれからすぐ報告書を読んであげよう。私の分のケーキをあげるから、待っている間に執務室で食べたまえ。あ、中尉、後であちらにお茶を持ってきてもらえるかな」
 ロイはエドワードの持っていた皿を片手で掬い取り、もう片方の手で騒ぐエドワードの背を押しながら、あっという間に司令室から退場していった。


 後に残るのは嵐の後の静けさと何故だか甘ったるい空気。
「あれ、このパターン前にもあったような……」
 アルフォンスがぽつりと呟いた。
「……紅茶を入れましょうか。うんと渋いのを」
 気を取り直したホークアイが誰にともなく言うと、給湯室へと向かった。
「アイ、マム……」
 ホークアイの言葉に異論のある者などもちろんいない。むしろ甘い菓子より渋い紅茶を先に飲みたい気分の面々であった。



 ある季節行事の日、東方司令部の一角で起きた美味しいけれど胸焼けするような甘い一幕だった。



――完――


2016/2/7 presented by sora ✤ halodoki