ドラクエ:Ruineme Inquitach 記録015
「お・・おう。そうする・・・」
・・・・レックが横になったのを見届けて、エックスは静かにドアを開けてオフィスを出た。
・・片手で鼻と口を押さえ、深呼吸をする。視線が泳ぐ。
泣きそうになりながら、来た道を戻っていった。
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突然サマルの視界に入ったのは、猛スピードで迫りくる地面だった。
「っ!?」
受け身を取る暇すらなく、頭から土に激突する。息が詰まるような感覚と鈍い激痛に耐えつつ、サマルは現状を把握しようと必死に頭を働かせる。
・・ここは、どこだ。おかしい。目の前にはレンガでできた壁があり、剣と盾がかけてある。小さな小屋だ。その時点で、サマルは自分が今いる場所は現実ではないのだと悟った。
もうこの現象にも慣れてきた。ソロから聞かされたのは、自分に“平行世界の記録”が見える能力が身についてしまったということ。自分の意識と、別の平行世界の記録が同化してしまうのだ。彼曰くレックと共にソロの感情に干渉したことで、ソロを構成しているひとつの要素である“平行分岐”の特性が移ったのだと言う。
難しいことはよくわからないし理解するつもりもない。だが、意識だけとはいえこう何度も勝手に別の世界に飛ばされるのは疎ましかった・・・・最初のうちはそう考えていた。
(・・・・アレン、ムーン。この世界ではまだ生きてるのかな・・・・)
第一ステージで失ったかけがえのない仲間。彼らが動き、喋り、笑う姿をもう一度見られるかも知れない・・・気付いた時には、ついそんな期待を抱いてしまうようになっていた。
実際何度かはそれが叶った。いつまでも悲しみと後悔を断ち切れずにいる自分に腹が立つこともあったが、サマルは生きた彼らを見るたび、その時の自分の感情を噛み締めるたび思い知らされた。
自分はまだ、生きて戦い続けるよりも彼らのもとへ行くことを望んでいる・・・。
認めるしかなかった。
(・・・ここはどんな世界なんだろう。殺し合いが起きているのかな。前の時みたくみんなで仲良くしてる世界だといいな・・・。アレンもムーンもいて、みんなでやったトランプ楽しかったなぁ・・・)
そんなことを考えながら座ったままぼんやりしていると、突如背後から強い風が吹き付けてきた。熱い。熱風だ。・・これは・・・魔法?
「!!」
気付いた時にはもう遅く、巨大な火球がサマルの背中に襲い掛かりその小柄な体を埃のように吹き飛ばす。またしても地面に激突し、サマルは泣きたい気分で先程まで夢見ていた平和な光景を頭から排除し、諦めた。
ここは穏やかな世界ではないようだ。
(・・・痛い・・・。ボクは今誰かに追われてて、たぶん隠れるためにここに入ったんだ。そしてもう見つかってる。・・・いっそのことあっという間に殺してくれたらいいのに。そしたらみんなが苦しそうに戦ってる姿も見なくて済むんだから・・・)
・・戻りたい。現実に。一度平行世界の記録に飛ばされてしまったら、そこで命が尽きるかゲームが終わるまで現実世界には戻れない。
この記録の世界の中で何時間、何日、何か月と時間が経とうとも、現実ではそれはほんの一瞬の出来事になる。既に戦いが発生している世界に飛ばされたのならもうそれは地獄以外の何物でもない。
・・・頭がおかしくなりそうだった。
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