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行軍また行軍

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酒木溝六。

名前もあやしいが、素行はその数倍あやしい体育教師。
さすがに、授業中にとっくりを抱えていたりはしないが、24時間、365日アルコール臭と縁の切れない人物である。ジャージを着ていればまだ、マシ。
ステテコ姿で校内を闊歩する事もめずらしくない。
にもかかわらず教員免許を持っているというのが、麻黄第13中学の七不思議のひとつだった。
当然、父兄からは顰蹙の嵐。その不潔さとだらしない行動から女子生徒にも嫌われ抜いている。
品行の悪さがたたってか、かつて一度だけ、生徒への猥褻行為が疑われた。
追求されて、本人いわく、「俺は胸と尻がデカくてウエストのくびれた女が好きだ。ガキには興味ねぇ」
さらに、「金髪のオネーチャンなら、なおいいな、ウェルカム」と付け加えるに及んで、クビは時間の問題と思われた。
その後、ただの噂だった事が判明して、はからずも身の潔白が証明されたのだが。一部の父兄や教員からは、火のないところに煙がたつはずがない、と睨まれ続けた。
そこまで悪評紛々の彼を教職にとどめていたものは何かと言えば、問題児の扱いが異様にうまかったことである。
どぶろくに言われたからといって、問題児たちは髪を染め直したり、制服の改造をやめたり、喫煙をやめたりはしなかったが、授業や学校行事に参加するようになり、集団生活を営むことを厭わなくなった。
なかでも伝説的なのが、蛭魔妖一との邂逅である。
蛭魔妖一が抜群に切れる生徒であることは誰もが認めていた。が、破天荒な言動は、もはや不良の域を完全に越えていて、「非行少年」とか「問題児」という形容がすべて当てはまるには違いないものの、それだけでは到底括りきれず、しかも指導すべき立場の教師より事物に精通していて、処世術に長けているとあっては、誰も何も言えなかった。
しかし、どこをどうしたものか、どぶろくだけはヒル魔と対等に接し、ときとしてはヒル魔をしかりつけることさえしてみせた。
どぶろくは一躍「伝説の教師」と(一部でこっそりと)呼ばれるようになった。
多額の借金を抱えて、逃亡同然に渡米するまでは。
作品名:行軍また行軍 作家名:相原 亮