神の真意を汲む化石
天使の秘密
暖かな日差しの下、公園の片隅で雑談中の年少組守護聖が三人。
「なぁおめーら、どっちだと思う?」
ゼフェルがメカチュピの改造をしながら、他の二人……ランディとマルセルに問うた。
「うーん……俺はクラヴィス様じゃないかなって思う」
ランディは芝生の上にごろりと横になっている。
「えーっ、ぼくはルヴァ様だと思うなあ。結構前から原石集めてるんだって言ってたよ」
チュピ(本物)を手から手へ乗り移らせて遊んでいるのはマルセル。
「オレもどっちかってーとルヴァだな。アンジェリークの部屋であの棚だけ違和感バリッバリだかんな」
「あー、私がどうかしましたかー?」
突然現れたルヴァに全員が驚く。
「うわ! いや、なんでもねーよ。こっちの話」
驚いた余りに工具を取り落としそうになっているゼフェルを尻目に、ランディが寝転がった姿勢からさっと起き上がり挨拶をする。
「こんにちは、ルヴァ様! お散歩ですか?」
「はい、こんにちはー。ええ、今から散歩がてら王立研究院へ行こうと思いましてねー」
いつも通り穏やかな調子のルヴァに、マルセルが何かを思い出したように口を開いた。
「あ、そうだルヴァ様。あとで執務室にお花届けてもいいですか? チューリップの新種が咲いたんです」
「おや、マルセルが品種改良していた花がとうとう咲きましたかー。良かったですねえ」
ゼフェルがよしできた、と言ってメカチュピを起動させた。今度はピュイー、と鳴き声のおまけつきだ。
急に動き出したメカチュピを威嚇して、くちばしが開きっぱなしのチュピをマルセルがなだめた。
「ちょっとーゼフェル! チュピがびっくりしてるでしょ!」
「びっくりじゃなくて怒ってんだろ、完全に。……で、オッサンは研究院に行くんじゃねーのか」
とっとと行かなくていーのかぁ? と呆れたように言うと、ルヴァがはっとした顔になった。
「あ、ああ、そうでした。では私はこれで」
ルヴァの姿が見えなくなったのを確認して、三人は一斉に息を吐いた。
「……セーフ」
メカチュピを停止させながらゼフェルが呟いた。
「ふー、ちょっと驚いたな。さてと、いい時間だし俺そろそろ執務室に戻ろうかな」
「まさかアンジェリークの好きな人はどっちとか言えないよねー。ぼくももう戻るよ、バイバイ」
年少組と別れた後、ルヴァは先程耳にした事柄について物思いにふけっていた。
(アンジェリークの部屋の棚がどうとか言っていましたね)
ということは、彼ら三人はアンジェリークの部屋へと招かれたことがあるのだろうか。
自分はといえば、毎日のように一緒に過ごしているのにいまだに部屋に入れてもらったことがない。
なんだかんだと公園や湖、執務室で逢ってばかりだ。
若い女性なのだし、男を連れ込んでいるなどと妙な噂になっても困るのだろうと思って納得していた。
(……でも、彼らが許されていて、私には許されていないだなんて)
些細なことのはずなのに、何故だかちくりと胸が痛む。
とぼとぼと歩いていた足が止まる。
(考えていても仕方のないことです。気になるならアンジェリークに訊けば済む話)
まずは……この後執務室に花を持ってくるであろうマルセルから話を聞き出してみることにした。