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こらぼでほすと 七十数年後の話

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寺の居間で、猫の相手をしていた。そろそろ年寄りの猫なので、背中を撫でてやると、ゴロゴロと鳴くぐらいで、昔のようにオモチャで遊ぶほどではないのだが、何かしら話しかけていないと、心配そうに顔を上げる。そこが可愛いといえば可愛い。
「今日は、散歩でもするか? ちょっと寒いから毛布に包んでやるからさ。」
「・・・うにぃー・・・」
「おまえも、たまには外の景色を見たほうがいいんじゃないか? 気分転換ってやつだ。」
「・・・うっうにぃーうにゃうにゃうにー・・・」
「面倒だって? だっこしてるんだから面倒も何もないだろ? 梅が咲いてるよ? もしかしたら、ホトトギスが来るかもしれない。・・・あ、今夜はササミにするか? おまえさん、ササミを食べてないだろ。」
 と、猫との会話を楽しんでいたら、外から、リジェネが戻って来た。ただ足音は複数だ。誰かと連れ立っているらしい。今、寺にはリジェネとニールしかいない。亭主と亭主の連れ子は、本山に出向いている。パタパタと廊下を歩く音がして障子が開いた。
「ただいま、ママ。あのね、僕、メンテナンスでヴェーダに戻ることになったんだ。」
「いつ? 」
「今から。それで、ママを拉致して欲しいってリクエストがあって、僕の代わりにティエリアが拉致してくれる。」
「はい? 」
 入って、と、リジェネが声をかけて、後から沙・猪家夫夫とティエリアが顔を出した。いらっしゃい、と、ニールが立ち上がる。ティエリアは、ニールにバフッと抱きついた。
「僕らは留守番です、ニール。あなたが拉致されるそうなので、猫の話し相手と世話をさせてもらいます。」
「はあ、まあ、どうぞ。温かいものでも。」
「ママニャン、俺、お湯割りで麦。」
「僕は、ほうじ茶で。」
「ティエリアは? ミルクティーか? 」
 抱きついている紫猫は、こくこくと頷いている。リジェネはカフェオレと予想して台所で準備する。
「急がないとマズイのか? リジェネ。」
「僕は、それほどでもない。キラは、なるべく早くって言ってた。」
 その言葉で、あーとニールは納得の声を出した。プラントからのお呼び出しだ。まあ、確かに、年数的には、そろそろだとは思っていた。
「・・・そっか・・・」
「猫は、悟浄と八戒が面倒をみてくれる予定。それでいいかな? 」
「しょうがないな、まだ、あれはピンピンしているから、大丈夫だろう。今夜の便で、オーヴか? 」
「うん、僕は、軌道エレベーター経由になるから、ティエリアと一緒に行ってきてね。」
「わかった。」
 何度か、こういうことはあるからニールも慣れている。キラからの場合は、予想がついているから断ることはない。そういう意味の呼び出しだ。飲み物を用意して、こたつに運ぶと、悟浄が猫の相手をしてくれている。
「おまえ、ちっとは歩け。ママニャンみたいに、だっこして散歩とかしねぇーからな。」
 ぐりぐりと背中を揉まれて、迷惑そうにしているが猫は逃げない。構われるのが大好きな猫なのだ。
「事情は、だいたいわかってます。ちょうど、三蔵たちが遠征中で、よかったですね。」
「いや、こういう時は、何も言いませんよ、八戒さん。もしかしたら、知ってたのかもしれません。今回は、長いとか言ってたから。えーっと、しばらく、うちで生活してもらえるんですか? 」
「ええ、そのつもりです。うちは、どこで暮らしても困らないし、店の時は、猫も連れていくことにします。店なら、誰か構ってくれるだろうし。」
「お願いします。鐘は自動なんで放置してください。」
「了解です。今年の桜は見逃しそうですねぇ。」
 毎年、寺の境内にある桜が咲く。春は、いつも、その下で花見の宴会をしているが、今年は無理そうだ。八戒は、寂しいですね、と、目で語っている。ニールも、それに視線で合図した。
「そうでしょうねぇ。・・・・これも連れて行きたいけど、もう年寄りだから無理なんで・・・・すいませんが、お願いします。」
「そうですね。猫は家に憑く生き物ですから。」
 子猫なら、なんとか連れて行けるのだが、成人して十年もすると猫も年を取る。そうなるとシャトルの離陸の衝撃なんかでショック死する場合もあるから、ニールも連れて行けない。まあ、寺に滞在してもらえれば、猫も寂しくはないだろうから、それほど気に病まなくてもいい。
「ママ、今夜の夜のシャトルを手配しているから、一時間くらいで出発。」
「了解、リジェネ。それで、ティエリアは、どうして無言なんだ? 」
「さあ? 久しぶりだから体温を感じてるんじゃない? ティエリア、旅程はデータで送ったからチェックしてね。空港までは一緒だけど、あとは任せるよ? 」
「わかっている。」
「ママ、すっかり世間知らずさんだからね。手を握ってないと迷子だからね? 」
「大丈夫だ。ニールの取り扱いは慣れている。」
「・・・おまえら・・・ひでぇーな・・・」
 特区の西に住んでから、ニールは単独で、どこかへ行くことはない。常にリジェネが付き添っている。なんせ、ここから出れば、まったく最先端技術の世界だ。こののんびりした人外の空間にいるのと、外の人間界は違うものになっているから、出歩くのも面倒になってしまったのが原因だ。

 これといって荷物の必要もないので、簡単な手荷物を用意した。それから、悟浄の膝で寛いでいる猫を撫でた。
「ライル、すまないが留守番を頼む。時間は見当がつかないんだ。ごめんな? 」
 猫の名前は、亡き実弟の名前だ。それまでは、セツナという名前を代々つけていたが、刹那当人が遠い仕事から戻ったから、その当時、健在だった実弟が、「これからはライル。もしメスならアニュってつけろ。」 と、命じたからだ。
「俺のダーリンは、当分、元気だ。同じ名前ばかり呼んでたら飽きるだろ? 」
 と、生きていた実弟は言ったのだが、それは自分の名前のほうが呼ばれなくなるのが先だと知っていたからだ。だから、ニールは、赤茶色の猫にライルと名付けた。甘えん坊で構わないと拗ねるという面倒な猫だが、どこか実弟のようで、甘やかしてしまう。
 猫は、じっとニールを眺めて、ニャーと鳴いた。待っててやるよ、と、ニールには聞こえて微笑んだ。



 プラントに行くには、オーヴからのシャトル便が一番早い。夜の便に搭乗すれば、翌日の夕方には到着する。ティエリアは、ヴェーダから降下したので、宇宙へとんぼ返りだが、それは気にしなくていいと言う。たまには、プラントにも行きたいと思っていたから、好都合だとおっしゃった。
「キラは引退はしているが、中枢の情報は握っている。そちらと打ち合わせをさせてもらうから、あなたは気にしなくていい。」
「まあ、そうしてくれると助かるよ。」
「刹那は、今、半分趣味になっている世界放浪に出ているんだ。一応、メールはしておいたから、いずれプラントに顔を出すだろう。」
「おまえさんが付き合えるだけの時間で結構だ。組織からの呼び出しがあれば戻ってくれていい。」
「いや、それには及ばない。そちらはリジェネが担当してくれる。・・・一年ほどは有給休暇扱いだ。」