たてがみに傷
僕に向けられたのは、温かい抱擁だった。
いつまでも頬に痛みは無くって、痛みのかわりに温かい体温が伝わってきた。
「こんな血迷ったことするなんて、きっと何かに追い詰められてたあるな。気付いてやれ無くってごめんある」
ああ、きっと日本くんとかはこんな風にされて育ったのか。やさしくて、あたたかくて、落ち着くんだ。
そして同時に、今しようとしていたことの重大さを遠回しに教えてくれる。目からつう、と一筋涙がこぼれた。
「・・・・・・落ち着いたあるか?次からこんなことはしないよろし。さて、我もいい加減にこれ痛いある。ほら、ここなんか血で赤黒く変色してるある。気味が悪いある。」
「本当、だね。血だ」
地面には中国くんの血が垂れて、そして時間が経って赤黒く変色していた。
「よし、我の家にちょうどいい薬が入ったある。塗ってやるから家に来いある」
中国くんは僕のマフラーを拾い、家へ招いてくれた。