たてがみに傷
自分のわがまま、勝手で中国くんに迷惑をかけた。たくさんかけた。中国くん以外にも迷惑をかけたのはいっぱいいるけど、一番迷惑かけちゃったかなって、反省してる中国くんに喜んで貰おうと思って。
今まで中国くんが僕を本気で殺そうと、憎いって思ってたのは知ってる。あの時だってその時だって。あの鋭い目つきで、僕のことが心底憎いと思っている目で下からにらみつけるんだ。
今から起こる出来事は、お詫びと反省と君へのプレゼント。笑顔で受け取ってくれると嬉しいです。
僕は中国くんの目の前で、ポケットナイフを広げ、じりじりと首へ近づけていった。3ミリ、2ミリ、1ミリ。今、首に軽く、触れた。細長い傷口から、血が一筋垂れていったのを感じた。
ほんの少しの高揚感。僕はそれに身を任せ、ナイフを持つ手に力を込めた。
「何ばかなことやってるあるかッ!」
ナイフを持つ右手を凄い力で押さえられ、中国くんは反対側の手で僕からナイフをするりと取り払い、ナイフは地面をくるくると回りながら落ちていった。ナイフを持ったその手は切れ味の良い刃に触れて血だらけになった。
中国くんは綺麗な右手で腰からなたを抜いて自分の首に当てた。
「いいあるか、ようく聞いておけある。我はお前のことは好きでもないあるが、嫌いでもないある。そんな奴にいきなり目の前で死なれてもただトラウマになるだけある!それと、次こんな血迷ったような事しようとしたら、お前の手を汚す前に、我がこの鉈でお前の喉笛をかっきって、その後我も首を切り落とすある。分かったかこのおろかものがッ!」
そっとなたを下ろし、地面へと投げ捨てた。そして中国くんは左手でぐうを握り、僕の頬へ向けた。ああ、殴られるんだな。良いことしようと思ったのに。僕はそっと目を閉じた。