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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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第88章 アネモスの大戦、聖騎士の誇り


 天界の三人は、かつての敵と対峙していた。
 デュラハンの配下であった者達が傀儡となって彼らに立ちはだかっていた。
 それらはスターマジシャン、ビーストサマナー、そしてかつてのデモンズセンチネルの姿をしている。
 瞬間、二本の剣閃が煌めいた。
 どす黒い煙をまるで血のように噴き上げて、ビーストサマナーの姿をした傀儡は倒れた。そして煙と共にその身を霧散させていく。
「ふん、相手にもならないわね」
 ビーストサマナー本体をも両断したメガエラにとっては、偽物の力など全く取るに足らないものだった。
「うおっ!? コイツ……!」
 快勝を遂げたメガエラの横で、アズールは槍を持って傀儡の放ったボールを相手にするのに戸惑っていた。
 スターマジシャン本体が生きていた時に比べ、ボールは特殊な力を持たず、ただその身で体当たりしてくるだけであったが、なかなか素早く、アズールは翻弄されていた。
「くそっ……! おわっ!?」
 剣閃が煌めき、ボールは分断される。
「こんなボールごときに、何を手間取っているのよっ!?」
 メガエラがボールの背後に回り、それを斬りつけていた。しかし、ボールはアズールの眼前まで迫っており、切っ先がアズールの顔寸前まで向けられていた。
 アズールは一瞬、全身の血が引いたような感覚を覚えた。
「あああ、危ないやないかメガエラさん! オレの首まで飛ぶとこやったやないか!?」
 メガエラは全く悪びれる様子もなく、大きく鼻を鳴らす。
「こんなところで立ち止まるようじゃ、デュラハンに勝つどころか近付くこともできないわよ」
 言ってようやくメガエラは、アズールに向けていた切っ先を下ろした。
「……せやけどオレ、あんまり荒事は得意やないし」
「それはその姿での事でしょ。その槍、飾りじゃないんだったら全力で振るいなさい。次は助けないわよ」
 二人が話している間にも傀儡は真っ黒なボールを出し、アズールに向けて放ってきた。
 メガエラは後退し、アズールの後ろに立つ。ボールは全てアズールに向かう。
「おおっと!」
 アズールは槍を横薙ぎに振り、ボールを全て断ち切った。
「……ふう、しゃあないな、めっちゃしんどいからホンマは使いたないんやけどな」
 アズールは大きなため息をつきながら槍を振り回し、背後に構えた。
「メガエラさんの言う通りや。ここで止まってたらいつまでもイリス様助けられへんしな、やったるか……」
 スターマジシャンの傀儡はまた新たにボールを召喚していた。そしてそれらを、アズールの全方位を固めるように展開する。
「いくで……!」
 アズールは迫り来るボールに慌てることなく、矛先を地面に突き刺した。次の瞬間、アズールの槍から凄まじい勢いで水柱が上がり、アズールに迫っていたボールは昇る水柱に巻き込まれ、天井に激突して壊れた。
 アズールが地面から槍を抜くと、大量の水を含んだ水柱の噴出が終わった。そしてアズールは間髪いれずに、頭上で槍を大きく回転させた。すると強風が吹き始め、風は空中の水を四散させて辺り一体を嵐のようにする。
 バチバチと音を立てて降り注ぐ横殴りの雨が、傀儡の動きを止めた。アズールはその瞬間を見逃さない。
「スコール・キャプチャー!」
 アズールが矛先を傀儡へ向けると、周辺に激しく降り注ぐ雨が傀儡を覆うように凝縮された。
 大雨が凝縮された空間はすぐに大量の水で満たされ、地上でありながらあたかも、水中にいるように傀儡を溺れさせた。
 このまま放っておいても溺死させる事ができそうであるが、アズールは槍を立てて何やら念じている。
 そしてアズールは青い光に包まれると、彼の手首や足首に存在する、彼の本来の姿である水竜の鰭が大きくなり、両腕に鱗が出現した。
「これで終いにしよか……!」
 アズールは黄金色に光る目を向け、傀儡へ槍を突き出して突進する。
「スラスト・オブ・アズライト!」
 矛先が空中に存在する水の空間に触れると、水泡を弾くようにその空間を破裂させた。
 凝縮された空間の水は一気に噴き出し、アズールに降りかかった。その瞬間、アズールの首部分が水竜のものに変化する。
 アズールは傀儡の上半身に噛み付くと、そのまま引きちぎった。
 アズールは噛みちぎった胴体を食らうことはせず、脇へと吐き捨てた。上体を失い、残った下半身はそのまま力なく崩れ、大量の血を噴くような黒煙を上げて消えていく。
 やがて水の力を失ったアズールは、人型へと戻った。
「くあーっ! アカン、肌がカピカピやわ!」
 水中にいることしかあり得ない水竜の姿を、一瞬とはいえ地上で取ったために、アズールの肌から水分がかなり奪われてしまった。
 アズールは乾燥した肌の痒みに喘ぐ。
「アカン、アカンて! メガエラさん、乳液でも持ってへんか!?」
「そんなもの持ってるわけないでしょ。私をなんだと思ってるのよ?」
「女神様やから持ってるかと……あー! 痒い!」
「私は仮にも女神、そんなものはむしろいらないのよ……」
 天界に存在する女神は、例外なく美しい姿を保っている。それはミューズと呼ばれるの美の女神による美化の魔法のおかげであった。
 メガエラも同じようにその加護を受けており、化粧の類なしに、しかも戦いにしか自らの価値を見いだせない彼女が、きれいでいられるのはそのためだった。
「そんなことよりも……」
 メガエラは不意に、アズールに剣を向けた。
「わっ!? 何するんや!」
「あんたの力、気に入らないわね。全力で行けとは言ったけど、あの力……私を超えるものじゃない」
「あー、その……」
 メガエラの本性が表れてしまっていた。アズールはそれを察し、上手く言葉を取り繕うとする。
 メガエラは自らを復讐の女神と称する神である。力で自らを上回る者を許すことができず、それを見つけては叩き潰さずにはいられなかった。
 しかし、イリスだけは別であった。
 メガエラは嫉妬深い性根の持ち主であるが、完全に敵わないと分かった相手には敬意を表する。そのためにイリスを守護する役目を担っていた。
「どうなのよ、アズール? 場合によっては確かめさせてもらうわよ」
 殺気立つメガエラを刺激しないよう、アズールは慎重に言葉を選ぶ。
「あれは、その……水竜としての力は水の中でないと発揮できへんし、そもそもメガエラさん水中向きやないやろ? せやから、地上戦やったらオレが勝てる要素はないと思うで?」
「ふん、言い訳がましいわね。何だか上手いこと言いくるめられたような感じがするけど……」
 メガエラはひとまず剣を下ろした。
「まあいいわ、今はあんたに構ってる時じゃないし」
 メガエラは視線を別の方向に移した。
 そこには、先程起きた室内での豪雨に目もくれることなく、戦い続ける騎士がいた。
「後一体残ってるしね。しかもあの様子じゃ苦戦してるみたいだし」
「こりゃアカン、加勢するで、メガエラさん!」
「待ちなさい」
 メガエラはアズールを止める。
「メガエラさん、どないしたんや? ユピターさんやられてんの指くわえて見てろ言うんか!?」
「私には分かるの。ユピターは復讐をなそうとしている……」
「復讐やって!? 一体何の……」