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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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 メガエラの復讐の女神という二つ名は伊達ではなかった。彼女には復讐を遂げようと思っている者の気持ちを感じとることができた。
 ユピターが相手にしている傀儡は、彼と因縁浅からぬ関係があることが見て取れた。
「彼には彼の思いがある……ともかくこの戦いに手出し無用よ。いざというときまで……」
 メガエラは両手の剣を消滅させた。
 戦いが全てというメガエラが剣を下ろしたということは、アズールにかなりの衝撃を与えた。そして同時に、ユピターにとってこの戦いがどれほど重要なものなのか考えさせられる。
 アズールも武器をしまった。
「ユピターさん……」
 メガエラをして手出し無用と言わせたユピター戦いを、アズールは不安げに見守るしかなかった。
 ユピターが対峙していたのは、痩身でくしゃくしゃの頭をした姿の傀儡であった。
 この部屋にて待ち受けていたのは、いずれもデュラハンの配下であった者達の成れの果てであった。
 メガエラとアズールがそれぞれ当たっていた傀儡は、スターマジシャン、ビーストサマナーの姿をしていたので、その例に則れば残りはデモンズセンチネルということになる。
 しかし、デュラハンが復活すると同時に復活したデモンズセンチネルはヒースという、かつて天界にあった聖騎士団の副長をしていた男であった。
 そしてヒースはシンに敗れた後、世界を覆う瘴気を残りの命を懸けて振り払い、今は存在ごと消えてなくなった。
 ヒースの剣にされていたユピターにはよく分かっていることである。
 そして、ユピター、及び天界の者ならば忘れもしないデュラハン侵攻の時、聖騎士団団長であったユピターは、部下から衝撃の事実を教えられていた。
 デュラハンの手先と思われる者が、天界の町外れにある湖の近くに現れたという事だった。そこにはヒースの恋人、マリアンヌが住む家があった。
 この報せを受けたヒースは、伝令の制止も聞かずに飛び出していってしまった。
 この事実は、すぐにユピターにも伝えられた。同時にユピターはえもいわれぬ嫌な予感に包まれた。
 それ以来、マリアンヌの死亡が確認され、ヒースは消息を絶った。しかしその後、魔物を見ればすぐさま倒し、天界の精鋭が向かえばやはり息の根を止める、敵味方の区別なく戦う謎の剣士が出現した。
 不気味な仮面に顔を隠し、無差別に殺戮を繰り返す狂戦士かと思われながら、なぜかその戦士は自分より弱い者を斬るようなことはしなかった。
 まるで、デュラハンら魔族に強い恨みを持ち、彼らを討ち果たすために自らの力を高めようとしているかのような戦いぶりだった。
 そんな仮面の剣士の目撃例が出てから少しの時が過ぎた頃、その剣士はユピターの前に現れた。
 鉄仮面で完全に顔が隠れていたが、ユピターは件の剣士の正体がすぐに分かった。
 左手に剣を持ち、流れるような動き、速さで相手を斬る。そのような技術で立ち回る男を、ユピターは一人だけ知っていた。
 仮面の剣士の正体は、消息を絶っていたヒースだと、訓練で何度も戦ったユピターには分かった。
 その後ユピターは、デュラハンの手先となってしまったヒースに敗れてしまった。しかし、その時の戦いにより、これまでの連戦で消耗していたヒースの剣が折れた。
 そして不思議な力で魂を剣に変える道具により、ユピターは一命を取り止めたものの、彼の剣にされてしまったのだった。
 時は巡り、ユピターはヒースを陥れた者との邂逅を果たしたのだった。
 文才がさほどない自分でも、よく分かる筋書きであるとユピターは思う。
 ヒースの恋人マリアンヌは、今ユピターが対峙する傀儡が生きていた時、それに殺され、怒り狂ったヒースが傀儡となった者を打ち倒した。
 そして憎しみに包まれるあまりに、その心をデュラハンに付け入られ、彼の配下にされてしまったのだ。
 憎しみを仮面で覆い隠しながらも、ヒースは戦い続けてきた。もう決して戻らないマリアンヌの仇を討つために。
「先代のデモンズセンチネルよ! 私は貴様を断じて許しはしない! 消えていった友のため、貴様は私が必ずや討ち滅ぼしてくれよう!」
 様々な思いを巡らせユピターは、デモンズセンチネルを討つことを宣言する。
「行くぞ!」
 ユピターは傀儡に向かって斬りかかる。
 しかし、怒りで力の入ってしまった剣は、傀儡を断つことができない。
 デモンズセンチネルの傀儡の反撃が迫る。
 ユピターは身構えて迎え撃とうとする。しかし、傀儡の動きは予想できないものであった。
 傀儡は、持っているサーベルを突き出してきたかと思うと、刃を返し、ユピターの横に入りながら斬りつけてくる。
「くっ!」
 まるで型のない剣は見切るのが難しく、ユピターは肩を掠められてしまった。
 返しの一手を打つものの、傀儡は驚くほど身軽な動きで後方に回転し、それを避ける。その動きはさながら、剣を片手にした猿のようなものだった。
 その猿のような動きでユピターを撹乱しようとする傀儡であるが、ユピターも踊らされるばかりではなかった。
 いかに巧妙な攻め方をしようとも、剣を扱う以上攻撃の方法は限られている。振って斬りかかるか、突き刺しにかかるかのどちらかしかない。
 ユピターは、相手の攻め方の癖を見抜こうと、後手に回って探りながら戦う。すると、だんだんと相手の癖が見えてきた。
 刺突に優れたサーベルであるが、傀儡はそれを刺突にではなく斬撃にばかり集中させている。
 常に左右に揺れる剣先は付け入る隙がないように見えるが、実際には隙が多く、刺突を受け流す方が遥かに難しい。
 それにも関わらず、傀儡は振り乱すだけで、刺突に利用しようとは考えていないようだった。
 左右斜めに振り回される剣に、ユピターは次第に慣れてきた。そしてついに、ユピターは傀儡の攻め手の隙を見出だす。
 そしてユピターは、傀儡がサーベルを振り上げた瞬間の隙を突いた。
「見切ったぞ!」
 ユピターは、刃が降り下ろされてくるのと同時に剣を振り上げて、傀儡の攻撃を弾き返した。
 傀儡は後ろに大きく崩され、両手を上げて大きな隙をさらす。
 そこへユピターは切っ先を向けて構え、刺突によって勝負を決めようとした。
「覚悟!」
 ユピターの突きで勝敗が決する、そのはずだった。
 多大な隙をさらして防御できないというのに、傀儡は不気味に笑っている。
――こやつ、何を笑って……?――
 ユピターが思わず疑念を抱いてしまったその時である。
 傀儡は後ろに崩されたまま倒れ、サーベルを地面に刺して両手を地につけると、腰を抜かしたような格好になった。
 そして更に、地面に寝転ぶと、手をバネにして跳ね起きた。それと同時に両足をユピターに向けて放った。
「ぐほっ!?」
 ユピターは両足による蹴りを腹部に受けてしまい、その勢いのまま、先ほど傀儡にやったような格好にさせられた。
 ユピターを崩すと傀儡は、地面に突き刺したサーベルを抜き、腰を落としたユピターめがけて降り下ろした。
 ガキンッ、という鋭い音が辺りに響く。ユピターは頭すれすれの所で傀儡の攻撃を受け止めていた。
「く……」