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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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第90章 真実との邂逅


 一面が真っ白に包まれた世界。
 空は雪の降るような白に満ちており、どこまで見渡しても色がない。
 地面には、空や大地と同じ色をした花が咲き乱れている。
 花は、常に吹き付ける風に揺さぶられ、その花弁を空に巻き上げていた。
 舞い上がり、そしてひらひらと地面に落ちて行く様子は、まさしく雪が降り積もるような光景である。
 全てが白い花園の中、少年が横たわっていた。一見するだけでは、生死を判別するのは難しい事であったが、ゆっくりと起伏を繰り返す腹部を見る限り、少年は死んでおらず、ただ眠りについているだけであった。
 眠る少年の側には、もう一人の少年が立っていた。
 なんとその少年は、花の上で眠る少年と全く同じ姿をしていた。
 癖のある、白に近い金髪をし、薄い青色の衣服を身に纏い、首には足元まで届きそうなロングマフラーを巻いている。
 白い少年は、自らと同じ姿をする少年を見下ろしていた。その様子はまるで、少年が目を覚ますのを待っているかのようであった。
「きゃっ!」
「いたた……」
 この世界に更に二人、その足を踏み下ろす女が現れた。小袖の着物に緋袴の姿で、両目が翡翠の宝石のような色をした女が一人、そして幻想的な紫の髪色、瞳の色をした少女が姿を現した。
「……ヒナさん、ここは、一体?」
「ハモ、どうやら妙な所に飛ばされたようね、あたし達。ウェイアードでも天界とやらでもなさそうね。ましてや地獄何て事はないでしょう……」
 それにしても、とヒナは顎先に指を当て考え込む。
「何だか遠い昔、ここに来たことがあるような気がするのよね。ずっとずっと前、あたしがまだ子供だったころに……」
「ヒナさんもですか? 実は私もなのです。私が物心ついた所で、夢にでも見たような気がしてなりません……」
 二人はこの白い世界に、既視感を覚えていた。それも遠い昔の事である。
「その通り、ここは現世でもなければ死後の世界でもない」
 ふと口を開いたのは、白い少年である。
「あなたは!?」
 ヒナは白い少年に気が付き驚きを見せる。
「そう身構えるな、別に取って食うつもりなどない……」
 そうは言われても、ヒナは安心できるはすがなかった。
「あなたはロビンではありませんか? ですが、そちらに倒れている方も……」
 ハモは冷静に二人を見比べる。どちらも全く同じ姿をしており、違うところと言えば、白い少年の全てが赤い双眸である。
「そうだ、そいつはお前達の知るロビンだ」
 白い少年は言った。
「では、あなたは一体……?」
「彼もロビンよ。と言っても、ロビンの破壊衝動が一つの存在になったものだけどね」
 彼と数回刃を交えたことのあるヒナは言う。彼の目的は、本物のロビンを滅し、自らが一つのロビンという存在となることだった。
「ロビン、いえ、破壊のロビン。あなたはここで何を?」
「破壊の……ふん、散々な言われようだが好きに呼ぶがいい。オレの目的は、現世のロビンの肉体を得ること。そのはずだった……」
「はずだった?」
「詳しいことはこいつが起きてから話そう。間もなくお目覚めだ……」
 白いロビンが、眠っている真のロビンを見ると、真のロビンは一晩の眠りから覚めるように動き出した。
「ん、うーん……あれ、オレ、いつの間に寝て……?」
 真のロビンは寝惚けたように辺りを見渡す。
「ここは、一体? 何もかも真っ白……」
「ロビン、あなた生きて!?」
 デュラハンによる不意打ちで、明確に死んだと思われていたロビンが眠りから覚めるように起き上がったのだ。ヒナは驚かずにいられなかった。
「あれ、ヒナさんにハモ様、二人もいたんですか?」
 まだ寝惚けた様子の真のロビンであるが、白いロビンを見て驚愕し、完全に目を覚ました。
「お前は、ロビン!」
 真のロビンは跳ね起きた。
「ふん、そう喧嘩腰になるな。オレはもう、お前とやりあう必要はない」
 白いロビンの言葉を、すぐに信用できるはずがなかった。
「二人とも、下がってください!」
 真のロビンは丸腰のヒナ達を下がらせ、背中の剣の柄を握る。
「殊勝なことよ、ますます貴様の点数は上がったぞ」
「点数だと? 一体何を言っている!?」
「そういえば、貴様の死因も仲間を庇っての事だったな。気安く死におって、と思ったものだがな」
「さっきから何を訳の分からないことばかり言っているんだ!? オレはお前なんかに体を渡すつもりはないぞ!」
 白いロビンはため息をつく。
「お前はとっくに死んでいるのだ。最早現世には戻れぬのだぞ?」
 不意に、真のロビンの頭に衝撃が走った。そして、ここで目覚めるまでの記憶が甦る。
「……そうだ、オレは確かにデュラハンに刺し貫かれて……。となれば、ここは死後の世界か?」
「ロビン、それはどうやら違うみたいよ。破壊のロビンが言ってる事が本当ならね」
 ヒナがこの世界について、白いロビンから聞いたことを代弁する。
 現世でもなければ、天界や地獄といった死後の世界でもない。では一体ここは何なのか、真のロビンは混乱し始めた。
「本体が起きたようだから、もうそろそろ話してもよかろう。この世界は現世でも冥界でもない。ここはロビン、貴様の心を具現化した世界なのだ」
「なんだって!? オレの心の……?」
 どうした理屈で、このような純白の世界が作られたというのか、まるで想像がつかず、驚くしかなかった。
「オレは、シンの言っていたように、貴様の破壊衝動だ。オレの破壊衝動が、貴様の心を侵食していたならば、このような清浄なる世界はつくられていなかったことだろう……」
 白いロビンはふと、一つ深呼吸すると、背中の剣を抜き放った。
「抜け、ロビン、どちらが本物のロビンに相応しいか、ここで全てを決しようぞ。これが最後の課題だ」
 真のロビンはまだ混乱したままであった。しかし、剣を向けられた以上、今はひとまず戦うより他なかった。
「正直言って分からないことだらけだけど、お前が戦うって言うならオレもやらなきゃな。その代わり、オレが勝ったら全て洗いざらい話してもらうぞ!」
 真のロビンも剣を抜いた。背中にあった剣は、白金色の刀身を持ち、切っ先からエネルギーが溢れるソルブレードであった。
「その剣はオレがこの世界に呼び寄せたもの。はたして、神の作りし剣を貴様に使いこなせるか!?」
 ソルブレードは、ロビンの手によく馴染んでいる。
――これならいける!――
 ロビンは勝利を確信した。
「お遊びはなしだ、一瞬で勝負をつける!」
「ああ、行くぜ!」
 白いロビンは地を駆け、真のロビンへと斬りかかる。
 対する真のロビンはその場から動かず、一瞬の隙が生まれる瞬間を狙ってた。
 そして剣閃が煌めいた。
 あまりに速い剣であったが、ヒナの天眼だけは瞬間の攻防を捉えていた。
「勝負あったわね……」
 剣を取りこぼし、地面に崩れたのは白いロビンであった。
「……見事だ、よくぞオレに打ち勝った……」
 白いロビンはゆっくりと立ち上がる。峰打ちだったとはいえ、容易く立ち上がられ、一同は警戒する。
「心配するな、オレにはもう、戦う意思はない……」
 言うと白いロビンは、姿を大きな球体へと変化させた。
「なっ!?」
「一体何が!?」