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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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 皆が驚くのも無理はなかった。
「これが我の真の姿……と言っても、姿など我々にはないのだがな……」
 ロビンのソルブレードのような輝きを持つ球体は、どこから声を出しているのか分からないが、言葉を話す。
「お前は一体……!?」
「我に個々の名は存在しない。だが、強いて言うならば、我は闘霊、その数ある内の一つの存在よ」
 光る球体と化した、ロビンの破壊衝動の塊であったものは自らを闘霊と言った。
「闘霊……だめだわ、あたしの眼を使っても奴の正体が掴めない……」
 闘霊の本質を見抜こうとするヒナであったが、天眼を用いても何一つとして見えない。
「我に正体などない、故に貴様の天眼をもってしても、その目には何も映らぬ……」
『プリディクト』
 ヒナの天眼で映らぬのなら、とハモは予知のエナジーを使って闘霊について何か掴もうとする。
「これはどう言うことなのでしょう……?」
 ハモの予知能力でも、真っ白な空間が移るのみであった。
「予知をした所で同じこと。それに貴様らのその特殊能力は、我と同じ闘霊によって生み出されしもの……」
「ええっ!?」
「なんですって!?」
 驚く二人をよそに、闘霊は自らについての話を始めた。
「闘霊とは、人智を超えた力を与える存在なのだ……」
 ヒナやシンの天眼、ハモの余地能力は、ある闘霊によって与えられた力であった。
 闘霊という存在は、この世界が何らかの危機に陥った時、例えば今、大悪魔デュラハンによって世界が破壊されようとしているように、それを阻止すべく人に力を与えるためにいるものだった。
 しかし、その防衛のための力は、誰も彼も使えるような代物ではなく、闘霊の持つ力に適性がある必要があった。
「ヒナ、貴様にはあらゆるものの本質を見抜く眼、天眼を得られるだけの素質を持っていた。そしてハモ、貴様も同様だ。予知のエナジーというものは存在しない。その能力は闘霊より与えられしものだ」
 ヒナとハモの特殊能力は、それぞれ天眼の闘霊、予知の闘霊によってもたらされたものだった。
「天眼の闘霊……」
 この名を聞いた瞬間、ヒナの中でいくつもの風景が駆け巡った。
「そうよ、思い出したわ。確かにあたしは、天眼の闘霊とかいうものに会っているわ。それもずっと昔に、あたしがまだ子供だったころに……」
 それは約二十年前、シンが産まれて間もない頃、ヒナは剣の修行をしている所、倒れたことがあった。
 大病にかかったかのように、ヒナは数日間昏睡状態となって生死の狭間をさまよった。
 その時、この世界に呼ばれ、ヒナは天眼の闘霊より、全ての力の本質を見抜く能力、天眼を得たのだった。
 しかし、年齢があまりにも低すぎたために、闘霊の言っていたことを理解できず、天眼の能力を持ちながらも、その力の名をしばらく思い出せずにいた。
 後年、天眼の名を思い出すまで、父より、まるで眼を通して力を読むかのように太刀筋を見切るヒナの様子をして、長らく力通眼という名を与えられていた。
 謎の病に伏せたのは、ヒナだけではなかった。
 その頃まだ乳飲み子であったシンまでも、ヒナと同様に天眼の闘霊に呼び寄せられ、その力を与えられんとした。
 しかし、物心ついたヒナならばいざ知らず、産まれたてのシンには完全な天眼を得るようなことはできなかった。
 シンの天眼が片眼にしか顕現しなかったのはそのためだった。
「私も思い出しました。確かにヒナさんの言うようなことが……」
 同様の事が幼少のハモにも起こっていた。与えられた力が予知であること以外、現象に一切の違いはなかった。
「思い出したか、天眼、予知の闘霊より力を得し者達よ。そして我もまた力を与える闘霊、我が司るは、竜殺しの力よ」
 ロビンに取り憑いていた闘霊は、竜殺しの力を持っていた。
「竜殺し、だって……!?」
「驚いたか、ロビン。更に言えば、この竜殺しの力は、我ら闘霊の持つ力の中でも最強を誇るものだ」
 あらゆる邪悪なる存在の内、竜をも葬り去る力を持つこの力をもってすれば、大悪魔デュラハンを相手にしたとしても、簡単に滅することができるであろう。
「我の力を得れば、貴様を殺した大悪魔といえど取るに足らない敵となろう。しかしそれ故に、我の力はそうとう強大なものでもある。そう簡単に与える事は相当の危険の伴うことでもあるのだ」
 ロビンには、竜殺しの力を得るに相応しい素質を秘めていた。しかし、それはあくまで素質があると言うだけで、完全に受容できることまでは保証されていなかった。例えるならば、熱に耐えられる容器が、どれほどの高熱に耐えられるのか、そこまでは分かりかねる事である。
 そのため、ロビンの闘霊は慎重にならざるを得なかった。
「我は貴様にこの力を与えるべく、貴様の力を推し量る必要があったのだ。今こそ得ることができるのかどうか、とな。そこで我は、貴様の破壊衝動に取り憑くことにした。自らの破壊衝動に負け、全てを破壊する存在としないためにな」
 ロビンが命の危機に瀕したとき、暴走してしまっていたのは、ロビンがまだ自身の破壊衝動に打ち勝てなかったためであった。
 しかし一時は暴走し、衝動のままに行動していたロビンであったが、暴走する度、対象を完全に破壊しきる前に自我を取り戻していた。
 そして今、ロビンのいる世界は清浄なる世界である。破壊衝動が暴走していた時は、全てが黒い暗黒の世界であったが、ロビンはついに、自我を保ち続ける事ができたために、ロビンの心を表す世界はこのようになった。
「ロビンよ、我は確信に至った。貴様にならば我が力を受容するに値するとな。故に、今こそ我が力を与えてやろう」
 確信するに至った闘霊であるが、ロビンには一つ、問題があった。
「お前の言うことは分かった。けれど、もうお前の力を得ることはできない。オレはもう死んでいるんだからな……」
 竜殺しの闘霊の力を得られると分かったところで、ロビンはデュラハンによって殺されている。ヒナやハモがそうであったように、大病を患って生死の境にいるのではなく、完全に死していた。
「ロビンよ、貴様に初めて会った時、我が言っていたことを忘れたか? 我と貴様の命は別物であるとな」
 確かに、かつてこの闘霊はそのような事を言っていた。
「まさかお前……?」
「察しがいいな、貴様の思う通りだ。我の命を貴様に与え、再び現世へと戻ってもらうのだ」
 しかしこの方法はもちろん、闘霊の存在がなくなることも意味している。
「ちょっと待って、そんな事をしたら、あなたは、竜殺しの闘霊はどうなるのよ? あなた達闘霊は人に力を与える存在なんじゃないの?」
 ヒナが訊ねる。
「闘霊とは、地上を守るために存在する大地霊でもある。大地を守れなんだら、我らの存在に価値はない。そうなるくらいならば、我は自ら消滅を選ぶ」
 闘霊にはかなりの覚悟が見られた。
「さあロビン、どうするか決断するがいい。我の命と力を受け取って現世へと復活するか?」
 闘霊はロビンに決断を迫る。
「オレは……」
 ロビンは迷っていた。生き返る事ができるかどうかもそうであったが、何より、本当に自分に竜殺しの力を得られるのかどうか、不安な気持ちがあった。
「そうだ、一つ言い忘れていた」