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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL26

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 ユピターにはもう、戦う余力が残されていないとばかり思っていたアズールは、驚きを隠せなかった。
「さすが、と言っておこうかしら。最強の盾、アイギス・シールドを神でもない身であそこまで使いこなせるなんてね」
 興奮するアズールとは対照的に、メガエラは落ち着き払っていた。
「なんやメガエラさん、ずいぶんあっさりしとるなぁ?」
 アズールはメガエラの様子を不思議に思った。
 イリスを除く、メガエラより少しでも強い存在を許せない性分の彼女の事である。かなりの嫉妬心を持つのではないかと、アズールは思ったのだ。
「てっきりメガエラさんの事やから、ユピターさんの力を妬むんやないか思てんねんけど」
「ふん、あんたも言うようになったわね、覚えておきなさいよ。私は盾に興味はないのよ。例えそれが幻のアイギス・シールドでもね」
 メガエラには身を守るという考えはなかった。ただひたすらに攻撃に専念し、圧倒的手数で相手を倒すというのが彼女の戦い方であった。
 両手に剣を持って戦うというスタイルもそのためである。
「まあ、そもそもあの盾はユピターにしか使えないでしょう。自分の身を賭けてでも私達を守ろうと考える、あれはそれくらい献身的じゃなきゃ使えない盾だから……」
 二人が話し込む間に、ユピターの戦いは佳境に差し掛かっていた。
 攻撃を全て弾かれ、そしてそこに生じた隙を突かれ、傀儡はぼろぼろになっていた。
 対するユピターは目立った傷もなく、まっすぐに立っている。
 そこへ傀儡が攻撃を仕掛けてくるが、深傷を負い、動きも緩慢になった攻撃がユピターに届くはずもなく、全てアイギス・シールドに阻まれてしまう。
「どうやら、ここまでのようだな……!」
 ユピターはアイギス・シールドで傀儡をはね飛ばした。傀儡は勢いそのままに後ろへ倒れる。
 ユピターは歩み寄り、傀儡へ切っ先を向けた。
「そろそろ終わりにしよう、マリアンヌ殿を殺し、ヒースをあのようにした罪、あがなってもらう!」
 ユピターは帯電するエナジーの球体を撃ち出した。それと同時にアイギス・シールドを展開し、三角錐の形にして傀儡をその中に閉じ込めた。
「お前を消える以外の道から守ってやる。このアイギス・シールドでな!」
 ユピターが手をかざし念じると、傀儡と一緒に三角錐に閉じ込めたエナジーの球が炸裂した。
 弾け飛んだ球体は、帯電していた電気を放出し、アイギス・シールドの中で乱反射した。
 使い手の強い想いでできているアイギス・シールドは、激しく弾け飛ぶ電撃を受けてもまるでびくともせず、電圧に負けてひび一つ入ることがなかった。
 このまま電撃を受け続けていれば、さすがの傀儡もひとたまりもなかった。
 ユピターの言葉通り、傀儡には滅びる道以外他はなかった。アイギス・シールドは傀儡を消える事以外から見事に守っていた。
 弾ける電気に打たれ続け、傀儡は焦げ始めた。その瞬間、ユピターはアイギス・シールドを左手に戻した。
「騎士のせめてもの情けだ。一思いにとどめを刺してやろう!」
 四方八方から電撃で攻められ続けていた傀儡は、満足に立つこともできず、ふらふらであった。このままアイギス・シールドの中で電撃を浴びせていても確実に倒せる状態である。
 ユピターは剣を横に構え、切っ先を傀儡に向けた。そして少しの間目を閉じ、心を落ちつける。
 親友の幸せを踏みにじり、道を外させたデモンズセンチネルの傀儡が、ユピターの眼前に立っている。
 傀儡の本体はすでに消え去っている。そして親友、ヒースもまた転生の輪廻から外れ、存在も魂も全て消えてしまった。
 デュラハンさえいなければ、ヒースは深き悲しみと憎しみに沈むことなく、そのまま転生して現世へと生まれ出れて恋人のマリアンヌと結ばれていたはずだった。
 しかし、大悪魔デュラハン、及びその配下のデモンズセンチネルによって、その運命は断たれてしまった。
 ユピターの心に沸々と怒りがこみ上げてくる。
「貴様だけは絶対に許さん! 消えてなくなれぇ!」
 ユピターは叫び、間合いを詰めると傀儡を斜めに一閃し、そのまま駆け抜けた。
 数秒の間が空いた。僅かな時差の後、傀儡は血のごとく黒煙を上げ、そして倒れた。
 長かった勝負がついに決した瞬間であった。
「どうやら、終わったようね」
 メガエラが言うと、ユピターは振り切った剣を取り零し、膝を付いて倒れた。
「ユピターさん!?」
 アズールがいち早くユピターへと駆け寄る。
「これはちょっとまずいわね……」
 メガエラも後に続き、ユピターの顔を覗き見て軽く舌打ちする。
 アイギス・シールドが発現した時の不思議な力により、外傷は消えていたが、失った体力までは戻っていなかった。
 その体力の消費が今になって一気に表れ、ユピターは立っていられないほどの消耗をしてしまったのである。
「だからあの時オレが止めたのに! くそっ、ユピターさん、しっかりするんや!」
 ユピターはアズールの叫びに応じる事なく、うわ言のように呟くのみだった。
「ヒース……仇は……私が……」
 ユピターはアズールの声を遠くに感じながら、眠るように気を失っていくのだった。